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てんかん外科

更新日:2015年11月2日

てんかんの外科治療とは頭蓋内に直接、センサーとなる電極を留置して発作の発生源を正確に判断し、特定した部位を切除する治療です。てんかんの外科治療は以下の場合に考慮されます。

1. 適切な複数の抗てんかん薬を服用しても発作が十分に止められない場合。
2. 各種抗てんかん薬に対する薬疹などのアレルギー反応で服用ができず、発作に対して外科治療以外に手立てが無いと判断された場合。

(1)の適切な複数の抗てんかん薬を服用しても尚、発作が消失しない例は全体の2~3割に及ぶと考えられています。 発作が止まっていない場合、まず何をするべきでしょうか。第一歩は発作を正確に分析するところから始まります。


第1段階(PhaseI:フェーズI)

Nicolet One TM
(カージナルヘルス社・ミユキ技研)

頭皮での長時間脳波モニタリングです。LTMと略します。LTMの目的を列挙すると、

  • 発作は具体的にどのような症状なのか。
  • 脳波では発作の発症源ははっきりわかるのか。
  • 抗てんかん薬の変更など、調節を再度行うか、てんかん外科を行うか。

などを念頭に検査を行って行きます。

ベッドサイドに置き脳波を記録しながら発作の様子を捉える。
てんかんセンターでは、2009年4月よりLTMを行う場合には、2種類の方法を使い分けています。通常使われるLTMはNicolet One TM(ニコレー・ワン)と呼ばれるビデオ録画機能付のデジタル脳波計で行われます。

もう一つの方法は高密度センサー脳波計測システム(dense array EEG)と言われ、当院が本邦では初めて臨床の現場に導入しています。詳細「脳波解析室」をご参照ください。

第2段階(PhaseII:フェーズII)

さて発作を止めるために外科治療が計画される場合、脳波の所見・MRIなどの画像所見が明らかに一致する場合には、例えば側頭葉てんかんの場合には、この第2段階をスキップして第3段階の切除術を直接行う場合もあります。しかし多くの例では、脳波と画像だけでは情報が不十分な場合が多く、頭蓋内に電極を留置して、更に詳しい焦点に関する検査を行います。留置する電極には写真に示すように様々な形状の電極が用意されています。これらを必要とされる頭蓋内の場所に合わせて選択、組み合わせていきます。つまりこの第2段階から手術ということになります。※手術の場合にはリスクについてもご判断いただけるように説明をいたします。

様々な形状の頭蓋内電極。手術ではこれらを組み合わせて使用する。
(ユニーク・メディカル社製)

この電極を留置した状態で基本的には1週間、詳細に調べます。発作を起こした時には図の赤矢印に示すように、発作の発生源となった電極から速い波が出現する様子が観察されます。後述の脳波解析室では、PC上で様々なソフトウエアを駆使し、発作の発生源を割り出していきます。

第3段階(PhaseIII:フェーズIII)

第2段階で割り出された発作の発生源を処置するのが第3段階です。その方法には大きく分けて、
  • 切除術
  • 遮断術
の2種類が存在します。基本的には切除術が最も望ましい方法であり、根治術と考えられます。切除術の中で頻度が高いのは側頭葉や前頭葉の手術です。切除術とは文字通り、発作を出している部分を切り取ってしまうので、その部分が脳の中で大切な機能を担当していないことが前提です。切除術では側頭葉切除術が最も成績が良く、7-8割の例で発作が消失します。
脳を切除してしまうことに不安があるかもしれませんが、発作のくり返しにより脳の正常な部分へのダメージが続くことを考慮する必要があります。また、切除術後の知能指数(IQ)が術前よりも向上した事例が多数報告されています。

もし切除しようとしている部分が大切な機能を担っている場合はどうしたら良いのでしょうか。これは第2段階で頭蓋内電極を入れている間に、その電極を利用して脳を微弱な電流で刺激することで、機能を持っているか否か、判断することができます。大切な機能を有する部分を切除すれば、その機能が無くなり後遺症を残しますので切除術は好ましくありません。そのような場合、緩和的な(発作頻度を減らす)意味になりますが、遮断術といって、発作の波が周囲に伝わるのを妨げる方法を取ります。遮断術には脳梁離断術(corpus callosotomy)や軟膜下多切術(multiple subpial transection; MST) があります。
入院期間は術後のリハビリを含めて、フェーズⅡを経てフェーズⅢとなった場合は3~4週間。フェーズⅢのみの場合は10~14日間です。手術後に発作が止まる、もしくは改善していれば、患者さんのお住まいの近隣の診療所や病院に連携のお願いをしていますので、ご自宅から近い医療機関で術後のフォローアップが受けられます。

新しい治療法

迷走神経刺激療法 (vagus nerve stimulation; VNS)

迷走神経刺激療法:VNSは本邦では2010年7月に保険適応となったばかりですが、既に欧州では1994年、米国では1997年に認可され、臨床の場で広く普及している治療法です。
図に示されているように、刺激を送り出すパルス・ジェネレータを左の前胸部に埋め込みます。以前は分厚く重いものでしたが、最近では薄く軽量化されています。コイル状の電極を左頚部の迷走神経に巻きつけます。刺激は迷走神経を通って、まず脳の深部に到達し、更にそこから脳の表面に向って広く伝わって行きます。まだ明確な機序はわかっていませんが、この電気による刺激が発作を抑える作用を持っています。

製造 Cyberonics, Inc., USA / 国内販売 日本光電
上記2社のご好意により転載

適応は抗てんかん薬を服用しても発作が抑えきれない場合で、かつ焦点切除術等の開頭術の適応も無い場合に考慮されます。迷走神経刺激療法:VNSは焦点切除術のように発作を完全に抑えこむことはできませんが、副院長の山本がニューヨーク大学てんかんセンターで経験した症例では全体の60%の例で、発作を50%以上減少させることができました。また反応が鈍かった患児の反応が良くなるなど、発作を減少させる以外の副次的な作用も認められています。

迷走神経刺激療法:VNSの無かった時代は、抗てんかん薬がだめ、手術もだめであれば、際立って良い方法は他にはなかったわけですが、これで新たに一つの治療の可能性・選択肢が増えたことになります。当センターでは今後この迷走神経刺激療法:VNSを積極的に行ってきており、既に100名以上の患者さんが本治療を受けています。説明用のパンフレットも用意していますので、スタッフまでお尋ねください。