当院の脳神経外科は「利用者中心」の理念のもとにチーム医療を通じ最良の医療の提供をこころがけています。浜松を中心に静岡県西部、愛知県東部の数多くの患者さんを治療しています。治療方針は、外科治療、脳血管内治療、放射線治療の中から、患者さんにとって最も望ましい治療を選択します。当院の昨年の手術件数は県内トップクラスで、さらに増加傾向にあり、他施設で治療が困難な疾患も多数治療しており良好な成績をあげています。また、神経内科、てんかんセンター、リハビリテーション科、腫瘍放射線科、頭頸部・眼窩顎顔面治療センター、総合周産期母子医療センター、小児科、せぼね骨腫瘍科などと協力しながら診療しています。
当科では、インフォームドコンセントからさらに進めてシェアードディシジョンつまり治療方針決定の過程を医師と患者が共有できるよう可能な限り丁寧な説明を行っていますが、説明がわかりにくい、他の意見を知りたいということがあれば、セカンドオピニオンで他の施設で説明を聞いていただくこともしています。患者さんがご自身の病気、治療についてご理解をして治療を受けていただくことが大切と考えています。
当科では、インフォームドコンセントからさらに進めてシェアードディシジョンつまり治療方針決定の過程を医師と患者が共有できるよう可能な限り丁寧な説明を行っていますが、説明がわかりにくい、他の意見を知りたいということがあれば、セカンドオピニオンで他の施設で説明を聞いていただくこともしています。患者さんがご自身の病気、治療についてご理解をして治療を受けていただくことが大切と考えています。
Webマガジン「白いまど」 | 2017年9月号「あたまの病気をもった子どもたちのために 脳神経外科 小児脳神経外科外来」 |
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2018年4月号「がんに克つ!11 脳腫瘍って「がん」ですか?」 | |
2019年4月号「脳神経外科 頭の血管の病気があると言われたら?」 |
脳腫瘍
脳腫瘍は、10万人に10人~12人とまれな疾患にも関わらず、種類がたくさんあり良性のものから悪性のものまでさまざまです。したがって、治療方針もそれぞれ異なります。
主な対象疾患 | 診療内容 |
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原発性脳腫瘍 | 神経膠腫(グリオーマ)、髄膜腫、下垂体腺腫の3大疾患のみならず、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、悪性リンパ腫、胚細胞腫など稀な脳腫瘍も多数治療しています。脳腫瘍は種類が多いため診断をするために手術で腫瘍を摘出する必要があります。いかに脳機能の障害を起こさないように安全に摘出するかを術前の検査で検討しています。また、術中はナビゲーションを用いた解剖の把握、脳機能モニタリング、術中に患者さんに眼を覚ましていただき、機能温存されているか確認する覚醒下手術を行い、安全性と確実性を高める工夫をしています。必要な疾患の場合、術前塞栓術を行い、開頭術での出血を減らす方法も併用しています。神経膠腫では、術中に腫瘍を可視化できる5-ALAを用いたり、術中にカルムスチンという薬を腫瘍摘出腔に留置したり最新の治療を導入しています。 一方で、手術だけの治療では不十分な治療の場合や手術で摘出できない場所に腫瘍がある場合は、化学療法と放射線療法を組み合わせて治療します。化学療法は、脳腫瘍の種類によって異なりますが、経口投与で内服するものから点滴での静脈投与するもの、脳脊髄液内に直接投与する髄腔内投与など投与方法も様々です。放射線治療は、通常照射に加えて、IMRT(強度変調放射線治療)、定位放射線手術(サイバーナイフ)の中から最も効果の高いものを選択します。膠芽腫には、腫瘍電場療法も行っています。 |
頭蓋底腫瘍 | 眼窩内にも浸潤した腫瘍では眼形成眼窩外科・耳鼻咽喉科と合同で広範な切除と再建に至るまで協力して行う体制をとっており、手術で摘出してしまった頭蓋底の欠損部は、血管柄付腹直筋皮弁を用いることにより再建しており、良好な成績をおさめています。 |
転移性脳腫瘍 | 当院には多方向からshaped beam連続照射が可能な定位放射線照射装置(TrueBeam)があり、良い成績が得られています。加えて、2020年5月よりサイバーナイフM6が追加導入され、ますます複雑な症例にも対応できるようになりました。 |
脳血管障害(脳卒中)
当科では脳卒中科も兼任しており、脳卒中の外科治療を中心に診療しています。一般的な内容は、「脳卒中科」も参照してください。
主な対象疾患 | 診療内容 |
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くも膜下出血 | 基本的に脳動脈瘤からの出血によります。程度は頭痛程度の軽症から意識障害、心停止状態までと幅広く未だに予後不良であり、脳神経外科治療の中心的な疾患であります。発症から72時間以内に再出血予防の治療が予後に関係しており、以前より確立した方法である開頭クリッピング術と、より重症例などにも対応できる脳血管内コイル塞栓術という2つの方法で、動脈瘤の位置や形によって使い分けて対応していきます。発症後14日程度は、脳血管攣縮という脳梗塞をきたしやすい時期があるため、集中治療室で治療を行います。くも膜下出血後に、水頭症を合併することがあり、それに対しても治療をする場合があります。 |
脳梗塞 | 2015年に太い血管が急に詰まった場合の脳血管内カテーテル治療の有効性が確立したことから脳卒中の治療分野で今最も革新が進んでいる領域です。発症から24時間以内であれば治療適応となる人もいることがわかってきており、半身麻痺や失語(言葉が出ない、理解できない)症状があれば治療の適応の可能性があります。また血栓溶解療法における適応時間も発症時間から組織がまだ脳梗塞になっていない領域の有無に変更しており、先ほどの症状の出現があった場合にはすぐに救急車を要請し、病院に向かってもらうことが一番大事な要素となってきています。当院は、これらの治療を積極的に行う、脳卒中1次センターに認定されています。 |
脳出血 | 内科的治療が中心です。外科治療が必要となる場合は、出血が多い場合であり、開頭血腫除去術や内視鏡的血腫除去術を行います。 |
もやもや病 | 脳に流れる太い血管(動脈)が細くなっていき、脳梗塞や脳出血を起こすことがある病気です。当院では、主に小児では頭の外側を流れる血管(動脈)を頭蓋骨の内側に入れる間接吻合術を行い、成人では頭の外側を流れる血管(動脈)を脳の表面を流れる血管(動脈)に直接吻合する直接吻合術を行います。 |
未破裂脳動脈瘤 | 脳ドックなどのMRI検査で偶然、破裂してくも膜下出血になる前に動脈瘤が見つかることがあります。この状態であれば治療することでくも膜下出血の予防が可能であり、大きさや形、部位によっては小さくても治療適応となります。くも膜下出血の治療法と同じく開頭クリッピング術または脳血管内コイル塞栓術のどちらかを選択していきます。年間の破裂率は約1%前後といわれており、年齢や大きさ、形状等での向き、不向きや患者様の希望等により治療法を選択していく疾患です。未破裂動脈瘤を指摘された場合には先ず受診をしていただき経過観察でいいのか、治療を行った方がいいのかを判断、治療を決定していくことが望ましいと考えます。 |
脳動静脈奇形 | 脳の中にある血管(動脈)がナイダスという細い血管に流れ込み、くも膜下出血や脳出血をきたす病気です。近年は脳ドックで発見されることがありますが、治療については部位、大きさなどを調べて手術や定位照射の必要性について検討します。出血で発見されるかたも多い病気です。 |
海綿状血管腫 | 腫瘍というよりは血管がふくらんだ塊です。無症状の場合は特に治療の必要はありませんが、神経症状を来す場合や出血を繰り返す場合は、手術で摘出することがあります。 |
硬膜動静脈廔 | 頭部の皮膚や口腔内を栄養する血管と頭蓋内の静脈が短絡(シャント)し、圧が強くなり頭蓋内静脈の逆流等で、脳出血や脳梗塞、痙攣の原因となる稀な疾患です。血管内治療で根治することが可能な代表的な疾患であり当院では全身麻酔下にできるだけ一度で根治を目指して治療を行っています。 |
頭部外傷
頭部外傷は、頭の外から外力が加わり頭を損傷することをいいます。
主な対象疾患 | 診療内容 |
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急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、脳挫傷など | 急性硬膜外血腫は、頭蓋骨とそのすぐ内側にある硬膜の間に出血してしまうもので、最初は意識がよいのですがある程度出血が大きくなったときに急に意識が悪くなり、そのまま手術を行わないと亡くなってしまいます。最初は意識がよいので注意が必要です。急性硬膜下血腫は、硬膜と脳の間に出血してしまうもので、脳の表面の細い血管からの出血でおこります。急性硬膜下血腫も出血が多い場合は手術が必要です。最後に、脳自体が損傷してしまうのが脳挫傷といいます。脳挫傷は脳細胞が破壊されてしまうので、その部分の脳は再生されません。通常は、脳挫傷だけで手術をすることはありませんが、脳挫傷によって脳浮腫を起こした場合は手術を行うこともあります。 |
慢性硬膜下血腫 | 高齢のかたに多く、頭をぶつけた既往のある方が1ヶ月から2ヶ月経過してからジワジワと出血し、硬膜と脳の間にたまります。血腫によって、麻痺、頭痛などの神経症状をきたす場合は、局所麻酔で血液を抜く手術を行います。通常4日から5日程度の入院となることが多いです。 |
定位放射線治療外来
小児脳神経外科外来
未熟児や新生児の先天奇形 (脳瘤・二分脊椎・キアリ奇形など)、水頭症、小児期に発症する頭蓋骨早期癒合症、脳血管障害 (もやもや病・脳血管奇形など)、脳腫瘍、脊髄腫瘍および外傷などの脳神経疾患の診断、外科治療を行います。
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当科は、主に手術を担当することが多い科です。神経内科、リハビリテーション科、てんかん科、小児科、せぼねセンターなど多くの科と協力し包括的に治療を行っています。
特殊治療
一般的な市中病院では行うことが難しい、脳腫瘍、てんかん、小児脳神経など積極的に治療しています。また、手術室CTはオンラインで手術用ナビゲーションと連動するようになり静岡新聞等でも紹介されました。手術中にCTを撮ることにより最新の脳地図にアップデートすることでより安全に手術を行うことが可能です。
特殊医療機器
- GE製ヘリカルCT 5台(マルチスライス256列 1台、マルチスライス64列 3台、マルチスライス16列 1台)
- 手術室専用シーメンス社製ヘリカルCT(64列)
- GE製MRI 5台(3テスラMRI 3台、1.5テスラMRI 2台)
- SPECT CT1台
- DSA
- 定位放射線治療装置(VARIAN社製 TrueBeam)
- 手術用顕微鏡
- 神経内視鏡
- 術中ナビゲーション 2台(BrainLAB社製 CURVE)
- 術中エコー
- 術中ドップラー
- 術中ICG造影
- PET など