油壺エデンの園 副園長

横浜から電車でおよそ70分。自然に恵まれた神奈川県三浦半島に位置する介護付有料老人ホーム 油壺エデンの園は、暖かな気候と温厚な人で満ちている。草間千佳子はおよそ17年前、異業種から医療・福祉業界に飛び込んだ。いくつもの失敗や成功体験を重ね今もなお成長を続ける、副園長の思いを追う。

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i am「草間 千佳子」

数学の世界から医療・福祉業界へ

 大学では統計学を専攻する理系女子、いわゆる「リケジョ」だった。今では聞きなれた言葉となったが当時リケジョは珍しく、卒業後は都市銀行の理系枠で本部に就職。膨大なデータを使用しプログラミングを行う仕事に携わった。5年ほど勤務したのち結婚出産を機に退職。子育てに専念するという当時では当たり前の道を進んだ。

 「もう一度、社会に出てみよう」。子どもが大きくなるにつれ社会復帰を考え始めたころ、有料老人ホームの事務職募集チラシが目に留まった。医療・福祉業界に興味を抱いていたわけでもない、母体法人も関東では聞かない名前だったが「自宅から通うことのできる距離だし、と安易な気持ちで応募しました」。油壺エデンの園、前職とは畑違いのこの場所で草間は天職と出会うことになる。

油壺エデンの園の支柱的存在へ

 パート職員として入職したのはちょうど介護保険制度が施行された2000年、事務係であったが介護保険を担当することになった。知識ゼロからのスタートで戸惑うことも多かった。しかし「諦めず自分自身を高めていくんだ」と自分を奮い立たせ、介護保険制度について学びながら業務にあたった。その後は総務や経理の実務も担当し、エデンの園での事務系業務を全て経験。その前向きな姿勢や知識の豊富さが評価され正職員となり、課長を任されるまでになった。

10年前、フロント業務を担当していた当時の写真。お出かけから帰ったご入居者と会話をしている場面。

 2016年11月に開設30年を迎えた油壺エデンの園と、草間は約17年もの間、共に歩んできた。「エデンの園は現在1都6県で展開していますが、私は油壺での経験しかありません。聖隷が展開する病院保健事業在宅事業のことも知りません。しかし、ここで様々な経験を重ねたからこそ見える油壺エデンの園の魅力を私は知っています」いち施設しか知らないかもしれない。それを「長く、そして深く知っている」という自信に変え、現在は副園長としてこの油壺エデンの園を支えている。

少しのきっかけで崩れる信頼関係言葉の重みを痛感

中庭越しに望む油壺エデンの園。

 エデンの園は健康なうちから介護が必要になっても看取りまで住み続けることができる、いわば入居者の「終のすみか」だ。その場かぎりの付き合いではないからこそ、職員と入居者との信頼関係を築くことを大切にしているが、草間は過去に長年かけて築き上げた信頼関係を一瞬にして失ったことがある。

 現在、油壺エデンの園では約470名(2017年2月現在)が生活をしているため日々さまざまなことが起きるが、原因はひとつとは限らない。入居者同士や職員との関係、環境の変化、家族関係など、複数の問題が複雑に絡み合っていることが多いのだ。「以前、とあるご入居者に相談を受けました。私はそれを直感的に即刻解決すべき事案だと判断しその場で対応しましたが、本当は様々な要因が絡み合った複雑な問題で、結局混乱を招いてしまいました。今まで油壺エデンの園職員みんなで築き上げてきたその方との信頼が、私の行動で一気に不信に変わってしまったのです」。

 その後、その入居者との関係を修復しようと積極的に関わりを持ったが、一度生じた不信感はぬぐえなかった。信頼関係がどんなに築かれていても、少しのきっかけで簡単に崩れ去る。「良かれと思ってした行いが、発した言葉が、相手の受け止め方ひとつでマイナスに変わることもあります。それでも私は誠意を持ってご入居者と関わっていきたいのです」。


「私だからできる」プロとしての自覚と誇りを持つ

2016年に改装した喫茶スペース「かもめ」。ご入居者の憩いの場となっている。

 油壺エデンの園で様々な経験を重ねた草間だが「一番大事にしているのはご入居者との関わりです。長い年月エデンと歩んできた私だからこそできる接し方もあるんですよ」。一人ひとりの今までのエピソードを記憶しているため、例えば、朝入居者と会った際には挨拶にプラス一言を添えることができる。「おはようございます。○○さん、先週の京都旅行いかがでしたか?」言葉ひとつで入居者との関係が崩れてしまうこともあるが、逆に絆を強固にする力も持つことを知っている。

 「ご入居者は戦争をはじめ様々な経験をされています。私のような未熟者がご入居者の気持ちを全て理解するのは当然無理です。しかし、エデンの園の職員である以上、ご入居者の生活を支えるうえではプロでなければいけない。辿ってきた道は全く異なりますが、可能な限り心に寄り添うことが大切なのです」。草間の周りには多くの入居者が集まる。何気ない日常の話をする方から、エデンの園や草間自身に対する要望を述べる方などさまざまだ。これも入居者に対して真摯に接し強い結びつきがあるからこそ。「ご入居者から吸収できることってすごく多いんです。私が成長し続けられるのはエデンの園のおかげ。大げさかもしれないですが、天職なのかなって思っています」。

日本固有の習わしにちなんだご入居者作成の小物が園内の至るところに並び、季節感があふれる。

1月には節分にあわせた小物が園を彩る。

違った個性が集まることで強い力が生まれる

運営管理部のスタッフと常にコミュニケーションを大切に業務を遂行している。

 草間が都市銀行で勤務していた当時の上司に「仕事はコミュニケーションとチームワーク」と言われたことがあったが、当時の草間は言葉の真の意味を理解することができなかった。しかし、約160名近くのスタッフが働く油壺エデンの園の副園長になった今、この多くのスタッフ同士が連携しないと、良いサービスが成り立たないと実感した。

 その後、草間はコミュニケーションを取りやすい環境づくりに力を入れるようになった。スタッフはそれぞれ個性があり、得意、不得意ももちろんある。そういったスタッフ同士の結びつきを草間がつくりだす。内向的な職員に対しては自ら話を振り、発言する機会をつくる。大勢のスタッフの中で一言でも発言する機会があれば、それを糸口にスタッフ同士の会話が自然と生まれる。まずは会話をし、互いを理解することがチームワークを生み出す第一歩。それぞれ違った個性が集まれば強い力に変わることを理解した。

 当時はっきりとは見えなかった「仕事はコミュニケーションとチームワーク」という光景が、今の草間にははっきりと見えている。


過去から学び、今日のために生き、未来に対して希望を持つ

2016年11月に30周年を迎えた。
園長の田中達也(右から2番目)とともに各部門のスタッフがご入居者の暮らしを支える。

 聖隷では油壺エデンの園の他に全国で9つの有料老人ホームを運営しており、どのホームもシニアライフを過ごすために最適な環境が準備されている。「どれだけ魅力ある場所でも、高齢になってから知らない土地へ移り住むのはすごい決断。そんな入居者の大きな決断に応えるために、サービスの向上に日々努めています」。やるべきことは簡単なことではないが、スタッフとともに力を合わせ取り組むことが、管理職の自分に課せられた大きな役割であると草間は自覚する。そして、まだまだ女性の管理職が少ないなか、与えられている責務は大きいが、自分の働きを見て多くの女性スタッフが自信を持ち、今以上に女性スタッフが活躍することができるよう、自身の努力も惜しまない。

「過去から学び、今日のために生き、未来に対して希望を持つ」

 草間の座右の銘であるこの言葉を胸に、強くしなやかに、草間が思い描く未来に向かって歩み続ける。

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油壺エデンの園 施設概要

中庭越しに望む油壺エデンの園

栄養バランスに気を配った、飽きのこない家庭的な食事を提供している。(写真:レストラン白帆)

所在地 〒238-0224 神奈川県三浦市三崎町諸磯1500
電話番号 046-881-2150 FAX 046-881-0863
開設日 1986年11月 定員・定床数 424室
施設種別
  • 介護付有料老人ホーム設
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