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2020年度

3月

「真似からの学び」

 いよいよ年長組が卒園、そして、他のクラスの子どもたちも進級していく三月を迎えました。この時期はいつも以上に、保育者同士で「あの子がこんなことを・・・」「あの子たちが自分たちの力で・・・」「大きくなったね」と喜びの報告をし合う毎日です。
さて、保護者の皆さまは「発達の最近接領域」という言葉をご存知でしょうか?ロシアの心理学者ビゴツキー(一八九六~一九三四年)が子どもの育ちを捉える概念として提唱されました。少し難しい話になりますが、例えば、皆さんがリンゴ園を営んでいるとします。収穫を間近に控え、今の農園の状態を把握する時、既に赤く成熟したリンゴだけでなく、もう少しで成熟しそうなものも収穫予定として計算に入れるはずです。これを子どもの育ちに当てはめ、「自分一人でできる」だけでなく、まわりの大人や友だちの力をかりて、教わったり真似をしたり刺激を受けることによってできるようになる。つまり、「できない」けども「他者の力をかりればできる」領域、これを「発達の最近接領域」と言います。
一月の終わり頃から年長・年中組の子ども達が園庭のインターロッキングで長縄跳びを始めました。興味津々の二歳児はテラスに出て、その場でピョンピョン跳ね、一緒に跳んでいる気分を味わっているようでした。何でも同じようにやってみたい三歳児のTさんは「Tちゃんもやりたい!」とお兄さんお姉さんの仲間に入れてもらい、順番の列に並びました。最初はタイミングが合わず失敗していましたがTさんは諦めません。また列の最後尾に並びます。何巡目か廻ってくるうちに徐々にタイミングが合い、一回二回跳ぶことができました。「ほし組さんには無理だよ」と思っていた子ども達はびっくり!「Tちゃん跳べたね。すごーい!」Tさんはみんなに褒められ、得意満面です。また、年長組では今、あやとりがブームとなっています。新しい技を覚えると子ども同士で「どうやるの?教えて」「いい?ちゃんと見ててよ!」と子ども同士であやとり教室が始まります。先生役の友達の手元を食い入るように見つめ、できるようになるまで何度も挑戦しています。自分が簡単にできる技より少しだけ難易度の高い技に挑戦するのが楽しいようです。「学ぶ」の語源は「真似ぶ」(まねぶ)とも言われています。ひかりの子では、あそびや生活の場面、あちらこちらに「発達の最近接領域」を垣間見ることができます。そして、人間的な成長を促すには、やはりネットではなく、人からの学び、人と人とのつながりが大切だという事を子ども達の成長から見てとることができます。この一年も神さまの守りの中で、どの子もみんな心も体も大きくなったことを喜び、感謝したいと思います。
先日のお手紙でもお願いをしましたが、毎年、年度末に園の都合で「特別保育期間」を設けさせていただくことは大変申し訳なく思います。保護者の皆さまにご協力をいただき、園全体で一年の終わりの節目にきちんと立ち止まり、振り返りの時をもつことで、次年度もより質の高い教育・保育へとつなげていきたいと考えております。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。最後になりましたが年度末にあたり、保護者の皆さまには、今年度は特に新型コロナウイルスの感染予防や園の教育・保育に対するご理解とあたたかいご協力に感謝いたします。

園長 鈴木 勝子

2月

「お金の使い方」

 園庭の河津桜が咲き始めたり、子ども達が植えたプランターのチューリップが小さな芽をのぞかせたりと春は確実に近づいています。でも、まだまだ寒さが厳しいこの時期「子どもは風の子」というように、子ども達は寒さに負けずに元気に走り回って遊んでいます。どのクラスも子ども同士の関りが増えているこの時期、より一層友だちとの関りを深めていきたいと思います。
さて、先日新聞でこんな記事を目にしました。“小学4年になる娘が「お母さん、私、お金を使ってみたい。」と意を決したようにお母さんに言い出しました。数年分のお年玉が貯金箱にたまっていましたが、それまで欲しいものは親に買ってもらっていたため、自分でお金を使う経験がなかったのです”保護者の皆さんはどうでしょうか?私の子ども時代(ずいぶん昔ですが)はというと、小学校に上がる少し前から、五十円玉を握りしめて、近所の年上の子に連れられて駄菓子屋さんに行ったものです。そこで「十円足りないよ。」とか「三つは買えないよ。二つだよ。」と駄菓子屋のおばちゃんに言われたり少し高いお菓子を手にする年上の友達が「今日は止めて、明日のお小遣いと合わせて買えば。」とこっそり教えてくれたりと、今にして思えば多少の失敗を積み重ねながら幼いころからお金との付き合い方を徐々に学んでいたように思います。平成・令和になると、こうした子どもの懐に優しい憩いの場ともなる駄菓子屋さんも姿を消してスーパーやコンビニで買い物ついでに親に買ってもらうのが普通になりました。子どもが自然に金銭感覚を養うのが難しい時代だと言えます。小学校の学級懇談会等でも、子どもがお金を使う経験について話題になる。という話も聞いたことがあります。
園では毎年、年長の子ども達を対象に、おやつを持って園外保育に出かける数日前に、保育者が用意したお菓子の中から好きな物を決められた金額内で購入する、お買い物ごっこを経験します。品数よりも質重視の豪華版を選ぶ子、質より量で細かいものを数多く買う子と様々です。お金の計算と同時に、限られた中でもっと買いたいけど我慢するのも大事な経験です。
最近は、新型コロナ感染予防の観点から、スマホやICカードなどを使ったキャッシュレス決済が一般的になってきました。将来的には、お金を電子化して紙幣や銀貨を引き出せない「デジタル通貨」も検討されているそうです。機械の操作一つで瞬時に買い物ができる一方で、使ったお金が手元から減っていくという現実感がなくなり、ついつい使いすぎてしまい、気付くと大変な事になっていた。というようなことが今よりももっと身近で起こるかもしれません。現金の支払いがまだ可能な今のうちに、幼い頃からルールを守って使うリアルな体験をしておけば、大人になったときにそうした危険を防ぐことができるのかもしれませんね。

園長 鈴木勝子

1月

「新年あけましておめでとうございます」               

 昨年は日本中が東京オリンピック・パラリンピックに希望を抱き、新年を迎えたはずでしたが、その状況が暗転してコロナ禍に翻弄された年となりました。振り返れば園でも卒園遠足の目的地を急きょ変更したり、卒園式・入園式も例年とは形態を大きく変えて行いました。4月以降の行事につきましても皆様ご存じの通り、従来のやり方で実施する事は難しく、「中止にするのか?」「延期はいつまで?」「どうすれば出来る?」等々、毎回職員間で議論し、模索した一年でした。何が正しいのか?どうするのがベストなのか?他園ではどうしているのか?今までと同じやり方だけを検討していると、中止の判断しか選択肢はありません。また、私たち職員に「感染対策をしないで日々の保育や行事を行うことはあり得ない。」という基本的な認識が浅く、感染対策についてしっかりと理解するのには、正直少々時間がかかりました。こども園でもやはり『新しい生活様式(保育様式?)』行動の変容が求められているのです。当園の看護師より「感染症対策のポイントは、集団感染を防ぐこと。そのために日常の衛生管理と感染症拡大防止に努めること。集団感染が起こらないように、日常の衛生管理をしっかりと行っていれば、仮に園内や近隣地域内で感染症の発生があったとしても、情報を把握して、するべきことをしっかりと行い、徹底的に予防対策を講じていることが大事」と会議の度に職員に伝え、意思統一を図ってきました。保護者の皆様にも毎日の子どもさんの検温や体調不良時の早期対応、園内の入室制限等、ご協力やご理解をいただき、感謝いたします。
行事を検討する際には、「その行事は子どもの成長を助けるために必要なのか?」「優先度は高いのか?」「実行するには具体的にどうすれば実行できるのか?」今までと違う新しいやり方、新しい取り組みには熱意が必要です。こども園の全職員が職種を超えて熱意をもって考え、議論を重ねております。もちろん、近隣地域内の感染者が増加傾向であったり、園内で発生があるときには、中止の決断も必要となります。安心して行事を行うためには、その日だけの感染対策ではなく、保護者の皆様と職員の日頃からの衛生管理、健康管理の徹底が必須となることをつくづくと実感しております。
この先の流行状況がどの様になるのか、まだまだ予測がつきません。集団感染のリスクだけを検討し、「これまで通り」という考えだけで検討していると、中止という判断しかできなくなります。柔軟な対応や新しい視点に立っての『新しい保育様式』に取り組むチャンスと捉えたいと思います。保護者の皆様もご家庭や職場に於いて、少なからず新型コロナの影響を受けていらっしゃることと思います。一日でも早くこの状況が終息することを願います。
今年も保護者の皆様の力をお借りしながら、安心・安全な教育・保育や行事の在り方を職員間で検討し、より質の高い教育・保育を目指していきたいと思います。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

園長 鈴木 勝子

12月

「感謝祭からクリスマス」

 ハロウィンが終わるとお店のディスプレイは早くも華やかなクリスマスの飾りつけに変わり、サンタクロースもあちらこちらに登場し、日に日に賑やかさを増していきます。クリスマスはサンタクロースの誕生日と思っている子どももいるそうです。こども園ひかりの子ではクリスマスの本当の意味を子どもはもちろんのことお家の方々にも、日々の保育から子どもさんの様子を通してお伝えできたらと考えます。園では旧約聖書の時代の人々が救い主の誕生を信じて待ち続けたように、クラスごとにアドベントカレンダーを毎日一つずつ開いたりクリスマスの飾りを増やしたり絵本を見たりと園全体でクリスマスの準備を進めていきます。先日のお手紙でもお知らせしましたが、例年とは違ったかたちのクリスマスとなりますが、子ども達と共にワクワクしながらクリスマスを待ちたいと思います。
さて、十一月の収穫感謝祭の後に各クラスで育てた二十日大根の苗や保護者の方から沢山いただいたサツマイモ、夏にきれいに花を咲かせたヒマワリの種、職員が持ち寄った少しの野菜等を商品にしてミニバザーを行いました。年長クラスの子ども達が時間を区切って交代で店番をしました。「いらっしゃいませー」「おいも買ってくださ~い」と元気な呼びかけに沢山の保護者の方が足を止めてくださいました。収穫感謝祭の礼拝では自分たちで蒔いた小さな小さな二十日大根の種が発芽してかわいい双葉になった様子を見たり、もみ殻付きのお米と精米した白米を見ながら、毎日食べているご飯もお百姓さんが苗から育て、暑い夏に草取りをしたり害虫から守ったりと大切に育てておいしいおコメになることを職員から聴きました。神さまがつくられた自然の恵みや多くの人たちに感謝の気持ちを感じることができました。そして、この恵みをみんなで分け合いたいと、ミニバザーを開催しました。自分たちが育てた二十日大根や自分たちが袋詰めしたヒマワリの種や野菜を買ってもらって、クリスマスの献金に繋げたいと考えました。
毎年、「世界中の人たちみんなが嬉しい気持ちでクリスマスが迎えられるように、自分達ができることをしよう。」とクリスマスの献金のお話しをしています。例年と比べて規模は縮小しましたが、“感謝祭・ミニバザー・クリスマスの献金”この一連の保育活動から献金の意義を職員間で考え、子ども達に伝えることができました。ひかりの子では、行事はどれも単なるイベントではなく、子どもの成長に欠かせない重要な意味を持ちます。コロナ禍で行事の規模縮小や見直しを余儀なくされている今年度は、改めて保護者の皆様に行事の意味についてお伝えする機会が与えられているようにも感じます。第一回目のアドベント礼拝の日には子ども達が制作した献金箱をご家庭に持ち帰りました。お手紙を添付しましたので趣旨をご理解のうえ、ご協力の程よろしくお願いいたします。

園長 鈴木 勝子

11月

「お口ポカン」

 紅葉の美しい季節となりました。園庭では子ども達が赤や黄色に色づいたアメリカフウの葉を拾い集め、「見て見て」と嬉しそうに見せに来てくれます。
毎年十月に行われる「あそびのひろば」は、今年はコロナウイルスの感染予防のため、ひかりの子のHPに写真の掲載をして、遊びの様子を保護者の皆様にお伝えしました。しかしながら、年長クラスのそら組にとっては、「写真だけでは子どもの達の頑張りが伝わらない。やはり、お家の方に直接見てもらいたい。応援してもらいたい。」という担任の強い想いから、急きょ十月三十一日(土)にそら組の運動あそび参観を行いました。この日に向けて、手のひらに頑張り豆を作って鉄棒や雲梯を一生懸命練習したり、何度も跳び箱に挑戦したりする姿も見られました。当日は子ども達の嬉しそうな生き生きとした顔を見ることができ、急なお願いにご対応くださったご家庭の皆様に感謝いたします。コロナウイルスはまだまだ終息の兆しが見えず、例年とは違う生活や行事の中止、それに代わる持ち方について職員間で話し合いを重ね、子ども達一人ひとりにとって、保護者の方々にとって、園生活が安心で安全な場所、楽しい場所でありたいと考えます。今後ともご理解ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
さて、先日歯科医師会によるオンライン研修会に参加し、地域歯科保健分野認定歯科衛生士 赤井綾美先生より「口腔機能と全身の発達」に関するお話を聴く機会がありました。口腔と全身機能の結びつきを考えたことが無かった私は「なるほど!」と大いに納得するお話でした。一部ですが簡単に紹介させていただきます。近年、外反母趾や浮き指、偏平足などの足指の変形が乳幼児にも見られるそうです。人間は立つと全体重が足裏にかかるため、足指がしっかりと使えていないと重心が踵にかかり、バランスを取ろうと前傾姿勢になります。前傾姿勢になることで自然と口が開きやすくなるそうです。常に口をぽかんと開けている子どもを時々見かけることがあります。人間が立って歩けるのは重力に対して立位の姿勢を保つことができる筋肉の働きがあるからです。この筋肉は生まれてから『うつぶせ寝から頭の持ち上げ、ハイハイから座位、つかまり立ちから歩行』と体幹から鍛えられていくことで発達していきます。また、体幹を鍛え正しい姿勢をとることで呼吸にも影響するそうです。全身を使った遊びや運動が不足し、屋内で同じ姿勢でのゲームあそび等で誤った呼吸(口呼吸や胸式呼吸)をし続けているとさらに姿勢が崩れてしまいます。発達段階を経て歩行ができるようになった後は、全身を使った遊びや運動を充分行うことが重要である。また、腹式呼吸で横隔膜を鍛えることでいわゆる「お口ポカン」を改善する方法となるそうです。
戸外で身体を動かしやすい今の時期、室内での密を避けるという意味でも園庭で思い切り体を使って遊びたいと思いました。

園長 鈴木 勝子

10月

子育てのバージョンアップ
                     
 園庭の桜の葉が緑黄色に変わり、園周辺の田んぼではたわわに実った稲の上を赤トンボが飛び交い、やっと過ごしやすい季節になりました。何もかもが例年通り、とはいかない状況下で過ごしたこの半年は新たな気づきや見直しに繋がることもたくさんありました。保護者の皆様や地域の方のご理解、ご協力と神さまの守りの中で無事に過ごせていることに感謝したいと思います。
 さて、秋空が澄み渡り気持ちの良い日、数か月前までは保育者に抱っこされたり背中におんぶしてもらっていた子が園庭で保育者の後をよちよちと上手に歩いていたり、ボールを追いかけている姿に思わず笑みがこぼれます。一歳児のAちゃんが幼児用の一番低い鉄棒を前に上を見上げて、前に進もうかやめようか、どうしよう。というように体を前後にしていました。そして意を決したように少し首をすくめて鉄棒の下をくぐり抜けました。一度成功すると、元いた場所に戻って今度は躊躇することなく堂々とゆっくり鉄棒の下をくぐって歩いていました。おそらく一度目は頭に当たらないか、鉄棒の高さを見て確認して、内心ドキドキしながら慎重に通り抜けたのでしょう。無事に通り抜けられることが分かった二回目は自信満々、誇らしげに歩いてくぐり抜けていました。時間にしたらほんの五分程度の出来事ですがAちゃんは内面でいろいろなことを考え挑戦し「できた!」と達成感を感じたことでしょう。このAちゃんの行動を見て、おとなはつい「あぶないよ。あたまゴッチンするよ」と制止したくなってしまいます。子どもは様々な探索活動を繰り返しながら自分の周りの世界を理解し、自分の体を認識していくのだと思います。できるだけ安全な環境の中子どもの探索活動をゆったりと見守りたいものですね。
赤ちゃんがハイハイを始めるころからこの探索活動が始まり、その頃から親は「ダメ」という禁止の言葉を使い始めるという報告もあるそうです。家の中の段差や危険なものなどがあって思わず口にしてしまうのでしょうね。2歳くらいになると周りの世界の理解が進み、靴を自分で履こうとしたりボタンを留めようとしても、まだ手先の力が追い付かず自分でできずに怒ったり、おとなが手伝っても怒ったりと、何とも厄介な時期です。でもこれは自分へのチャレンジ。大事な心のエネルギーとなる自立心が育つ時期だと考えられています。さらに1~2年すると「こうするとママが喜ぶ」「これは○○ちゃんが好きなもの」と他人の気持ちが分かるようになります。そして、この頃におとなからすると困った行動(隠す、落とす、汚す、壊すなど)いろいろなことをしでかしておとなの反応を見ています。自分が予想するおとなの反応と実際のおとなの行動が同じなのか、違っているのか。読み取りの力を鍛えているのかもしれませんね。
子どもの成長に合わせて、育児もバージョンアップが求められるのですね。困ったり、戸惑ったりしながらも「これは何かの成長かも?」と少しだけ見方を変えてみるとよいのかもしれません。

園長 鈴木勝子

9月

「タイムアウト」
                                      
連日のように暑い日が続いていますが季節は確実に移り変わり、身の回りの自然は少しずつ変化しています。空を見上げると真っ青な空にいわし雲が浮かんでいたり、先日は園舎の裏で大きなバッタを見つけました。子ども達は園庭で春のダンゴムシから始まり、セミとり、バッタやカマキリなど秋の虫探しへと、高感度のアンテナで自然の変化をキャッチしているようです。
さて、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、当園でも子どもさんの朝の受け入れ方法を変えたり、室内ではできるだけ密を避けるよう、学年を超えての交流の機会を極力減らしたりと、これまでとは違う日常を余儀なくされています。また、保育は人と人との関係性の中で育まれる営みです。園ではより良い保育をしようと思えば思うほど、子ども達と接近して「3密」にならざるを得ません。玩具や室内の消毒を普段以上に注意深く行っていますが子どもと保育者がソーシャルディスタンスを取りながら保育することは不可能です。この事を大前提に、いかに感染リスクを低くするか、看護師を中心に職員間で日々検討しながら保育を進めております。ご家庭でもこの夏は遠出を控えたり、人混みへの外出は自粛をしたりといつもとは違う夏を過ごされたことと思います。中には在宅ワークをしながら、子どもさんと二十四時間ずっと関わらざるを得なかった方もいらっしゃるかと思います。趣味の活動や買い物すら自由にできずストレスが溜まってしまったり、遠く離れた実家にもなかなか帰省できずに寂しい思いをされたりと保護者の皆様も私たちの想像以上のストレスを感じていらっしゃるのではないでしょうか。今は感染を防ぐために、人間同士が物理的にソーシャルディスタンスを取らなければならない一方、「心の濃厚接触」が必要だと強く感じます。
先日、世界保健機構(WHO)より、コロナ禍で親が心掛けるべき「6か条」が公表されました。世界的なパンデミックが発生している中で、急な環境の変化や世の中の物々しい雰囲気によって、子どもが強いストレスや不安を感じた場合どう接したらよいか?悩んでいる全世界の保護者に向けて、アドバイスを発信しています。その中に「焦らずストレスマネジメント」という項目がありました。ポイントをお伝えします。
子どものサポートができるように、まずは自分を大事にしましょう。世界中の人が同じように恐怖を感じています。心の内を話せる相手を見つけましょう。子どもが寝たら楽しいことやリラックスできることをしましょう。子どものことでイライラしている時や、何か間違ったことをしてしまった時に、いったん休みをとるのは必要なことです。深呼吸をしたり、地面を感じたりするだけでも違ってくるでしょう。
興味のある方はぜひ検索してみてください。https://covid-19-act.jp/parenting-who/
アメリカの子育てのひとつで、子どもが泣き出したり 聴く耳が持てない時には“タイムアウト”すぐに子どもを叱ったりはせず、一定の時間をおいて落ち着かせることだそうです。その間に子どもの気持ちも落ち着き、同時に親も感情に任せて叱ることもなく、子どもときちんと向き合って話せるようになり双方に効果があるようです。親も腹が立ち大きな声を張り上げる代わりに“タイムアウト”今、まさに必要な事かもしれませんね。

園長 鈴木 勝子

8月

「直接的な体験」

 園庭のヒマワリが咲きセミの鳴き声が響き渡り、長かった梅雨がやっと開けました。例年ならば夏休みに向けて子どももおとなも何となく、心ウキウキワクワクする時期ですが、今年は新型コロナウイルス感染症が世界的規模で広がり、コロナ対策に疲れが出始めた頃に市内での感染拡大があり、この状況がいつまで続くのか分からない不安と予想のつかない夏休みを想うのは初めてのことです。穏やかで健康的にこの夏を過ごせますようにと願わずにはいられません。(下段にお願い事項を記しました。ご一読ください。)
さて、先月中旬に天候や新型コロナウイルスの感染が心配される中、年長クラスのお泊り保育を行いました。今年は園内での宿泊となり、一日目の園外保育の行先も前々日まで二転三転し保護者の皆様にはご心配をおかけしました。七月の園だよりでも少し触れましたが、お泊り保育ではダイナミックな自然の中で、日常とは違う経験をしたい。日常では味わえない、驚きや感動を友だちと共有したい。とのねらいをもって、職員は活動の内容や園外の行先を何度も検討し、子ども達とも相談をしながら準備を進めてきました。「川遊びしたい!」「虫探ししたい!」と廃材を持ち寄り、舟や虫かごを工夫して作り当日を楽しみに待ちました。また、前々日にはイオンに買い出し班と畑の野菜の収穫班に分かれて晩ご飯の夏野菜カレーの材料を調達し、前日に野菜の切込み準備をしました。当日は、今にも降り出しそうな空模様の中、大型バスに乗り込み掛川市の『ならここの里』に出発しました。気温もあまり上がらず前日までの雨もあり川遊びは断念し、川辺での生き物探しや山道の散策、魚(アマゴ)つかみを経験してきました。魚つかみは担任も含め初めての経験です。初めのうちはおっかなびっくりでしたが職員が腰をかがめて魚を捕まえて見せるとやる気モードになり、真剣な表情で魚を追いかけていました。時間が経つと、ただ追いかけるのではなく、魚を岩の間や隅に追い込んだ方が捕まえやすいことに気がつき、「そっちから追いかけて来て!」と隅の方で待ち構えて、友達と協力して捕まえる子もいました。反対に魚に少し触れて「ヌルヌルで気持ち悪い」「無理!触れない!」と言う子もいましたが職員が捕まえた魚に手を添えて、何とか箱に入れることはできました。捕まえた魚をその場で串にさして塩焼きにしてもらって昼食に頂きました。「おじさんが焼いてくれるよ」と話すと「かわいそう」という声も聴かれました。ついさっきまで目の前で泳いでいて自分で捕まえた魚です。まさに生き物の〝命を頂く″です。『いただきます』の言葉の意味や重さを経験できたのではないでしょうか。
話は変わりますが、園外散歩に出た際に虫や鳥の鳴き声に全く興味を示さなかった園児が「ピピピ」と電子音が聞こえた瞬間にその音の方に向いた、という報告があります。子どもの「ゲーム依存・スマホ依存」が世界的に深刻化しています。こうした事態を受けて、乳幼児期からの予防が注目されています。医療関係者による予防策として「ゲームで遊ぶ時のルール作り」や「スマホを乳幼児に与えない」他に、「人と直接触れ合い、五感を使って遊ぶ」ことが推奨されています。人と直接触れ合い、五感を使ったリアルな遊びから得る充足感や達成感が経験として蓄積されると、依存症にかかりにくいことが明らかになっているそうです。テレビにもゲームにも触れることなく過ごしたお泊り保育は、五感を使った直接的な体験から心を動かされ、感性が養われた一日半となりました。

園長 鈴木 勝子

7月

 「子どもに必要な自然との関わり」

 梅雨明けが待ち遠しい季節となりましたが、本格的な暑さの中で如何にして3密を避けるか、試行錯誤しながら過ごしています。エアコンを使いながらの換気にも気を使わざるを得ず、悩ましいばかりです。コロナウイルスと共存する新しい生活様式にはまだまだ戸惑いもありますが、身の安全は何物にも代えられないと肝に銘じて過ごすこの頃です。
 さて、先日“幼児期に自然で遊んだ保護者 子どもも9割「好き」に”という見出しの新聞記事を目にしました。昨年9月に全国の国公立幼稚園・こども園から抽出した保護者・保育教諭が回答した「自然との関わりに関する意識・実態調査」によると、幼少期に自然と関わることが「とても好き」「まあまあ好き」と答えた保護者の子どもは、自然と関わることが「とても好き」「まあまあ好き」という割合が9割を超えた一方で、幼少期に自然と関わることが「嫌い」「あまり好きではない」と回答した保護者の子どもは、自然と関わることが「嫌い」「あまり好きではない」という割合が髙かった。それでも、幼少期に自然と関わることが「嫌い」と答えた保護者の子どもでも、自然と関わることが「好き」「まあまあ好き」が6割以上いるという報告がされていました。「そうそう!」と納得された方もいらっしゃるかと思います。
園で子ども達の身近な自然との関わりといえば、例年大人気のダンゴ虫。手のひらに乗せるとクルっと丸くなり、なんとも愛嬌のある動きに大喜びの2歳児。幼児クラスでは、子ども達による一斉捜索が始まり、事務所前のダンゴ虫マップは連日に賑わいを見せていました。「ダンゴ虫いた!」「どこにいた?」「ブランコのとこにいっぱいいた」「黄色の模様はメスだよ」絵本から得た知識を得意げに披露する年長クラスの男の子。「ホントだ!このメス太ってるから卵あるかも!」「学童のダンゴ虫、脱皮したよ」「事務所に置いといてみんなに見せてやる?」と年下の友達を想う優しい学童さん。ダンゴ虫を媒体に会話がはずみ、「おもしろい!」「不思議!」「やってみたい!」「知りたい!」がどんどん膨らんでくる様子が手に取るように伝わってきます。これが学びの原点です。小学校の生活科や総合学習のようなアクティブラーニングの基礎が幼児期に培われます。
子ども達を取り巻く社会環境が大きく変化している今、かつて子どもが経験してきたような自然に触れる経験をいかに保証できるかということが大切になります。園は同じ年代、または異年齢の群れから他の子どもがしていることに興味をもって遊びの幅が広がるのです。家庭だけではなかなか難しいですね。園が家庭に代わって自然に触れる経験を積極的に取り入れる必要を感じます。子どもの興味関心、子どもの声に応じて、どう保育を展開させていくのかが乳幼児教育・保育のプロである、私たち保育教諭の大事な役割です。
毎年行っている、年長クラスの観音山一泊保育は日常では経験できない、ダイナミックな自然の中でたくさんの驚きや発見・感動を経験する機会としています。今年度は新型コロナウイルス感染症予防のため、園内でのお泊りに変更いたしました。しかし、お泊り保育ではダイナミックな自然の中で、日常とは違う経験をしたい。日常では味わえない、驚きや感動を友だちと共有したい。と子どもたちと相談しながら現在、計画・準備を進めています。
年齢の小さなお子さんも梅雨の晴れ間に親子で戸外に出かけ、身近な自然と触れ合ってみてはいかがでしょうか。

園長 鈴木 勝子
 

6月

「行事の見直し」

 緊急事態宣言が全国的に解除となりホッとしたのもつかの間、北九州や東京では早くも感染者が増加傾向にあり、先の見通しがつかないこの事態は、迷うこと、不安な状態がまだまだ続きそうです。保護者の皆様には、長い期間にわたり登園自粛にご協力いただき心より感謝申し上げます。こども園での生活は、濃厚接触は避けられませんが「新しい生活様式」を取り入れながら、これまで以上に園児・職員の健康管理には留意していきたいと思います。引き続きご理解とご協力のほど、よろしくお願いいたします。
さて、入園、進級から早2ヶ月が経ちました。登園自粛等で今日から仕切り直しの方もいらっしゃいますが、環境の変化には、必ず緊張と不安が伴います。まして乳幼児は、自分の気持ちを的確に言葉で表現することができません。(大人でも難しいですね)泣いて当然、登園渋りがあって当たり前、個人差もタイミングも違います。昨日はニコニコだったのに、今日はダメといった行きつ戻りつを経験をされる方もいるでしょう。でも大丈夫。親の前でぐずるのも、園で泣けるのも、我慢をしないで安心してありのままの自分を出せた証です。ひかりの子が一人一人の子どもさんにとって心から安心できる場になるようにと願います。神様は一人ひとりの子どもに成長する力をくださっています。神様を信じ、我が子を信じて、出来るだけドーンと構えていてくださいね。
 今月は、当園の行事の考え方について少しお伝えします。年間行事計画を見て頂くとわかるように、今年度もイースター、遠足、花の日、そしてお泊り保育、夏まつり、あそびのひろば、クリスマス、みんなではしろう…と教会の暦や日本の歳時記、季節に合わせて様々な行事を計画しました。乳幼児の成長に最も大切なのは毎日の保育の積み重ねですが、行事もまた子ども達の経験の幅を広げるまたとない機会です。非日常に対するワクワク感を大切にしながら、行事がイベント化しないようにと、職員間で毎回確認しながら行っています。行事でも日々の保育でも、一番大切なのは子ども達の成長です。行事に子ども自身が自主的に参加するためにも、行事の内容を日々の保育と決して切り離したものにはしない。行事を保育の延長線上に位置づけることで、子ども達がその内容をよく理解して自信を持って参加でき、当日の経験が成長の節目ともなる。それが子ども達のために行う行事の目的です。
 加えて考える必要があるのは、昨今の社会状況です。今ほど子育てが困難な時代はないと言われていますが、その困難さと共に、子育ての楽しさ、喜びをお家の方と共有したいと願います。幸いなことに、ひかりの子には保護者会があり、父ちゃんじっちゃんの会があります。これらは当園の財産です。今月より親子ひろば(園庭開放)も再開いたします。子ども達だけではなく、お母さん、お父さん達の、そしてこの地域の子育て世代の方々の笑顔が溢れる園となるようにと願っています。子育てのキーワードは「共に育つ」です。子育ては一人では決してできません。大人も子どもも共に楽しく過ごし、仲間の輪が広がることを願います。コロナ対応を最優先に考え、園行事の在り方を見直してみたいと思います。

園長 鈴木 勝子

5月

「親子の絆」                     
 
 草や木も新芽から若葉になり、いろいろな花が咲き始め気持ちの良い青空の広がる5月。いつもなら心もウキウキ、いのちの息吹を感じる季節ですが、今年は新型コロナウイルスの影響が社会全体に影を落とし、先の見えない不安や閉塞する空気を感じます。専門家会議提言の「新しい生活様式」を多くの人が実践し、以前のような、当たり前の日常を取り戻すことを願わずにはいられません。
毎年この時期になると園では『おかあさんだいすき』という讃美歌をうたいます。歌い始めると子ども達の表情が一気に笑顔になり、お母さんを想うだけで嬉しいという気持ちが伝わってきます。今年も「おかあさんだいすき~」と保育室から歌声が響き、心が和みます。
先日、あるテレビ番組で昨年度当園の育児講演会にお越しいただいた“子どもが作る弁当の日”提唱者の竹下和男先生が「昨日は変えられないけど 明日は創れる」と題して講演されていました。「こどもの日」「母の日」を前に親子の絆について考えるよい機会となりました。簡単ですが心に響いたお話を伝えさせていただきます。今は親が食事を作らず買ってきたものを食べるのが普通になっている。しかし、それは子どもの育ちを阻害している。家庭的に問題を抱える子ども達から「どうせ俺なんか」その後に続くのは、役に立つ人間じゃない、生きている価値がない、という否定的な言葉が隠されている。“弁当の日”の意義は食事を作る側の気持ちを体験しなければ、食べる側の気持ちだけで終わってはダメだ。自分が作った物を喜んで食べてくれる人がいることで自分は価値がある、存在していてもいいんだと肯定できる、自分が作った物を食べてもらうのが嬉しい、という感覚は、年齢が小さいうち程、体に残り効果がある。3~9歳頃の子どもは台所に立ちたがる。その時にしっかりと親子の絆を作る。親が作った味付けが子どもにとって家庭の味となり、親子の絆が作られる。最後に健やかな子どもに育てる秘訣をお話されました。①夫婦仲が良いこと→子どもは夫婦喧嘩を見る事で傷ついています。②子育てを楽しむ→自分の体を作る食事を作ってくれるお母さんが子どもは大好きです。③子どもを育てる親自身が成長している→親の姿が目標値となる。親の生き方が子どもに相続される。ということでした。昨年の育児講演会でも「今の子育てが、百年先の未来の家族に繋がっている。」とお話しくださったことを思い出しました。昨年の講演会後、子どもと台所に立ちイキイキとした顔に竹下先生の言葉が裏付けられました。子どもが自分のため、家族のためにご飯を作ってくれる日を楽しみに子育てをしたい。次のお弁当の日には子どもが自分でおにぎりを作る約束をしました。等保護者の皆様からたくさんの感想をいただきました。当園では、今年度も9月末より「お弁当の日」を予定しています。子どもは親の「気持ち」を欲しがっています。お弁当箱の中にはお弁当を作るために費やした時間や親の気持ちが詰まっていて、子どもはそれをいただくのだと思います。
在宅勤務や自宅待機等で、ご家庭で子どもさんと過ごす時間が長い今だからこそ、食事作りから「親子の絆」を考える機会としていただけると幸いです。

園長 鈴木 勝子

2020年4月

「入園進級おめでとうございます」

 玄関や園庭のプランターの花が咲きそろい、「ようこそ、ひかりの子へいらっしゃいました。入園、進級おめでとう」と子ども達に呼び掛けてくれているようです。お子様のご入園、ご進級を心よりお喜び申し上げます。二〇二〇年度は、三十三名の新入園児をお迎えすることができました。これから、共に『ひかりの子として歩んでいく』仲間との出会いに感謝いたします。また、昨年度末には保護者の皆様のご協力をいただき、年度末研修会および新年度準備を滞りなく行うことができました。お忙しい時期に家庭保育のご協力ありがとうございました。
さて、連日のように新型コロナウイルス感染症拡大のニュースが報道され、予断を許さない状態が続いております。当園といたしましても、今後の動向に合わせて保育の体制等、浜松市や事業団本部と検討してまいりたいと思います。引き続きのご理解とご協力の程、よろしくお願いいたします。
ここ数年の間に日本社会は激しく変わり、特に最近はあまりの急速な変化に人々の心の状態が追いつかなくなり、社会全体がどこかいびつになっているように思います。しかも不幸なことに、そのしわ寄せは弱い者に降りかかり、絶対にあってはならないような、幼い子どもたちが犠牲になってしまう悲しい出来事も起きています。この様な時代だからこそ、私たちが大切にしている「子どもへの温かなまなざし」や「無条件の愛」が子どもの育ちには不可欠だと強く感じます。幼児期にどのような愛を受けたかが、その後の人生に大きな影響を及ぼすことは昔からよく言われ続けてきたことですが、脳科学の研究が進むにつれてその影響は確実なものになってきています。幼児期の子どもに対する愛は「無条件の愛」です。子どもが良いことをしたときだけ褒めてあげる「条件付の愛」とは全く異なります。何か良いことをした時だけ褒められ、優しくされる子どもは、他人の顔色ばかりをうかがうようになります。子どもを健やかに育てるのは【無条件の愛】です。子どもが良いことをしようが悪いことをしようが、他の子と比較したりせずに「ただ、そこに存在する子ども」を愛してあげること。目に見える「出来た。出来ない。」ではない、評価のないほめ方をすることです。簡単なようでなかなか難しいことかもしれません。「よくがんばったね」「楽しかったでしょ?」「ありがとう、ママ(パパ)もうれしいよ」と、ご自分の気持ちを付け加えながら、子どもさんのがんばりを認めること、それが本当の意味での「愛」なのではないでしょうか。今年度も、保護者の皆様と共に子ども達に【無条件の愛】のシャワーをたくさん降り注ぎ、たくさんの笑顔が見られるよう、職員一同努めてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

園長 鈴木 勝子