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「子どもから学ぶ②」

『統合保育』という言葉を聞いたことがありますか? 保育施設において、何らかの障碍(身体・知的・精神など)があり集団の中で保育するのは難しいと思われる子どもを集団の中で保育することです。聖隷の保育施設は基本的にはどの園でも統合保育をしています。私が勤務していたひかりの子保育園(現:聖隷こども園ひかりの子)で統合保育を行っていた時、当時自閉症と少し知的な遅れがあることで入園していたMさんのお母様から、先日、ご自分が代表を務められている『浜松キャラバン隊』(浜松市浜松手をつなぐ育成会)の公演が磐田であるから是非見にきてほしいというお手紙を頂きました。
Mさんが表紙になった、“27歳のMさんが今夢中になっている”ことを取り上げたCo-CoLifeというの情報誌といっしょ送ってくださいました。情報誌のMさんは当時の面影を残しながら、粘着テープ貼りに夢中になって作品を作り上げているMさんの姿がありました。
当日の公演は、「みんなちがってみんないい」と題して、『障碍を持った人たちも社会の理解によって普通に生きていける』ことを社会に広く伝えていくことを目的にした浜松キャラバン隊のメンバーの寸劇でした。公演終了後、Mさんのお母様との再開で、卒園してからのMさんの様子を聞きながら、当時を懐かしく思い出しながら短い時間でしたがお話することができました。
私は統合保育をこれまで行う中で、子どもたちからたくさんのことを教えてもらいました。
 子どもは、障碍の有無に関係なく、どのような子どもにも対等に関わろうとします。脳性麻痺で嚥下がうまくできなく、いつもよだれを垂らしているKちゃんに「Kちゃん、くさい!」。足が不自由な為に補装具をつけて歩いているHくんに「何でギコギコ歩くの?変な歩き方してるね」と言いながら真似して歩いてみたり、お部屋に入らないでいつまでもブランコをしているTくんに、保育者が何度も入室を促しているのを見て「Tくんはね、いつもブランコしてるよ。きっとブランコが好きなんだよ」。 また、履いている靴を遠くに飛ばしては喜んでいるAちゃんに拾いに行く保育者はイライラですが「Aちゃんは、『明日天気にな~れ』をしているんだね」等々です。
 Kちゃん、Hくんのような子に対して私たち大人は子どもたちに「そんなこと言ったり、真似してはいけません」となりがちです。私も幼い時、障碍を持った方が身近にいなかったこともあり、そうした方を見かけると珍しさや興味もあってジロジロみると「ジロジロ見ないの!」と母から強くしかられた記憶があります。
 子どもは自分と違うから、解ろうとするからこそKちゃんやHくんに疑問や思ったことや感じたことをそのまま言ったり、真似たりするのです。子どものそのような言動は、どうしてそうなのかを考えることでまた真似してみることで理解し、理解できれば自分はKちゃんやHくんにどんな支援ができるのか必然的にわかってくるのです。『できなかったら、できる者がやればいいこと』なのです。
子ども達は、「TくんやAちゃんにも障碍があるからそうしている」といった思いは全くありません。それはあくまでも対等な関係の中で友だちをみていることがわかります。 統合保育は、障碍をもった子どもたちもいっしょに生活する中で、障碍をもった子は他の子から刺激を受け、そうでない子もそのような子と生活を共にすることで、共生の芽が自然に育っていくのです。そして保育者もそのような子どもたちをみながら、多くのことを教えられて保育者として、そして‘人’として育ってきたのです。