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保育環境を考える

朝夕は涼しさを感じられるようになり、秋の訪れを感じますね。職員のご家族よりスズムシをいただきました。「間近でスズムシを見たことがなくて」と保護者の方も飼育ケースに顔を近づけて、興味津々な方もいらっしゃいました。事務所入り口に、置いてありますので、スズムシの美しく鳴く姿をぜひ、ご覧ください。
さて、こうのとり保育園では、今年度、園全体で“保育環境をどう整えるか”について取り組んでいます。『「やりたい」という思いを持って主体的に活動する子どもに応える環境づくり』をテーマに、クラスの環境を再構成しています。今までもエピソードや写真を用いて、子どもの育ちに合わせて保育環境を整えてきました。今年度は、人間・空間・時間といった3つの間を意識してビデオも使い、子どもの遊んでいる様子や保育者の関わりを撮り、職員皆でビデオカンファレンスを行っています。職員間で様々な意見交換ができ、ビデオから担任が気づいていないことも確認できます。職員同士がお互いを信頼し合っているからこそできうるものだと私は考えます。より質の高い保育そして教育を目指すために、子どもひとりひとりの姿を丁寧に捉え、保育の実践課題に基づいて、保育環境を整えていくことは重要です。子どもの年齢や発達段階に合わせて、行っています。
3歳児クラスでは、一斉保育の形態を変えて、コーナー遊びを中心に室内を構成し、保育展開を試みています。コーナーあそびの形態をとることで、保育者主導ではなく、子ども自身が『おもしろそう』と興味関心を膨らめ、『これをしたい』『やってみよう』と主体的に遊べる環境構成が生まれるのではないかという考えからです。
ある日の保育活動で、子どもたちが興味を持っているいくつかのコーナー遊びを設定しました。絵の具遊びの準備をしているとその段階から興味津々の子どもたち。一斉に行う保育と違い、興味関心を持った子どもたちが集まってきます。そして、終わったあとにもう一回やりたい子また、他の遊びに移る子と様々です。一方で、友だちと一緒に、カブトムシの飼育ケースに見入っている子どももいます。また、子どもの興味に合わせて、保育士がママごとコーナーにテーブルセンター等を加えていくと、家庭の心地よい雰囲気がその空間に生まれ、一緒に食卓を囲む友だちの輪が広がっていきます。ひとりひとりの想いが尊重され、自分で選択して、活き活きとあそぶ子どもの姿を垣間見ることができました。担任は『一斉活動では、保育者側が計画し、皆でつくろうと思ったものが一斉にすぐに出来上がります。しかし、時間にも余裕を持つことで、一斉活動でなくてもそれが可能になることを最近感じています。「皆がちゃんと完成できるの?」と思うかもしれませんが、興味のあるものが目に入るとすぐにやりたい子、周りの子がやっている所をみて興味が湧く子、完成したものをみてイメージが湧いたところで始める子等、それぞれに意欲を感じるまでのペースは色々なのではないかと感じています。子どもたちの興味にはとことん応えていき、子どもが「やりたい」と思ったことや遊びが“できる”環境、そして、その「やりたい」と思ったことと向き合って、じっくり関わる時間を保証することを意識しながら、日々の保育内容、環境を考えていきたいと思います。』と話していました。
OECD(経済協力開発機構)による乳幼児に関する国際比較調査に日本は2012年の報告書よりデータ提供を行っています。こうした調査結果から、保育の質の重要性や乳幼児期の教育が社会全体に与える効果が明らかになっています。その中で、『乳幼児教育の特性は、「何かを知っている」「何かができる」という成果の部分ではなく、「何かを知りたいと興味関心を抱く」「できるように工夫しようとする」、そのプロセスを通して子どもの育ちを認めることにある』としています。私たちはこうした就学前の保育・教育の潮流を知ることで、求められている取り組みを確認しながら、私たちが目指す保育を再構成しながら進みたいと考えています。

園長 永島 弘美