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ホーム  > 園長コラム  > 海ガメ放流を通して

海ガメ放流を通して

秋を感じるこの頃。心地よい金木犀の香り漂う季節となりました。
先日は、天候不順により年長組の親子遠足(海がめ放流)が中止となりました。サンクチュアリの責任者の方から「通常は、10月中旬まで申し込みが可能ですが、猛暑で子がめの数はとても少なく、対応は難しい」とのお返事でした。アカウミガメの産卵は5月下旬から8月上旬で、産み落とされた卵は約2ヶ月でふ化します。2週間おきに2-4回ほど産卵し、その度に100個程産む訳ですから年間には数百個の卵を産むことになります。ふ化は24℃から32℃の間で進行し、この温度幅から外れるとほとんど死んでしまうようです。
 その後、サンクチュアリの方から「一人に一匹ではなく、こちらの日にち指定であれば、スタッフも対応できます」とのお返事に、年長の子どもたちに「数匹になるかもしれないけれど、それでも行きたいですか?」「3匹だったら3人の子どもたちだけが放流することになる?」と尋ねると、子どもたちはしばらく考え、「放流できなかった人がかわいそう」「それなら、こうやってみんなで順番に、カメさんを渡していけばいいよ」と両手を合わせてやってみせてくれました。「じゃあ、A子さんが言ってくれたようにしましょうか。」「皆で、カメさんを海に放しに行こうね」ということで、急きょ、28日に年長の子どもたちだけでバスに乗って出かけました。
『海がめ放流』について、事前に海がめの生態(親がめの産卵や環境との関係など)について学び、興味津々の子どもたち。ラッキーなことにこの日に生まれた子ガメの数も多く、ひとり一匹ずつ放流することができました。子ガメとふれ合い、その動きを観察したり、名前をつけたりしたあと、海に放流しました。「がんばれー」と応援する子どもたちは海がめに想いを寄せていたようです。天候にも恵まれ、ゴミ拾いをして帰ってきました。
海ガメは陸に住んでいたカメが海へ進出したものです。海中で早く泳ぐために、手はヒレのようになり、甲らは水の抵抗を受け難い流線形になりました。甲らの骨は隙間が多くなり軽くなりました。この進化のために海ガメはとても早く泳げます。しかし、卵は海の中では死んでしまうので、母ガメは産卵のために砂浜に上陸するのです。砂の中でふ化した子ガメは、夜になると一斉に脱出します。砂中の子ガメは、砂の温度が低下することで、夜であることを察知し、脱出した子ガメは光をたよりに海の方向へ向かいます。人の目からみれば夜の海は真っ暗ですが、子ガメは紫外線が見えるため、海の方向が明るく見えると考えられているようです。ところが、砂浜の近くに人が住むようになると外灯が設置され、海ガメは灯りを嫌うために、その近くでは産卵しなくなります。しかし、人口が増え、都市が発達すると明るい砂浜ばかりになります。海ガメは仕方なく、明かりがある砂浜でも産卵せざるをえなくなり、このような砂浜だと子ガメは海へ行けません。また、高波から人を守るためにテトラポットや護岸が設置されます。護岸が設置されることによっても砂が無くなり、ウミガメは砂浜の上まで登れずに産卵できなくなるのです。
海ガメも自然界の影響を受けることもあり、さらに、人の安全を守るために行っていることが海ガメの環境破壊につながることもあるのです。こういったことを私たちはよく理解しておく必要があります。保護者の方から「海がめについて、園で色々と教えていただいたようで、子どもがよく知っていて驚きました。」等の声が聞かれました。私たちは神様から豊かな環境を与えられています。その環境を守り未来につなげていくことも私たちにとって重要な役割です。子どもたちにも伝え、地球環境について、考え合う時間をこれからも大切にしていきたいと考えています。
園長 永島弘美