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ホーム  > 園長コラム  > 大きな新玉ねぎの収穫

大きな新玉ねぎの収穫

梅雨の時期に入ります。雨のしずくや音に気持ちを傾けたり、合羽を着て外に出たりして、子どもたちの色々な発見や感動を保育者も共に楽しみたいと思っています。
先日、玉ねぎの収穫をした年長5歳児の子どもたち。昨年度の植えつけを経て、大きな新玉ねぎを収穫することができました。収穫したものは、食育の一環として、一株ずつ持ち帰りました。私が出先から帰って来ると何人かの子どもたちが「見て見て!玉ねぎ採れたよ!」と見せに来てくれました。私が「大きいねぇ!」と返すと、「Kくんのは、もっと大きいよ」と他の子たちからも聞かれました。翌日、Kくんに「お友だちから聞いたよ。大きい玉ねぎが採れたんだってね。」と聞くと、「そうだよ。HくんとYくんがふたりでよいしょって抜こうとしたけど抜けなくて、僕が力だしてこうやって抜いたら抜けたんだよ」と得意そうに身振り手振りで話してくれました。友だちが口々に「Kくんのは、もっと大きい」話していた理由がわかりました。きっと大きな新玉ねぎはしっかりと根をはっていたのでしょうね。友だちとのドラマがあったことも知りました。
玉ねぎを持ち帰ったその日に、お料理したKくん。Kくんが食べたかった玉ねぎ炒めを作ったようです。玉ねぎを切って炒めるまで、すべてをひとりで行ったKくん。味付けは素材の味を活かし塩と胡椒のみでしたが、味が薄いとマヨネーズも少し加えたようです。夕食のメニューの一品に加わりました。Kくんは少し炒めすぎたと言っていたようですが、美味しくいただきましたと連絡ノートに記載がありました。きっと、心に残る味だったと思います。
その後、お母さまが、葉の部分と根の部分(皮も)を捨てようとしたら、「保育園からもらった物だぞ!捨てるなんてもったいない!」と捨てさせてもらえなかったようです。そこで、お母さまが葉の部分は花瓶にさして飾ったそうです。子どものことばをちゃんと受け止めたのですね。Kくんにとって、大切に育てた玉ねぎ、園からもらってきた大切な玉ねぎは、すべて捨てられなかったようです。
 保育教育活動の中で、子どもたちは様々な経験をしていきます。でも、その活動を通して、子どもたちが皆同じ感じ方や考えを持つわけではありません。保育者は年齢に応じたねらいや目標を持って保育していますが、その中で、子どもたちが自分の個性や感性に基づいて、自分の中にある知識やスキルを余すことなく使って、自分自身で、その経験をより豊かなものにしていこうとするのです。子どもたちは一人ひとり皆、違うのです。そして、この玉ねぎの収穫の中にもいろいろなドラマがあり、他者と関わる力も培われます。Kくんは玉ねぎの植えつけから収穫、そして、お母さまの配慮のもとに、お料理して皆でいただくといった「命の営み」のすべてを、主体的に自分の意志をもって経験しています。また、周りの人に話したり、話を聞いてもらうことで、自分の体験を意識化し、それが自身の生きる力となっていくのです。野菜を育てたり花を育てたり幼虫を見つけたりすること等の自然との対話は、生きる力の源です。
 時代が進み、人を必要としない仕事の分野が増えても、予測できない未来がきても、人が人を育てるという行為は、変わらず営まれていくのです。予測できない未来がきても、子どもが一人ひとり自分の意志を持ち、環境と主体的に関わり、自分たちの手で自分たちの社会を作り上げようとする力を育んでいきたいと思います。

園長  永島 弘美