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ホーム  > 園長コラム  > 「子ども目線の評価」 ~「氷がとけると○○になる」の答えは?~

「子ども目線の評価」
~「氷がとけると○○になる」の答えは?~

花の日には、お花の持ち寄り並びに花束作りのご協力をありがとうございました。心より感謝を申し上げます。
先日、西小学校の支援学級や一年生の教室を見学させていただきました。教頭先生も一緒に付き添ってくださり、お話をお聞きしました。保育園生活から学校生活に移行する時、大きな環境の変化に戸惑うお子さんもいます。その戸惑いをできるだけ少なくするためには、家庭でそして保育園でできることを具体的に行う必要があります。こうのとり保育園では、小学校との接続を視野に入れ、毎年、年長組の子どもたちは西小学校に行き、学校体験をさせていただいています。年によって違いはありますが、一年生が国語の教科書の詩の朗読をしてくれたり、できるようになった長縄跳びを見せてくれたり、手作りの竹とんぼで一緒に遊んだりして過ごします。この「西小探検」は年長児の貴重な体験のひとつになっています。
小学校に進学する時、乳幼児期の学びと小学校教育との接続も大きなテーマだと考えています。
私が読んでいるある本の中で『「あらかじめ型評価」から「子ども目線の評価」へ飛び立つ時』というタイトルが目にとまりました。その中で ~「あらかじめ型評価」の目的は、あらかじめ決定された事項(知識・行動・得点など)を知っているか、あるいは行うことができるかを見出すことにある。「子ども目線の評価」の目的は、学び手が知っていること、理解していること、できることを見出すことにある~ とあります。  これだけでは理解しにくいと思います。例文の抜粋を以下に記します。
小学校理科のテストに、『氷がとけると○○になる』という問題が出ました。固体・液体・気体という物質変化についての
質問で、正解はいうまでもなく 水 です。ところがある女の子が 春 と答えました。「あらかじめ型評価」においては、
水という答えを知っているかどうかをチェックすることが目的ですから、当然、不正解となります。-中略-
それに対して「子ども目線の評価」においては、この女児が何を知っているのか、何を理解しているのかを見出すことが
目的となります。そうするとこの子は、池や川や用水路の氷が解けると春という季節の訪れが間近だということを知って
いて、温度変化と物質の変化との関連だけでなく、気象・季節と気温と物質という三者の関係に気づいているのかもしれ
ないということがわかります。さらに、そうした事象間の関連をどのようにして知ったのか(家族からかメディアからか)と考え
ると、彼女は他者の話を熱心に聞く態度や好奇心などの「学びの構え」が育っているのかもしれないと想像をめぐらすこ
とになり、教師はその子への質問、さらにはクラス集団での豊かな対話をしないではいられなくなるでしょう。
そうして評価は教師と学び手との共同のスタイルでなされるものとなります。
子どもたちはあそびの中で実体験を伴いながら、理論や法則あるいは生き物や植物の生態などを習得していきます。果たして、この女の子は、どんな体験をして、だれのどんなことばを聞いて学んできたのでしょうか。興味深いですね。子どもたちは家庭や保育園そして地域の中で、様々なことを学び取り、学びの構え(好奇心・探究心・モチベーションそして、他者と積極的にコミュニケーションしたり助け合ったりする態度)ができてきます。子どもの関心ごとに大人が興味深く関わり、子どもとの対話をする中で子どもたちは吸収していきます。子どもたちから私たちも教えられます。保育園では「子どもの目線の評価」の先にある豊かな可能性を見つめていくことが、子どもを育てる上で重要だと考えています。これからも園と家庭とで子どもの行動やことばに心を動かされたことや驚いたことなどを楽しく伝え合いましょう。

園長 永島弘美