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「子どものものさし」

 夏の暑さも和らぎ、秋の匂いや気持ち良い風が感じられるようになりました。秋の始まりと言うと、ちょっと寂しく感じるかもしれません。しかし、多くの植物にとっては実りの秋、昆虫たちにとっては次の世代へのバトンタッチや冬越しに向けて活発に活動する時期です。子どもたちにも、自然観察を通してワクワクする体験をしてほしいと思います。
 特別保育明けの礼拝で富士山の話をしたこともあり、「僕、富士山行ったよ!」「キャンプをしたよ!」「海に行ったよ!」と休みに登山、キャンプなどの野外活動や、星空観察、動植物観察といった自然環境の仕組みを知る自然体験をしたことを嬉しそうに報告してくれる子が沢山いました。自然体験は、遊びを通して、体力や知識がつくことはもちろん、“思考力”や“自然を大切にする心”なども育まれますので、家族と楽しい時間を過ごされた事でしょう。遠くへ足を運ばなくても、意外と身近な場所で気軽にできることも沢山ありますね。例えば、いつも行っている近場の公園や川での遊びの中にも学びの要素が沢山ありますし、家庭菜園を一緒に楽しむという方法もあります。園内でもこの夏、プランターで野菜を育てたり、収穫、クッキング体験をしました。先日はこひつじクラスのお友達が「カリッ!」と言いながらオレンジ色のカリカリに爆ぜたゴウヤを大切そうにお皿に入れ見せてくれました。(今年度はこの1つだけが実ったそうです。)カリカリになるまで、様々な関わりをしてきたのだろうと嬉しく思いました。子ども達は年齢発達に合わせ、水やりなどの世話を通して、土がついていたり、形がそれぞれ違ったりの発見、野菜を育てる過程や楽しさ、時には難しさを知ることができたことでしょう。育てた野菜に愛着を持ったり、身近な食べ物に親しみを持ったりすることで、2,3歳児では苦手だった食べ物を食べられるようになった子のエピソードも聞きました。“食べ物の大切さ”を知るきっかけになり、食育にも繋がっています。
 この夏、我が子のお手伝いは水やりでしたが…「水やりするよ」と私が声を掛け、重い腰を上げてやっと、というような日々が続きました。昨年スイカを育てた時は、自ら何度も観察し、水やりも喜んで行っていたのに…8月中旬、あさがおの種取を始めた頃から種の成長に興味が出て、自ら関わる姿が増えていきました。昨年と今年の違いは何でしょう。実は夏のお手伝いを何にするのか考えた時になかなか決まらず、無理やり話を進めてほぼ私が誘導してお手伝いを決めたんです。昨年度のスイカ栽培はスイカを食べた時に種を飲み込んでしまい、私が「お腹でスイカが育っちゃうんじゃない!?」と言ったことがきっかけで、食べたスイカの種を植えて、本当にスイカが出来るのか?を試すために始めたのでした。
 「教育で一番大切なことは、子どもに、『よし、やってやろう』という気を起させることです。やる気になった子どもが、自分の力で何かを捉えることができると、喜びます。自分にこんな力があったのかと思うからでしょう。手ごたえの楽しさといっていいかもしれません。(中略)強制による教育の欠点は、伸びない事です。楽しさがありませんから、自分でもっとやろうという気がでません。(中略)自分でやってみようという気をおこさせ、その意欲のもたらす成果に満足感を経験させることが教育の眼目です。」(~子どものものさし~より) 頭では解っているつもりでしたが、自身の子ども観について見直す機会をいただいた夏でした。
 「大人のものさしによってしか動かない子どもは、悪いことがあったら、みんな人のせいにする。なんでも人のせいにする人間は立派とはいえない。立派な人間に子どもがなってくれることを望むなら、子どもに自分のものさしを使う機会を与えなければならない。大人は子どもに対して、もっと謙虚でなければならぬ。子どもの心にしかない物を、もっと大事にしなければならぬ。」松田道雄・著
園長  梶山 美里