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実体験を通して学ぶ

園長 岡田 尚久
さわやかな風が吹き、新緑が気持ちの良い季節となりました。木々からは鮮やかな黄緑色の若葉が陽の光をたっぷりと浴びて葉を広げています。
新入園児も進級在園児もそれぞれが新しい環境の中での生活が始まり、1ヶ月が経ちました。4月当初は環境の変化からか、登園時に泣けてしまう子・口数が少ない子・体調不良を訴える子などいろいろな姿がありました。保護者の皆さんもそんなお子さんを見ながら後ろ髪を引かれる思いでお仕事に行かれた方もいらっしゃると思います。しかし、確実にどの子もその子なりのペースで今の生活を楽しみ始めています。
子どもの中でもすぐに新しい環境に慣れて友だちをつくり遊び始める子もいれば、なかなか保育者の傍を離れられない子もいます。いろいろな姿がある中で、私たちは一人ひとりの思いに寄り添い、その子に合わせた言葉がけや関わりを意識して教育保育をしています。今月も安心して園生活をおくることができるように努めてまいります。
 さて、こうのとり東の園庭にはさくらんぼの実がなる木があります。毎年、春になると花が咲き実をつけています。今年は昨年度以上にたくさんの実がつき、少しずつ色が変わり始めました。緑色の実が赤くなり始めると毎年さくらんぼの成長を見てきた幼児クラスの子どもたちは「いつ食べられるかな?」、「もう甘くなったかな?」と言いながら、食べられる日を今か今かと待っています。しかし、さくらんぼを食べるのを楽しみにしているのは人間だけではありません。実はたくさんの鳥たちがさくらんぼを狙っているのです。鳥たちも人間と同じように甘くおいしくなる時を知っています。そろそろかなと思う頃にやってきて、食べてしまうのです。“おいしく実ったさくらんぼを先に食べるのは人間か鳥か”と職員の間で言うくらいです。
ある日、さくらんぼの様子を近くで見ようと園庭に行くと、木の下で渋い顔をした3歳児のA君がいました。「どうしたの?」と聞くと、「このさくらんぼはまずいんだよ。おいしくない!」と返事が返ってきました。話を聞いてみるとどうやら緑色のかたい実を食べたようでした。その様子を近くで見ていた5歳児のB君が3歳児のA君に「さくらんぼはね、緑色の時はまだ食べられないんだよ。緑色の時はかたくておいしくない。赤くなってくると甘くなっておいしいんだよ。」と優しく教えていました。
A君はこの経験を通して色が変わる果物があること、緑色の時はかたくて甘くないこと、実が赤くなると柔らかくなりおいしくなること等を学んだのです。今回、実際に自分で体験して、そして年上のお兄さんに教えてもらい一つ成長しました。
子どもたちは生活体験や自然体験等様々な体験を通して心や体を育みます。子どもが体験できる環境を整えることも必要ですが、私たち大人は意識をしていないと子ども自身が体験するチャンスを奪ってしまうことがあります。子ども自身が考えて行動する前に、無意識に手を差し伸べてしまったり、助言してしまったり、助け舟を出してしまうこともあります。目の前の子どもが何かを考えていたり、行動している時にそっと見守ることも大切です。この時期に、より多くの経験をすることが生きる力へとつながっていくのです。