グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム  > 園長コラム  > ~子どもの権利~

~子どもの権利~

園長 大塚麻紀子
園周辺で田んぼの準備が始まると、鳥や蜂が巣を作る場所を偵察するように園庭へやってきます。木々があり、死角になって巣を作りやすそうな場所を探していて、見ていると生き物の習性や生きる力に感心しますが、園の中ではどこでもご自由にどうぞとはいかないため、安全確認をしながら対策をしています。先日園庭にいたハチの動向を見ていたところに4歳児が散歩から帰ってきたので、注意を知らせるために「お願いがあるんだけど・・・、ハチさんが園庭にお散歩に来ててね、みんなの大きな声にびっくりすると刺しちゃうことがあるから、話し声や足音を静かにして歩いてほしいんだ。」と伝えました。『お願い』と真剣に伝えると、子どもたちも真剣に聞いてくれて「ニンジャになってあるこう」、「ハチミツをあげればいいんじゃない」と提案がいろいろ出てきました。さっそく小さな声で話す子や、大きな声になる友達には「しっ!」と静かにするように合図を送るなど、お願いに応えるように協力姿勢が子どもたちに広がりました。その中で「どこにハチがいたの?」と尋ねてきた子がいたので、ブランコの周りを飛んでいたから気を付けてねと伝え、保育室に向かうのを見送りました。その後給食準備をしているすみれの部屋へ行くと、先ほどの子が「(ハチは)もういなかったよ」と伝えにきました。自分の目でブランコ付近を確認しに行ったのでしょう。言われたことをそのまま受け止めて納得するだけでなく、自分で確かめたいというその子の気持ちは、子どもが誰でも抱く「知りたい」という欲求の表れで、自ら学びに向かう意欲の姿勢です。こうした姿は、日々の何気ないやり取りの中で溢れています。子どもはやがて大人になることを本能で知っている、そのために必要なことを学ぼうとよく見ていると言われています。確かに大人の真似事が好きですよね。教えたことよりも、自分で「やってみたい」と思ったことの方が自然と習得していたり根気よく取り組んでいたりもします。子どもを見ていると「いつのまに・・」とか「そんなこともできるの?知っているの?」と驚くことはありませんか。意欲と成長を質量で測るとしたら、私たち大人は学びに向かうパワー全開の子どもたちには敵わないとつくづく感じます。
2023年4月より施行された『こども基本法』では、「こどもとは、心身の発達の過程にある者をいう」と定義づけられており、「全てのこどもが個人として尊重され基本的人権が保障される」 ~一部抜粋~ と基本理念で掲げられています。これは子どもの健やかな成長に関する支援を約束しているとともに、個人として尊重=人権保障という子どもの権利条約に基づいて制定され、国として子どもを社会の真ん中に据えて、子どもに関する取り組みを強力に進めていくことを示されています。子どもたちの成長を見守る立場では、どうしても大人目線での指示や援助をしてしまうことがありますが、子どもの立場から見ると違う思いがある場合もあります。子どもは何も知らない未熟な存在とした大人目線の「子ども扱い」ではなく、子どもの生きる力学ぶ力に着目し、思いに耳を傾け、立場に立って理解すること、子ども理解や信頼関係の構築について、私たち大人が求められていること、園としては子ども主体の保育について、今一度考えていきたいと思います。