グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム  > 園長コラム  > 子ども理解・共感のまなざし

子ども理解・共感のまなざし

園長 大塚 麻紀子
汗ばむ日差しとこの時期独特の湿った空気、雨が降る前には田んぼからカエルの大合唱が聞こえ、もうすぐ梅雨が始まるなと思う今日この頃です。
先日、主任児童委員の方々が来園し、巡回訪問で久しぶりに園の様子を見に来てくれました。園内を案内し、保育室や子どもたちの様子を一緒に見てまわる中、2歳児れんげぐみの保育室に入っていくと、ちょうど一人一つずつ制作した“てるてる坊主”が完成したところでした。子どもたちは突然のお客さんの登場に緊張する様子をまったく見せず、むしろタイミングよく完成した自分の“てるてる坊主”を見せようと、持っている手を高く掲げて、「ほらぁ」「みてみて」と言いながら5人のお客様の周りに駆け寄り、見せては走って次の方へ・・・、ぐるぐる回るように数人が同じ行動をして、にぎやかなお披露目が始まりました。自分だけの“てるてる坊主”があること、自分で作って出来たこと、それを見てもらい「上手だね」「かわいいね」と認めてもらえること、子どもたちはいろんな嬉しい気持ちを感じて、その同じやり取りを繰り返しているようでした。皆さんも子どもの気持ちを汲むように行動に対して丁寧に対応してくださっていたため、喜びと達成感に充ちていく様子が子どもたちの表情から読み取れました。文字通り全身で喜びを表現する2歳児です。
また別の日の夕方、1歳児の子どもが、お母さんと一緒に階段を2階から降りてくるところに出会いました。後ろ向きの四つ這いで下りてくる様子を階段下で見守りながら待っていると、あとどのくらいか確認をしているのか、それとも下にいる人の気配を気にしているのか、時々止まっては振り返って確認する姿が繰り返し見られました。下まで降りてきて到着すると、すっと立ち上がり手のひらを合わせた姿でお母さんの顔を見上げた後、後ろを振り返って私の顔も見上げました。手は拍手をするような動作の立ち姿で、向けられた視線からは、まるで「できた!」と言っているように感じられました。
どちらのエピソードも、こども園で過ごす中でよく出会う姿です。しかし大人の見る角度を変えてしまうと、微笑ましい姿と感じた同じ場面でも、困った行動と捉えてしまうこともあります。例えば初めのエピソードでは、喜びから興奮気味の子どもたち、一人が走り出すとそれにつられて同じように室内を走る子が増えてきた、困った騒がしくなってきた、「転んでケガをするのでは・・・」と考えて、かける言葉は「走らないよ」「危ないから~」と制止言葉が次々に出てくる・・・。二つ目のエピソードでも、待っている人の迷惑になってしまっている・・・と思うと、ついつい子どもを抱きかかえて強制終了・・・。私が過去を振り返るたびに反省するあるあるの言動でもありますが、同じように心当たりがある方もいるかと思います。この数年、乳幼児保育では一人ひとりの思いを尊重する保育の大切さについて、改めて考えることが増えました。子どもの思いを尊重するとは、子どもの思い通りになんでも好き勝手にさせておくこととは違います。そして経験からいろいろ知っている大人が先に教えることでもありません。私たち大人がいろんな経験をして学び得た知恵があるように、子どもたちにとって今がその学びを得る大切な育ちの時であるということを意識してみると、子どもの思いに寄り添い思いを尊重するかかわりに繋がるのではと思います。それは育ちの中で経験すべきことの保障にもなり、保育者として子どもとのかかわり方を見直す機会にもなります。共感のまなざしで子どもを理解することを大切に、子どもも大人も共に育ちあえる保育をしていきたいと思います。