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一年を振り返るとき

 園長  大塚 麻紀子
暖かい日差しが感じられるようになり、散歩に出かけていく機会が増えてきました。2月28日、「いってきます」と3歳児が散歩に出かけていく姿を見送っていると、足取りが軽くなったなぁと感じ、「ただいま」「たのしかった」と力強い声とともに帰ってくる姿を見て、ヘトヘトに疲れ切って園に戻ってきた頃を、懐かしく思い出しました。
私は園内をまわっていると、一人黙々と何かに打ち込んでいたり、何かを言いたげにしていたりする子どもに目が向きがちです。『何を考えているのだろう?』と、子どもの気持ちを知りたい、と私のアンテナが受信するからです。先日も一人の女の子(Aちゃん)がジッとお部屋の前にたたずんでいました。多くの子がまだ園庭で遊んでいたので、「どうかしたの?」と声を掛けると、「あのね、えっとね、えーっとね・・・・」と、まだ言葉を探っている状態。次の言葉が出てくるのを、私は相槌を打ちながら待っていると、「キーホルダーをみてたの、Bくんが。」と。ですがAちゃんはまだ納得できない様子なので、私は「そっかぁ」と返しました。Aちゃんはその後も同じ言葉を繰り返しながらも、少しずつ違う言葉も追加してきました。そのたびに「あのね、えっとね・・・」と言葉を絞り出します。彼女の話を整理すると、Aちゃんはその日、自分のカバンについているキーホルダーを先に見せたい友達(Cちゃん)がいたのですが、それより先に違う子(Bくん)が勝手に見ていて、自分の思った予定と違ってしまったことに不満を感じていたようです。大人からしたらついついどちらが先でも・・・と言ってしまいたくなりそうですが、それはいろいろな経験を通して臨機応変に対応できる大人の思考です。Aちゃんには楽しみにしていた予定だったのでしょう、まさか予定通りにいかないなんて考えもせず。しばらくすると、同じ言葉で自分の気持ちを伝えていたAちゃんから、「でもさ、あのさ、Bくんもさ、みたかったんだよね」と、初めて相手の気持ちを汲んだ言葉が出てきました。ここまでくると、私もAちゃんの複雑な気持ちがわかり、「Aちゃんは、Cちゃんに見せる予定が、先にBくんが見ているのがちょっとイヤだったんだね。でもBくんが見たい気持ちもわかるから許してあげたいのかな?」と聞くと、それまでの曇り顔がパァと笑顔に変わり、「うん」と大きく頷きました。
私がAちゃんを見つけた時、周りにはBくんもCちゃんもいたわけではなく、自分の思いにジッと向き合って考え、気持ちを整理していたのです。そこから話を聞いていたのはほんの10分程ですが、許すのにこんなにエネルギーを使い、でも子どもの素直な考えと、思いを巡らす思考の深さに、改めて子どもの力ってすごいと感じました。
今年度も残すところあと一か月。この時期はいつも以上に保育者同士が子どものエピソードを伝えあい、「大きくなったね」と、成長を喜び合う話が尽きないときでもあります。保護者の皆さんとも、お子さんの成長を振り返り喜びに満たされる機会を共にもてるよう大切に過ごしていきたいと思います。
最後に保護者の皆様には、今年度の園運営にご理解ご協力を頂きましたこと、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。