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遊びが育てるもの

園長 鈴木勝子
 今年は5月末から「真夏日」が続いたり、北海道ですら30度近い気温が観測されたり、一部の地域への集中豪雨など身近なところで地球規模の深刻な温暖化を実感せざるを得ません。各地の集中豪雨で被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。
子ども達は夏ならでは遊びを満喫しながら過ごしております。感染症や熱中症には充分気を付けて元気に過ごして欲しいと願います。
 さて、ここ数年子どもの運動能力の低下についての話題をよく耳にするようになりました。当園でも転んだ時に手が出ず、顔を擦りむいたり、飛んできたボールを避け損ねてケガをしたり、鉄棒が見えていてもぶつかって額にこぶを作ったり、とケガの原因を職員間で検証すると「なぜ避けられなかったのか」と思うことがしばしばあります。子どもは小さなケガをしながら覚えていく、というお話も以前聞いたことがありますが、事故やケガから自分で自分の身を守る力、危険回避能力も運動能力と大きく関係するようにも思います。また、複数の友達と関わって遊ぶことは運動能力だけでなく、どうしたらもっと楽しくあそべるか考え工夫したり、相手の意見を聞き自分の考えを伝えたり、譲り合う、ルールを守る等、自発性、協調性や交渉力、妥協する力、達成感などを獲得することができます。これらは子ども時代にこそ、育つ力だと思います。
 そのようなことから、7月に聖隷保育園こども園の磐田地区3園の職員で静岡理工科大学の富田寿人教授を講師にお招きして、運動遊びの合同研修を行いました。先生は日本体育協会(日本スポーツ少年団)が平成 26 年度に作成した、幼児及びその保護者等を対象にした活動プログラム「幼児期からのアクティブ・チャイルド・プログラム」の普及・啓発プロジェクトの代表を務められています。
 幼児から小中高生を対象とした体力測定や実態調査の結果を踏まえ、子どもが様々な運動遊びを通して、楽しく、積極的に体を動かすことの大切さを話されました。中でも発育発達の個人差が大きい子ども時代はタイムや距離に基づく測定結果(評価)だけでなく動きの質を観察し、それに基づいた指導が必要。とのことです。つまり、同じ年齢の月齢差だけでも運動能力にはかなり差があります。速さや遠くに飛ぶ事を目標とするのではなく、体全体の使い方や身のこなし方等の基本を指導する事の方が重要であることや、幼稚園と保育園の比較調査から、幼稚園に通う子どもよりも保育園に通う子どもの方が運動量が多いそうです。これは保育時間とも関係が深いようです。また、10代女子の運動時間は、30年前と比べるとかなり減少しており、将来母親になった時に我が子を公園で遊ばせるだけの体力が維持できるか危惧される。というお話しは衝撃的でした。子ども時代の運動習慣がそのまま大人になるという事です。小学校就学前に体を動かすことが好きな子どもに育てることの大切さを感じました。
 一方で、保育雑誌の中にこんな記事を目にしました。『そもそも遊びの時間は自発的、能動的なことが原則で、誰かに押し付けられたり強制されたりしないものです。やりたくなったらはじめ、やめたくなったらやめられるのが遊びではないでしょうか。ところが、いま子どもたちの暮らしにはこの「遊びの時間」があまりに少ないように思います。おとなの管理下ではルールを変えたり、お互い伝承したりという豊かな遊び体験はしにくいように思います。面白さのまま発展させてゆくうちに何という遊びだかわからなくなってしまう、「名前のない遊び」をしているときが一番楽しいのです。大人は名前のある遊びをさせたがってしまいがちです。~中略~今は大人が子どもに関わりすぎだと思います。遊びの時間は子どもの宝物であり、子どもが幸せになるために存在する時間です。遊びは役に立たない無駄な時間と考え、習い事や塾などすぐに身につき評価できるものに時間を使いがちですがそれは「大人の価値観を教える時間」です。大人の指導、評価などとは無縁の子どもの遊び世界が充実することが子どもにもたらすものは大きいです。』       (キリスト教保育8月号より抜粋)
 子どもの遊び時間をしっかりと確保する。子どもがやりたくなる遊びを仕掛ける(提案してみる)そして、一緒に楽しむことが私たち大人の役割だと思います。「先生たちはガキ大将になってください!」と富田先生が研修の最後におっしゃった言葉が印象に残っています。