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社会の変化から

園長 鈴木勝子
 田んぼや畑のあぜ道、線路の土手につくしを見つけました。駐車場の早咲きの桜のつぼみもほんのり色づき、どことなく春が感じられるようになりました。先日の奉仕作業、懇談会にはたくさんの方がご参加くださいました。懇談会では各クラスで保護者の皆さまと共にこの一年を振り返り、子ども達の成長の足跡を確認し喜び合う良い時間を持つことができました。また、保護者会役員の選出にもご協力くださり、ありがとうございました。
 さて、先日参加した研修会で3歳クラスに入園してきた子が給食のみそ汁を飲み終えると汁椀をゴミ箱に捨てる。注意しても直らず毎日捨ててしまう。家での様子を聞くと「うちではインスタントのカップみそ汁ですから」とお母さんからのお返事だったという、笑えないお話がありました。自園でも毎年、正月明けに郵便屋さんごっこが始まります。「お手紙もらうと嬉しいよね」「お返事くるかなって楽しみだよね」と子ども達に話しても子ども達は???という表情をします。文字が書けるようになると自然発生的に始まるお手紙ごっこも最近ではあまり見かけないように思います。考えてみれば今はメールの時代。必要な連絡はメールもしくは携帯です。郵便で届くのは商店からのダイレクトメールくらいではないでしょうか。レストランごっこから始まるお買いものごっこもしかり。今はネット時代。ほとんどの物がネットを使って購入できます。財布にお金を入れてもらって落とさないようにドキドキしながらスーパーに行き、買い物をする経験をどのくらいの子どもがしているだろうか。と、ふと考えました。
 人と連絡を取りたい、必要な物を購入したい時に居ながらにして瞬時に解決できてしまう。ひと昔前には考えられない、こんなに便利なものはありません。しかし、子どもが目にするのは、パソコンや携帯電話をじっと見つめ操作する大人の姿です。
 郵便屋さんごっこを通して文字に関心を持ち、友達との関わりを深める。お買いものごっこで数字に興味を持ち、お金のやり取り(計算)をする。友達との関わりの中では、自分の思い通りにならずに涙をこぼしたり、トラブルになることもあるかもしれません。いつも楽しいハッピーな生活は送れません。葛藤を抱えた時に自分自身でどう乗り越えていくか、どう折り合いをつけるのか。人との関わりの中で子ども達は多くのことを学びます。決してパソコンや携帯電話から学べることではありません。
 目まぐるしい速度で変化している今の時代、新しい環境にスムーズに適応する力も必要となっています。そのためには、小さな頃から自分の事を分かってくれる、見ていてくれる大人がいつも側にいる。安心できる環境で友達や大人と応答的に関わりながらじっくりと遊び込む。そうすることで非認知的能力が育ち、生きる力にも繋がるように思います。
 子どもは大人の暮らしに憧れ、真似をしながら自らも経験してみて、様々な事を身につけていきます。前述の汁椀の話のように、子どもは家庭から一歩外に出ると今まで経験したことの無い生活や文化に触れることがたくさんあります。年長組の子ども達は小学校という、新しい環境が目の前に待っています。在園の子ども達も含め、一人ひとりの子どもが新たな環境で新たな出会い、新たな人との関わりの中で心も体もたくましく育ってほしいと願うばかりです。