グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム  > 園長コラム  > 愛の記憶

愛の記憶

園長 平野春江
今年は例年にも増して猛暑が続いております。こども園の熱中症予防も例年通りではなく、新たに対策を講じてお子様の心身の健康を守るように務めてまいりました。引き続き、室温調節・水分補給・身体の休息等を行ってまいります。
 さて、こども園では、園の保育・教育理念をご理解頂く為、そしてお子様と共有体験をして頂く為に年間を通じて保育参加を奨励しております。お子様の誕生月に希望する方も多く、4,5歳児クラスでは、誕生会で保護者の方にも、お子様が誕生した時の事や名前の由来等を伺っております。7月某日、5歳児のAさんのお誕生日会で保護者の方がお子様について語って下さいました。お子様の誕生の様子やその時のご家族の気持ち等をお話しして下さった後、その場に居たクラスの子ども達に向けて心温まるメッセージを下さいましたので一部ご紹介致します。
「ここにいるみんなも大人になったらいつかお父さんやお母さんになる人もいると思います。子どもがお腹に宿って、そして誕生した時は、本当に嬉しいです。生まれてきたら、子どもをいっぱい愛してあげて下さい。そしたら、こんなに良い子に育ちます(我が子の頭を撫ぜながら…)」そのメッセージを受けて横で座っていたAさんは、少し照れながらも嬉しそうでした。そして、その場に居て聴いていたクラスの子ども達もまた、自分へと語られたように心地よい表情をしておりました。
 乳幼児期にどのような育ちをするかが、その後の長い人生を幸せに生きられるかどうかに影響することが、様々な研究などによって明らかになってきています。特に今、乳幼児教育の世界で関心が高いのが「非認知」と呼ばれる領域です。中でも「自己と社会性」と呼ばれるものです。「自己」とは、具体的に、人から自分が受け入れてもらえる、愛してもらえる感覚、自分に自信が持てるということ、さらに自分の衝動を抑えて行動をコントロールできること、自分で決断して一人で実行できることと言われる性質です。そして「社会性」とは、他者との関わりを持つ上で欠かせないものです。この「自己と社会性」が育まれるには、根っことして、自分は無条件に人から受け入れられてもらえる存在であることあるいは自分は「助けて」と言えば助けてもらえる存在だという感覚をもつことが求められます。私たち大人が毎日、当たり前のように生活しているこの世界ですが、まだ小さくて弱い存在である子どもにとっては、不安や恐れに直面し続ける世界です。その度に安心を与えてくれる存在にくっつき、心と身体を整えて世界に向かっていくのです。一日に何回と繰り返される日常を、自然に安定して経験できることで、人を信頼し、自分が愛してもらえているという感覚を得るのです。乳幼児期に身近な大人からの「愛される」体験は、記憶として残らなくても、その当時の体験の記憶というのは「期待」に残ると言われています。人が何かしてくれるという期待、自分は人から何かしてもらえるという期待です。私たち大人が子どもに対して行っている何気ない当たり前の関わり(転んで泣いたら抱きしめる。不安で眠れない時に添い寝してあげる。子どもの想いを聴いてあげる。)が子ども達の将来の他者への「期待」となって蓄積していきます。こう考えますと、人生を左右する自己と社会性は、周囲の大人たちによって形成される要素もあります。
 Aさんの保護者の方がおっしゃって下さったように、今、身近なご家族からいっぱいの愛を注いでもらっている子ども達は、きっと大人になってお父さんお母さんになった時に、同じように我が子に愛情をいっぱい注いでくれることでしょう。

~マザーテレサの言葉より~  子どもは、神様からの、この世への、この国への、家族へのいちばんの美しい贈り物です