グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム  > 園長コラム  > 親の話し言葉の環境が脳を育む

親の話し言葉の環境が脳を育む

園長 平野春江
 2019年5月1日に新元号『令和』の時代が幕を開けました。日本最古の歌集『万葉集』の梅花の歌より引用され、由来は、『春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人ひとりが明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる、そうした日本でありたいとの願いが込められている』とのお言葉でした。一人ひとりが希望とともに、それぞれの花を咲かすためにも、この乳幼児期をどう生きるかがとても大切であると思います。お子様の成長にとって大切な時期に関わらせて頂くことに対して、あらためて身の引き締まる想いが致しました。そのような想いを抱いているさなかに、大変興味深い本の見出しに目が留まりました。
3000万語の格差 赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者のはなしかけ
人生の基礎は3歳までの言葉環境でつくられる!  (ダナ・サスキンド著 掛札逸美 訳 明石書店)
 早速、購入して一気に読み進めました。保護者の皆様にも是非、知っておいて頂きたい内容、知らずにこの大切な時期を過ごしてしまうことは、もったいない!と思いましたので一部を抜粋しながらご紹介致します。
▼思考や学びの基礎となる脳の神経細胞のつながりの大部分は、生後3年間に起こります。科学的な研究の結果、脳の最適な発達は言葉に依っていることも分かっています。私たちが聞く言葉の数、その言葉がどう言われるかが脳の発達の決定的な要因です。出生から3歳までの間、1秒ごとに700から1000個、新たな脳神経細胞のつながりができます。この3年間に爆発的に起きる神経のつながりは、実のところ多すぎるのです。そのため、シブナスのブルーニング(神経細胞のつながりの刈り込み)と呼ばれる過程を通じて、賢い若い脳はよぶんな神経細胞のつながりを切り始めます。弱いつながりや、あまり使われていないつながりを切り捨てつつ、よく使われるつながりは微調整して、機能に特化した脳の領域をつくっていくのです。▼
そして、脳が臓器としては、ほぼ育ちを終える4歳ごろまでに、何をすればよいのかが具体的に示されておりました。例えば今、日本でも、「子どもの可能性と能力を引き出す」と称された0~3歳児向けの様々な通信教育(ビデオ・ゲーム等)が販売されていますが、著者(サスキンド博士)は、脳を育てるうえでは、テレビはむしろ逆効果であると述べています。脳は、言葉を受け身で学ぶわけではなく、社会的な応答と相互のやりとりがある環境でのみ学んでいくそうです。親の『話し言葉の環境』が最も効果があると説明されておりました。子どもが集中しているものごとに親も意識を向け、自分も関わりながら、豊かで思いやりのこもった言葉で話したり、反応したりと子どもと親の双方向の関わり(コミュニケーションの行ったり来たり)が、脳発達と同時に親と子どものアタッチメント(愛着)を築くうえでも重要となります。この『子どもの集中しているものごとに意識を向ける』というところが特に大切です。その為にも、子どもがブロックで遊んでいれば、横に座って一緒に楽しむ・食事は一緒に座って会話を楽しみながら食べる・絵本は膝の上に座らせて読む等です。先日、保護者会総会・講演会でも、こどもの友社 安田氏より『子育てに絵本を』という演題でお話を伺いました。この乳幼児期の子ども達は、心も身体もそして脳も豊かな栄養を求めております。どうぞ、日常の中に親子の絵本の時間をつくり、沢山の豊かな言葉をお子様に注いで下さい。そして、こども園でも一人ひとりのお子様が今、何に興味や関心を示しているのかを専門の目でしっかりと捉え、適切な応答と環境を整え、子ども自身が持っている力や能力を引き出していけるように丁寧に関わってまいりたいと思います。
*3000万語の格差…著者によると研究結果より、親の言葉がけや会話の数の大小により4歳時点の言葉の数の格差が3000万語にも及ぶ