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~子どもと保育教諭の間で~接面

園長 平野春江
 エピソード①「心地よい雰囲気の中で」
 2歳児の給食の場面です。0,1,2歳児は、ゆるやかな育児担当制保育を導入しております。2歳児は、生活面全般を園児4人に対して保育教諭1人がついて援助しています。子どもたちが給食の準備をして席につくと、保育教諭は子どもの目の前で一人ひとりのお皿に配膳をしていきます。その日のメニューの筑前煮を保育教諭が「これは、なにかな」と言いながらAさんのお皿に入れると「にんじん!」「ごぼう!」と答えます。「そうだね。Aちゃんは、人参が好きなんだよね。もう一つ入れる?」「うん!」すると、一緒のテーブルにいたBくんも「Bくんも、人参好き!」と自分の思いを表出します。「そう。Bくんも人参好きなんだね。もう一つ入れるね。」そして、全ての配膳が終わってお祈りをしようとした時、Aさんが「♪はなよ~はなよ~」と讃美歌を口ずさみました。それに答えるように保育教諭も優しい声で続きを一緒に歌います。「♪~めをさませ~とりがないて~よがあけた~♪」歌い終わったところで静かにお祈りが始まりました。
 エピソード②「経験の中で得た知識をもとに考える」
4歳児のプール開きの際の一場面です。保育教諭がこの日から始まるプール遊びを安全で楽しくできるように、絵カードを見せながら子ども達に問いかけます。「プールに入る前にはどうして体操をするの?」Cくん「元気になるから!」保育教諭「そうだね。体操をすると元気になるね。」「じゃあ。体操しないでプールに入るとどこがびっくりするのかな」Dくん「感情がびっくりする!」Eくん「のどがびっくりする!」「感情ってことばよく知ってるね。そうか。感情がびっくりするんだね。それからのどもびっくりするね。」保育教諭「じゃあ。トイレはいつ行くのかな。」Fくん「散歩に行く前!」保育教諭「そうだよね。散歩に行く前に、トイレに行くよね。」
上記に紹介しました教育・保育の中でのエピソード①②に共通するのは、「接面」で生じている保育教諭と子どもとのやりとりです。簡単に「接面」について『関係の中で人は生きる』鯨岡峻著書より抜粋してお伝えします。
 ▲接面で生じているのは、目に見える行動や言葉はもちろんですが、それだけではなく、目には見えない相手の心の動き、自分の心の動き、さらにはその場の雰囲気といった接面の当事者には感じ取ることができても、接面の外部にいる第3者には、感知できない豊穣(ほうじょう)な何かです。(略)人と人が関わる中で、一方が相手に(あるいは双方が相手に)気持ちを向けたとき、双方のあいだに生まれる独特の雰囲気をもった場である。大人と子どもの関係で言えば、子どもの幸せを願う大人が、子どもに根源的配慮性(子どもを優しく包もう、守ってあげようという愛護の気持ち、あるいは、子どもが自分らしくあることに自信がもてるように、その子の思いを尊重し、その思いを我が身に引き受け、その子の存在を大事に思う気持ち)を示すときに生まれる独特の場がそれと言ってよいでしょう▲
 エピソード①と②も、保育教諭は、根源的配慮性の思いを持って、子どもとの関りを楽しんでおります。接面で生じることは、時に一瞬のはかない思いですが、そこにこそ保育者としての専門性があると考えております。子どもたちは、様々な経験の中で得た知識や感情等を基に、自ら考え、気づき、発見しながら学びを深めていきます。接面で生じている一瞬、一瞬を保育教諭が受け止めながら共に喜び、関りを考え、援助出来るように心掛けています。たとえ、それが遠回りでも丁寧に子ども達と対話をしながらその育ちを見守っています。そうして得た学びは、子どもたちの中に一層一層積み重ねられていくと考えております。ご家庭においても、きっとお子様の沢山のエピソードがあることと思います。是非、聴かせて下さいね。