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自然と共に

新緑の季節がやってきました。日ごとに緑色が濃くなっていく姿に木々の生命力を感じます。
先日、4.5歳児クラスの保育室で飼育ケースを取り囲んで、中を覗き込みながら、友だち同士でにぎやかに話す姿がありました。近づいてみると、ケースの底面に草がいっぱい敷かれていて、テントウムシやバッタやダンゴムシがいたのです。園庭で見つけた様で、いた場所や捕まえた時の話を聞かせてくれました。バッタの触り方やえさの事等、それぞれの考えを出し合い話していました。
保育所保育指針・幼稚園教育要領の改定により示された「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」。その10の姿の中のひとつに「自然との関わり・生命尊重」があります。幼少期に自然体験の積み重ねを通して自然への親しみや愛情そして畏敬の念を持つようになるのです。また、身近な動植物の接し方を考え、命あるものとして関わり、大切にする気持ちを持って関わるようになるとしています。このことは国際的に示されている「持続可能な開発目標(SDGs)」にもつながっていきます。SDGs では「誰一人取り残さない持続可能な社会」の実現に向けて17の目標が定められています。「どんな活動を行ったか」が重要ではなく、持続可能としての意識をどのような活動を通して、育成しているかということをめざします。
SDGsの保育実践は子どもに一方的に教え込むのではなく、目新しいことをテーマにするのでもなく、子どもの生活を基盤としたところに包含されている「いのち」あるものや事象とのつながり・かかわりを明確にする、ということです。それにはまず、保育者自身がその意識を持つことが大切です。そしてSDGs の主体は未来を創り出す子どもたちです。私たちは、子どもたちが興味深く、あそびが展開していけるように取り組みを考えていきます。そして楽しいと感じながら記憶に残る体験ができるように環境を作り、できれば、保護者や地域の人たちも巻き込みながら、行っていきたいと考えています。
昨年、園でアゲハの幼虫を玄関や保育室で飼育しました。キアゲハやアオスジアゲハが園から巣立っていきました。巣立ちの時、そら組(かるみあ)のテラスで放った時、3歳児のSさんが大空に飛び立っていった蝶をしばらく見ていて、また飼育ケースの中を覗き込み、また空を見上げていた姿を思い出します。また、玄関のオタマジャクシを観察していて手足が生えてくる様子をよく見ていた子どもたち。ある時、死んで動かなくなってしまったオタマジャクシを見つけ、5歳児Hさんと一緒にお墓を作った時、「神様、天国でカエルになれますように」とお祈りしていたと聞きました。オタマジャクシに親しみを持ち、その生命に触れ、後ろ足が生えてきたオタマジャクシの気持ちを思い、そんなお祈りをしたのでしょうか、心に残る姿です。
昆虫や植物などの身近に生きているものへの気づき、そのまなざしがSDGsの実践につながります。園外に出かける機会が増えてくる季節です。子どもたちと同様に私たち大人も「不思議だな」「面白いな」「どうしてだろう」と心を動かす時間を大切にしてみてはどうでしょう。
聖隷こうのとり富丘 園長 永島 弘美