グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



診療科・部門


ホーム  > 診療科・部門  > 診療科  > 脳血管センター  > 脳血管内治療科

脳血管内治療科

概要

脳血管内治療科は脳血管内手術を行う診療科です。最近、新聞雑誌等で時々紹介されていますが、細い製のチューブ(カテーテル)を用いて血管の内から病気に到達し治療を行う方法です。 以前は、頭を切る手術(開頭手術)でしか出来なかった多くの病気に対する治療が、最近では開頭手術をせずにこの最先端の治療で行われるようになりました。
患者さんの肉体への負担が少なく、治療後退院までの期間が従来とくらべ著しく短縮されました。治療成績も従来の開頭手術と比べ勝るとも劣らず、最近の脳血管障害に対する治療の進歩は、この脳血管内手術の進歩といっても過言ではないと考えます。

脳血管内治療とは?

脳血管内治療とは脳の病気に対して、皮膚や頭蓋骨を切ることなく、血管の中から病気に到達し手術を行う治療方法です。元々は1953年頃から始まったカテーテルを用いた脳血管造影検査から発展した治療方法です。全身の血管は大動脈を介して繋がっているため、カテーテルの操作性を考慮し、足の付け根や肘の内側の血管などの身体の表面近くを通る太い動脈から頸動脈あるいは脳内血管に到達出来ます。皮膚の傷は3mmほどで済みます。手術の際には検査用のカテーテル(2mm)の中に、さらに直径0.6mmと細いカテーテル(マイクロカテーテル)を入れ病気の血管に進めて行きます。そして、そのマイクロカテーテルから様々な道具や薬品を使って治療を行います。1990年代以降道具の改良によって急速に広まり、日本では年間1万件以上の治療が行われています。手術時に脳に触れないことから「脳に優しい治療法」と言われています。また、身体への負担も少なく、入院期間も短くて済む治療です。

脳血管内手術の対象は?

治療適応となる病気は多彩です。代表的な病気としては、脳動脈瘤(脳の動脈のコブ)や脳動静脈奇形(血管の生まれつきの異常)や硬膜動静脈瘻(血流の異常)など脳出血を起こすもの、脳あるいは頚動脈の狭窄症(血管が動脈硬化で細い)などの脳梗塞を起こすもの、また脳梗塞を起こして血管が詰まってしまったもの(血管閉塞)などが主なものです。そのほかにも脳腫瘍の摘出術前に手術中の出血を減らすために腫瘍栄養血管を塞栓(詰める)したり、血管病や外傷による重症鼻出血の治療、頭部外傷による出血に対する治療など多種に亘ります。

脳血管内治療で使う道具はどのようなもの?

脳血管内治療で使われる道具には色々なものがあります。まずはカテーテルという80~150cmあまりの長く細いチューブです。カテーテルには造影検査を行ったり、治療に使う細いカテーテルを誘導するガイディングカテーテルと治療に使うマイクロカテ―テル、そして治療をサポートするカテーテルの三つがあります。ともに血液凝固を起こしにくくする薬剤が塗布されたチューブです。長さ太さや先端の形により色々な種類があります。サポートするカテーテルには風船の付いたバルーンカテーテルなどがあります。これらカテーテルを誘導していくのにガイドワイヤーという柔らかい針金状の線が必要になります。治療に必要なものとしては、血管を詰める塞栓術ではコイルというプラチナ製の柔らかい線を使います。コイルも大きさ形長さなどにより多くの種類があります。二次元から三次元の形状を記憶しているものから、血液に触れると周囲のゲルが膨張するものまで色々な種類があります。治療の際はこれらを状況に合わせて使い分けます。また、細くなった血管を広げるにはステントという金属メッシュの筒を使います。これも太さや長さで種類があります。また、血栓を回収するシステムなど多彩な道具があります。

脳血管内手術が行われる代表疾患と治療の実際

(1)脳動脈瘤

脳動脈瘤は破裂するとくも膜下出血の原因になります。再出血は致命的であり、病院到着時に手術可能な状態であった場合は緊急で再出血予防の手術が行われています。また、破裂する前に見つかり治療を行うこともあります。従来は頭を切ってクリップを脳動脈瘤の根元にかけるクリッピングといわれる手術が第一選択でしたが、2002年にLancetという外国の有名な医学雑誌に発表された論文では、クリッピング術と血管内治療を各1000例以上比較したところ、血管内治療の方が破裂脳動脈瘤患者の1年後の生活レベルを向上させると結論されています。これはヨーロッパの病院を中心とした研究であり、そのまま日本に当てはめるわけには行きませんが、血管内治療がクリッピング術と比べても急性期の成績では劣らない治療で有ることが示されました。実際には図8のようにマイクロカテ―テルを動脈瘤内に誘導し、コイルでその中を埋めて行き出血しないようにします。数年前から従来治療が困難であった間口の広い動脈瘤に対してもステントを組み合わせた治療が出来るようになってきています。

(2)脳動静脈奇形

胎生早期(約3週)に発生する先天性異常です。毛細血管を介さない動脈と静脈の塊りが見られます。脳出血を起こしたり、てんかん発作を起こしたりして発見されることが多いです。これらの内で出血して発症したものが主な治療適応となります。現在、この脳動静脈奇形の治療には、1)開頭摘出、2)脳血管内手術、3)定位放射線治療の3つがあり、それぞれの利点を生かした複合治療が行われています。血管内手術の役割は、この異常な血管の塊りを、カテーテルからコイルや液体塞栓物質を注入することより、内側から詰めて血液の流れる部分を小さくし、開頭摘出術や定位放射線治療につなげることです。例えば、血管内手術で大きさを小さく出来れば(3cm未満)、放射線治療で治癒が可能になります。また、摘出術時に出血量を減じることや、摘出術では難しい脳深部の部分の治療などが血管内手術の目的になります。

(3)硬膜動静脈瘻

脳を包んでいる膜(硬膜)の内で、毛細血管を介さず、動脈から静脈に直接血液が流れ込んでしまう病気です。目が赤くなったり、物が二重に見えたりといった眼の症状や、ザーザーという水が流れるような音が聞こえたり、脳出血を起こしたりする病気です。脳の静脈に逆流を認めるタイプは脳出血の危険性が高く急いで治療を行う必要があります。場所によっていろいろなタイプがありますが、異常な血液の流れが生じている血管をまず止め(動脈側から)、それでも治まらなければ、静脈側からカテーテルを挿入し出口をふさぎます。

(4)頸動脈狭窄症

頸動脈狭窄症に対しては、標準的な治療として「頸動脈内膜剥離術(以下CEA)」と言う、首を切って血管を露出し、狭窄の原因となっているアテロームと言われる血管壁に付着したゴミを取り除く手術が広く行われてきました。近年海外ではこの手術の危険性が高いとされていた患者さんに対して、ステントと言われる筒状の金属を留置して血管を拡張する手術が行われています。昨年米国の学会で、手術危険患者において、CEA群とステン治療群を比較検討したSAPPHIRE(Stenting and angioplasty with protection in patients at high risk for endarterectomy)といわれる研究結果が報告されました。この試験の対象は、1)無症状の80%以上の狭窄症、2)症状の出ている50%以上の狭窄症で、手術の危険性が高いと判断された(心不全、冠動脈疾患、肺疾患など)患者さんです。そして30日以内の有害症状(死亡、脳卒中、心筋梗塞)の発生率は、CEA群では12.6%、ステント留置術群では5.8%で、ステント留置術群の方が有意に治療成績は良好でした。これは米国の病院を中心とした研究であり、そのまま日本に当てはめるわけには行きませんが、血管内治療がCEAと比べても劣らない治療で有ることが示されました。実際には細くなった血管をステントで内側から広げます。広げる際には血管に付着しているゴミが流出してしまうため、それを回収するフィルターというものを事前に先まで送っておきます。

(5)脳梗塞(主幹動脈閉塞症)

脳梗塞は脳血管が詰まる病気ですが、症状が出てから短時間以内であれば、詰まった血管内の血栓を溶かして血流を元にもどすことで症状が回復する可能性があります。血流再開が早ければ早いほど、症状の回復が良く、後遺症も軽くなる可能性も高くなります。現在日本でも発症から4.5時間以内にtPAという薬剤の点滴をして血栓を溶かす治療が行われています。しかし、条件を満たせずこの治療が出来ない場合も多く、またこの治療の効果があまり期待出来ないものもあることが解ってきました。その場合にカテーテルを用いて詰まった血管の再開通を試みる治療方法があります。もちろんこの治療もいろいろ条件がありますが、今まででは治療出来なかった患者さんにも治療の幅が広がりました。この分野はその効果が期待されている最先端の医療の一つです。現在日本ではある限られた施設でしか治療が出来ません。実際の方法は、カテーテルを足の付け根の血管から挿入して首の血管へ進め、さらにより細いマイクロカテーテルを詰まった血管内へ進めます。そして、詰まった血栓をカテーテルで吸引したり、特殊なステントで回収したり、血栓溶解剤を注入して血栓を溶かしたりして再開通させます。

(6)脳腫瘍(開頭腫瘍摘出術前の塞栓術)

脳腫瘍の中には、髄膜腫や血管腫など血管に富んだ腫瘍(=血液が多く通っている)があります。これらの摘出術では、かなりの術中出血を覚悟しなければならない場合があります。
出血が多ければ、それを補うため輸血が必要となります。近年、輸血の問題が世間を騒がせています。出来れば輸血をしたくないというのが患者さんの本音でしょう。最近は手術中の出血量を減らす1つの方法として、開頭手術前に脳血管内手術が行われれようになってきました。つまり、摘出術前に腫瘍を栄養している血管を血管内手術で止めてしまいます。腫瘍に行く血管が詰まれば、腫瘍には血液がいかないのですから、腫瘍を切っても血が出ないことになります。ただし、脳細胞もいっしょに栄養している血管を止めるわけにはいかないので、腫瘍だけに血液を送っている血管を検査(プロボケーチィブテスト)で見つけだし、その血管だけを止めることになります。そのため、手術中のまったく出血しないということはありませんが、輸血を必要としない範囲で出血量をおさえることが可能となります。あくまでも、本番の摘出術の前段階の治療です。
頭の外傷における脳血管内手術の役割は単純で出血している所を血管の内から到達し止めることです。交通事故など全身のあちこちに外傷がある場合に行われるケースが多いです。血管内手術が、迅速に短時間で最大の効果を発揮できる分野の1つです。中でも次の3つを解説します。

①急性硬膜外血腫
強く頭をぶつけると、その当たり所によっては頭蓋骨が骨折します。急性硬膜外血は、その骨折した頭蓋骨により脳を包む膜(硬膜)の上を走っている動脈を損傷し出血する外傷 です。出血が多いと硬膜の外から脳を圧迫することになり死に至るこわい外傷です。すでに病院に運ばれてきた時に脳が圧迫されている場合はすぐに緊急開頭 手術となります。しかし、病院に運ばれてきた時にはまだ脳の圧迫所見がないかあるいは少ない患者さんも少なくはありません。ある研究では、このような患者さんの43%の人が最終的に開頭手術が必要になってしまうと報告しています。つまり、徐々に出血がひどくなってくるケースです。我々のグループは世界に先駆け、これら最終的に開頭手術が必要になってしまう人たちに対して、ある基準を設け、開頭手術が必要になる程に出血が溜まってくる前に、血管内手術で出血を止めてしまうという治療を行いました。治療成績は全例で良好で、平均入院期間も8日とよい成績でした。これらの方法と成績は当院部長がアメリカの脳神経外科学会総会でも発表しております。

②顔面外傷・鼻出血
頭の外傷の中で最も血管内手術の有効性が高い分野が鼻出血です。顔面の外傷による鼻出血は非常に難治性で保存的に止血することが難しいことがあります。その際に顔面に血液を送っている外頸動脈の枝を選択的に血管内手術で止めてしまうことにより短時間で止血が可能となります。

③慢性硬膜下血腫
特殊ケースですが、繰り返す出血に対して止血の為に行う場合があります。

脳血管内治療の危険性は?

この治療法の大きな合併症の一つとして、血管が血栓(血液の塊)により詰まってしまうことが挙げられます。病変部を直すために挿入する金属コイルや、カテーテルは人体にとって異物であり、その表面に血液が付着して血栓ができたり、もともと血管壁に付いていた血栓がカテーテルによって剥がれたりして、血管を閉塞させてしまうことがあります。この合併症が起きにくいように手術中はヘパリンという血液が固まらないようにする薬剤を使用しますが、逆にその薬のために、肘や足の付け根の血管を刺したところから出血したりすることもあります。また手術中に病変から出血することが有ります。これらの危険性は病気の状況によっても違いますが3~5%ほどと言われています。これら以外に、造影剤の副作用などの危険性もあります。

おわりに

これらは、血管内治療のすべてではありません。血管内手術はこのようにいろいろな 分野に応用されてきており、現在脳神経外科の中で最も先端的な分野の1つです。今後も患者さんの肉体的負担の少ないこの治療が、さらにいろいろな病気に応用されていくよう、患者さんの満足のいく治療を目指して努力していきたいと考えています。

Copyright© Seirei Yokohama Hospital. All rights reserved.