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~病院ブログ~


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2016年2月

聖隷横浜病院の新たな一歩

2月20日(土)、新外来棟建築計画に伴い、事務棟並びにひだまり保育園(院内保育園)の引越しを行いました。
天候はあいにくの雨でしたが、みんなで汗水流して机やロッカー、書類などを運び出しました。新しいひだまり保育園(院内保育園)と事務室(総務課、経理課、総合企画室、事務長室等)はフェリーチェせいれい(旧看護宿舎)の1階と4階で、太陽の光が射し込む明るい空間となっています。スタッフ一同気持ちを新たに頑張っていきます!!

2月29日 事務部 X

看護医療安全研修Ⅲがありました。

今回の医療安全Ⅲの研修では、事前に、私たちが身近なところで「危ないな」、「危険だな」と思うところを写真で撮って参加しました。「どこがどう危ないのか」、「ここも危険じゃないか」などとグループで話し合うと、自分で気が付かなかった危険ゾーンにも気が付くことができました。どうやったら改善できるか話し合い、チームを意識すると共に安全について話し合えた場でした。
多重課題について私ならこうする!というテーマについても取り組みました。新人看護師には辛い多重課題の例について、まずは個人で考え、次にグループで共有し、実際にロールプレイで発表しました。みな、女優であったり男優であったり、その役に入り込むことで、その人の気持ちになり、「自分だったらどうしよう?」などを考えられたと思います。
今回の研修で医療安全の視点で自身の目標を立てたので、来年度も頑張っていこうと思います。大事な視点を忘れずに、これからも患者さんの安全を守っていければいいな、と思います。

2016年2月23日 看護部I

今年度から開催の「アドバンス研修」が無事に終了!

当院のスタッフは、学校を卒業してそのまま入職したスタッフと様々な医療機関や施設などの経験をして入職したスタッフ(既卒入職)がいます。
最近は、この既卒入職のスタッフが増え、聖隷福祉事業団および聖隷横浜病院の理念教育を受ける機会があまりないまま現場で仕事をしている場面が多くなってきました。
そこで、今年度から聖隷福祉事業団の一員であり聖隷横浜病院の職員としての自覚を深めるため、そしてチーム医療を実践する中での自分の立ち位置を明確にするために、「アドバンス研修」を企画しました。
研修生は、当院での勤務経験が7か月から5年の14名が参加しました。
はじめに「聖隷の理念と使命」という講義では、事業団の歴史から基本理念のキリスト教精神に基づく「隣人愛」などについて解説いたしました。その後「チームワーク」の演習、「目標管理」の講義を受け、最後に「当院で働いて感じる事」というテーマでグループディスカッションを行いました。
普段、あまり話をしない他職種・他職場のスタッフとの1日研修でした。「しっかり理念を理解することができ仕事への向き合い方がわかった」、「自分の立ち位置を再確認できた」、「他職種のスタッフとの交流は刺激になった」などの感想がありました。
「アドバンス」とは、目標に向かって進む事、前進することの意味です。この研修を機会に、それぞれのスタッフが自身の次のステップに進み、聖隷横浜病院の大きな人財になる事を期待しています。

2016年2月19日 看護部 Y

実録 メタボ戦記(最終話)

【私と体脂肪との500日間の戦い】
最終話 メタボとの激闘の果てにたどり着いた世界

メタボとの闘いに完全勝利した現在、リバウンドの兆候は一切なく心穏やかな日々をおくっている。体重が減り続けているかといえばそうではなく、同じ体重をキープしていた。糖質制限の専門書によれば、糖質制限食を続ける事ができれば、おおよそ理想体重に収束するらしい。つまり太っているヒトも、痩せているひとも同じような体重になっていくそうである。すでにスーパー糖質制限食を1年以上つづけているが、特に不自由を感じる事はない。どちらかというと自分の味覚や消化機能に変化が起きているようで、糖質が多い食事を口にした場合には、その味を妙に甘く感じてしまったりし、食後に異常な胃もたれ感を感じるようになった。正直なところ、もとの主食のある食事には戻りたくないというのが現在の所感である。2回ほど定期健康診断をうけたが、メタボを指摘された際にみられた脂質異常症も改善し、すべての血液検査値は正常になっている。自分を見る周りの目も変わってきたような気がする。私の外来に10年以上に通院している患者さんが、診察室に入ってきたときに、“ありゃ、違う診察室に入ってしまったよ”と別人に間違えられたことさえあった。いままで着ていたスーツはお腹周りがブカブカになってしまったので、思い切ってスーツを新調してみた。それも新作007シリーズでダニエル・クレイグが演じるジェームスボンドが着ているような、派手なアクションをしたら破けてしまいそうな細身スーツに挑戦してみたが、いい感じで着こなせるようになった。正直な感想を述べさせてもらえば、メタボ解消のためにあれこれがんばって本当に良かったと思う。それは現在の、自分的に理想の身体を手に入れたという結果だけについて言及しているのではない。メタボを克服する過程での数々の人々との出会いや、肉体を鍛え上げる事への新鮮な喜び、そしてなにより自分の中にある、実現困難な目標に向かい挑み続けるタフな精神力を実感したことである。さらには以前の自分では全く歯が立たなかったメタボリックシンドロームへの完全な攻略法を習得できたという充実感である。テレビや雑誌などで数多くのダイエット法が紹介されており、人それぞれにマッチしたダイエット方法はあるのだろう。ただし論理的な裏付けやエビデンスが存在し、実現の可能性が高いメタボ解消法は、定期的な運動と糖質制限食の組み合わせが最良のものではないかと考えている。もしもこのブログをよんでいて、本気でメタボリックシンドロームを克服したいと考えているかたがいるのであれば迷わずに実践してほしい。自分自身はその時々で、あれこれ悩みながら試行錯誤のうえ現在に至っている。その過程を本ブログに書き綴ったのだが、皆さまのメタボ克服の手助けになれば幸いである。
(おわり)

2016年2月18日 診療部U

フィジカルアセスメント研修を開きました!

「観察力を養う!」という目的のもと、呼吸や血液循環、脳神経についての観察技術を学びました。現在、看護師になるための教育カリキュラムの中でも看護技術として学んでいます。しかし、臨床現場にいるからこそ、その技術の大切さに気付き、観察する必要性がわかるものでしょう。今回は、そのような観察技術に加え、腹臥位療法や、自分が得た情報から患者さんの状態を推察していくという臨床推論の演習も行いました。実際に参加した研修生の学びを紹介します。
  • 患者さんの異常か正常化を判断するための知識を学ぶことができた
  • 新人でも五感をしっかり使って異常をキャッチできることがわかった
  • 一人では気付かないことも、チームでアセスメントすることの重要さがわかった

技は使ってこそ生きてくるもの。どんどん活用して観察力をあげていってほしいと思います。

2016年2月17日 看護部T

実録 メタボ戦記㉙

【私と体脂肪との500日間の戦い】
第29話 経験者が語る糖質制限理論(その5)

さて、せっかく病院のブログなのだから、医療の現状と糖質代謝の関係を考察してみたい。医療と糖質といえばズバリ糖尿病治療になる。この分野の薬物治療はまさに日進月歩で、新しいコンセプトの治療薬が次々と生み出されるホットな分野である。それだけ糖尿病でお困りの人たちが多いということだろう。糖質を多く含む食事をした後の急激な血糖上昇(グルコーススパイク)は体によくないといわれているが、それを緩和する糖尿病治療薬が実際にある。アルファ・グルコシダーゼ阻害剤といって、糖質の消化の最終段階を阻害することでブドウ糖の吸収を抑えることにより、糖尿病の改善を図る薬剤だ。さらに最近になり驚くような仕組みで糖尿病の改善を図る薬剤が発売された。糖尿病患者さんの尿からブドウ糖を再吸収するSGLT2という輸送体を阻害することで糖尿病を治療する、SGLT2阻害剤という薬剤である。これは尿から、より多くのブドウ糖を排泄させるという、驚愕の治療薬である。尿にブドウ糖が排泄されるから糖尿病なのに、その排泄されるブドウ糖を増やすとは、まさに逆転の発想である。冷静に考えれば、尿に混じったブドウ糖が問題なのではなく、血液中のブドウ糖値が高いことが病気の本質なので、血糖コントロールのためにブドウ糖を捨てるというのは、治療戦略の一つとしては正しいわけである。アメリカで行われた最新の研究で、この薬剤が非常に有効であることが証明されている。ちなみにこの薬を使用するとほとんどの患者さんがスマートになる。そこでもう一度糖質制限食のコンセプトを思い出してほしい。食後に血糖値を上昇させる栄養素は何か?糖質だけである。その糖質を制限すれば食後の急激な血糖値の上昇はおきにくい。これはアルファ・グルコシダーゼ阻害剤の治療コンセプトに通じる。さらにSGLT2阻害剤に至ってはブドウ糖を体外に捨てる治療法である。ブドウ糖を捨ても問題無い、いや捨てた方がスマートになり、糖尿病が改善するならば、そもそも最初から糖質を摂取しなければいいのではないですか?と考えることができる。つまり新たな糖尿病治療薬の作用機序から糖質制限食の有用性を証明することができるわけである。
(続く)

2016年2月16日診療部U

患者様からのプレゼント、活躍中

2015年のクリスマス、私たちは素敵なプレゼントをいただきました。お手製のバッグ!それもセットで!
どのように生かせるかと皆で考えた結果、車椅子で移動する患者様のカルテやフィルムと言った“手荷物”を入れるバッグとして使わせて頂こう!と決まりました。無地で単色のものが多い医療用品の中にあって、このバッグが1つあるだけで、ちょっとした明るいアクセントになりました。ありがとうございました!
プレゼントくださった“サンタ”さん、目にしていただけたでしょうか。

2016年2月15日 看護部

今年度の看護助手チームはやっぱり凄かった!

今年度より6月から4回に亘って、看護助手研修を行ってきました。
今までの2時間から半日へと、内容もとことん掘り下げて展開をしてきました。
そして、最終回はBLS(一時救命処置:Basic Life Support)の演習を行いました。
通勤途中の駅構内やデパートなどの買い物中に「倒れている人を発見したら」と想定して、応急処置ができるようにとの企画でした。
「AED:自動体外式除細動器」が地域の中に随分と普及はされてきましたが、実際に使ったことがある人は少ないと思います。なので、いざ!という時の為のトレーニングがとても大切になります。
助手研修では2年前にも同じ研修を行いました。今回の感想でも「AEDの使い方の再確認ができた」、「時間が経って忘れていたことがあった」「繰り返し学ぶことが大切だと思った」などがありました。
毎回元気に研修に参加し、活発な質問が飛び交い、互いに刺激し合って、勉強になったと職場に戻って行く助手チームの皆さんは、本当にエネルギーが溢れていて圧倒されっぱなしでした!

2016年2月12日 看護部Y

実録 メタボ戦記㉘

【私と体脂肪との500日間の戦い】
第28話 経験者が語る糖質制限理論(その4)

ここまで話を読んでいただいた方の中には、胡散臭く感じ始めている人もいるのではないかと思う。このブログは狂信的な糖質制限原理主義者が、医師の名を語り、思い込みで糖質制限理論を展開しているだけではないのかと。先祖代々受け継がれてきた日本人の食生活が間違っているわけはない、だからこそ日本は長寿世界一なのだと考える人もいるだろう。だがもう少しお付き合いいただきたい。糖質制限食と人類の関係を考えた場合、食文化の歴史を大きく3つステージに分ける。一つ目は約700万年前の人類誕生から約1万年前までの、狩猟と採集の時代(約699万年間)。二つ目は農耕が発明された1万年前から300年前の時代(約9700年間)。そして三つ目は炭水化物の精製技術が発達した300年前から現代までである(約300年間)。あまりにスケールが大きすぎて中々想像しにくいが各時代を考えてみたい。まず狩猟と採集の時代だが、食べる物は動物の肉や魚介類、昆虫や野草などを中心として時々木の実や果物をとる暮らしである。栄養の割合としては、糖質12%、タンパク質32%、脂質56%と推測されている。 この頃の食事こそ糖質制限食といえるだろう。この時代で生き残るには、食料が極端に少なく、供給も非常に非安定な環境に適応できる能力が必要である。その能力とはすなわち、自らの身体の中に生きていくためのエネルギーを溜め込む能力だったと考える。日常活動のエネルギーは脂肪を使用し、ごくたまに果物や木の実などの糖質を得ることができたなら優先的に中性脂肪に変換して体脂肪として保存していたのだろう。狩猟と採集の時代である約699万年の間、人類は多量の糖質を摂取できる環境になかった。当時糖質という栄養素は貴重品だったのである。さて農耕が発明された時代には灌漑農法を用い小麦を栽培し始めた。それにより単位面積あたりで養える人口が50〜60倍にも増えたため、人口増加が始まった。穀物は狭い耕地でも安定的かつ大量に収穫ができ、冷蔵庫などがなくても長期保存が可能という特性があるからだ。肉や魚の収穫量が飛躍的に増加し続けることはないが、穀物の収穫量は飛躍的に増加したため、食事内容にしめる糖質の割合も増加していく。そして300年ほど前の、白米や白パンなど糖質の精製技術が発達した時代から、糖質の栄養素としての主役の座が揺るぎないものになったようだ。しかし人間の身体の仕組みは基本的に700万年前と大きな変化がないため、今から1万年以上むかしの、糖質を摂ると中性脂肪に変換して体脂肪にして溜め込もうという機能が働き続け、現代人はメタボになってしまうのである。糖質制限食の基本スタンスは、長い歴史のなかで人類が日常的に摂取していたものを食べるということになる。
(続く)

2016年2月11日 診療部U

実録 メタボ戦記㉗

【私と体脂肪との500日間の戦い】
第27話 経験者が語る糖質制限理論(その3)

前回の話で、体脂肪の起源が余剰のブドウ糖であることを説明した。この話をすると多くの人が混乱してしまう。体脂肪の起源は食事で摂取した脂肪と信じている人が多いからである。これは以前に、肥満や糖尿病の原因は過剰な脂肪摂取にあるとの仮説、いわゆる”脂肪悪玉説”が信じられてきたからなのであろう。しかしこの脂肪悪玉説は最新の研究において否定されている。さて今回は人のエネルギー源について説明する。人間の主なエネルギー源は脂質と糖質である。昔ビリー軍曹が出てくるエクササイズDVDでは、ハードな運動をしながら”脂肪を燃やせ!俺についてこい!”という威勢の良いかけ声を頂いたが、普通にしていても脂肪は燃えている。昼夜問わず動き続けている心臓の栄養源は脂肪酸であり、ブドウ糖をエネルギー源にしているといわれている脳でさえ、脂肪の代謝産物であるケトン体を栄養源にする事もできる。本当の意味でブドウ糖しかエネルギー源に使用できない組織は、その細胞内にミトコンドリアを持たない赤血球だけである。糖質と脂質の二つのエネルギー系は、”ブドウ糖-グリコーゲンシステム”と”脂肪酸-ケトン体システム”と呼ばれている。ブドウ糖-グリコーゲンシステムが体内に備蓄できるカロリーは約1000kcalで、それに対し脂肪酸-ケトン体システムは9万kcal(体重50kg、体脂肪率20%の人の場合)と大きな差がある。グリコーゲン分解は激しい運動を行ったり、極度の低血糖など体の非常事態に起こるといわれている。それゆえブドウ糖-グリコーゲンシステムはあくまでサブのエネルギーシステムであり、人間の主なエネルギー源は脂肪酸-ケトン体システムということになる。最新の自動車にプラグインハイブリッド車(PHV)というものがあるのをご存じだろうか?これは燃料として、電気とガソリンを補給することができる自動車で、プリウスPHVの場合は電気だけで26km走行でき、ガソリンを使えば1400km走ることが出来る(カタログ値)。電気がある状態では電気で走行し、電気がなくなればガソリンハイブリッド走行に切り替わる仕組みである。この自動車システムの、電気がブドウ糖-グリコーゲンシステムで、ガソリンが脂肪酸-ケトン体システムと考えればわかりやすいだろう。ただしエネルギーの効率的な使用という面では人体の方が遙かにすぐれている。自動車だったら、走行しなければ燃料が減らないだけで、それ以上に燃料を補給できないが、人体のほうは自動車にたとえると、走行(運動)せずに電気(糖質)を補給し続けたら、余った電気(糖質)をガソリン(中性脂肪)に変換し、ガソリンタンクを拡大(肥満)して対応出来るのである。そう考えると、体脂肪が大量に貯まってしまったメタボの人が、肥満を解消する方法がみえてくる。つまりエネルギーが満タンの状態から、まずは走行する(運動する)、電気の補給を控える(糖質制限をする)、そしてエネルギーとしてガソリン(中性脂肪)を消費する、という解を導き出せるわけである。
(続く)

2016年2月9日 診療部U

第9回 関東聖隷放射線部合同学術大会が開催されました!

1/16に聖隷佐倉市民病院にて関東聖隷放射線部合同学術大会が開催されました。
この大会は通称、関東学術大会といい聖隷福祉事業団の運営する病院の中で関東に位置する病院である、聖隷佐倉市民病院と、聖隷横浜病院の放射線課が合同で行っている学術大会のことで、今年でなんと9回目の開催となります。毎年交互の施設で開催されるため、今回は佐倉での開催となりました。
聖隷福祉事業団の内部での学術大会とあなどることなかれ、服装は皆さんカッチリスーツ、演題発表やディスカッションなどは全国学会発表の本番さながら、日ごろの業務で培われた知識を活用し毎年熱い意見交換が行われます。
演題発表は例年、その年入った新人が担当し、この関東学術大会が初めての研究発表という人も多く、外部の学会等を見据え大変良い経験の場となります。何を隠そう私も1年目の新人の時に初めての演題発表を行い、緊張のあまり発表の際にだいぶ早口になっていたことを今でも覚えております。
また今回、ディスカッションでは外部の医療機器メーカーさんや、浜松の聖隷三方原病院からも演者さんを迎え、例年以上に規模を広げ意見交換が行われました。
このようなことを書いていると、厳しい大会だなぁと感じるかもしれませんが、そこは聖隷福祉事業団内部の学術大会、会自体が終わると懇親会では労をねぎらい、そこからは楽しい飲み会に早変わりしてしまいます。
このように少しずつ規模を拡大し、続けられている関東学術大会。来年は横浜で行われる予定であり、そこでもまた知識と交流を深められればなぁと思います。

2016年2月5日 医療技術Y

実録 メタボ戦記㉖

【私と体脂肪との500日間の戦い】
第26話 経験者が語る糖質制限理論(その2)

食べたものが身体の中でどのように変化していくのか、正確な知識を持つものは我々医師の中でも意外に少ない(学校の授業で習ったが忘れてしまっていると思われる)。たとえば、野生の肉食動物は常に捕らえた獲物の肉しか食べていないのに、なぜ低血糖にならないのか?野生のウシはカロリーゼロの草しか食べないにもかかわらず、大きな身体に成長するのか?これに対して正確に答える事ができるだろうか?以前の自分はそもそもそんな事を考えた事が無かったし、問われた事もなかった。だから以前の自分であれば、どちらも答えられない。今回勉強して学んだのだが、基本的に哺乳類の臓器や細胞の代謝の仕組みは、ほとんど同じである。草食動物は草を消化・吸収できると考えている人がいるが、これは間違い。草の主な成分であるセルロースを分解できる酵素を持つ脊椎動物はこの地球上に存在しない。では食べた草はどのようにして栄養分になっていくのだろうか。答えはウシの消化管内にいる腸内細菌にある。ウシには4つの胃袋があり、3つ目までの胃袋では胃酸が分泌されず、様々な腸内細菌が住んでおり、この腸内細菌たちが草を分解し、栄養分となる有機物に変化させているのである。肉食動物が低血糖にならない件はどうだろうか。答えはタンパク質の分解物であるアミノ酸などを原料にしてブドウ糖を作り出すという、肝臓で行われる糖新生である。食べたものは、消化管の内部や、消化吸収された後に体内(主に肝臓)での生化学反応によって変化するという認識をもってもらいたい。テレビコマーシャルなどで”あなたが食べたもので、あなたの身体はつくられる”といったようなコピーがあるが、栄養学的には大きな間違いと思う。それが事実であれば草食動物の体は何なのかという話である。

さて、私たちが普段食べているものは、どのように変化していくのか考えてみよう。食べたものは基本的に腸で吸収できる状態まで分解されるが、これを消化とよぶ。米、パン、麺類などの糖質はブドウ糖の重合体であり、すべてブドウ糖にまで分解されて吸収される。タンパク質はペプチドやアミノ酸に分解され吸収される。中性脂肪(トリグリセリド)はモノグリセリド、脂肪酸、グリセオールに分解されたのちに吸収される。コレステロールは前述のモノグリセリドと胆汁酸の混合物に混じり吸収される。また腸管から吸収できない糖類(オリゴ糖など)や食物繊維などは腸内細菌の栄養になり、それを元に腸内細菌がいろいろな有機物を生産し、われわれに提供してくれる。血液の凝固に関与するビタミンKなどはその代表である。ここで注目してほしいのは、食後に血糖値が上昇する栄養素は糖質だけという事実である。食後の急激な血糖値の上昇はグルコーススパイクと呼ばれ、体によくないことが知られている(血管の内皮細胞に障害を与える)。そして急激な血糖値上昇を是正できない病気が糖尿病である。では健常人では食後の血糖値上昇はどのように是正されるのであろうか。上昇した血糖値を下げる物質は、すい臓から分泌されるインシュリンである。インシュリンが分泌されると血液中のブドウ糖は肝臓や筋肉や脂肪細胞に取り込まれる。肝臓と筋肉ではブドウ糖はグリコーゲンというブドウ糖の重合体として貯蔵されるが、蓄えることのできるグリコーゲン量は非常に少なく、肝臓に100グラム、筋肉に300グラム程度しかない。それでは、あまってしまったブドウ糖はどうなるのか?とりあえず日常生活などのエネルギー源として使用され、それでも余った分は中性脂肪に変換され脂肪細胞に貯蔵される。つまりメタボの人の、おなかにたっぷりと貯まってしまった体脂肪は、元をたどれば消費しきれなかった余剰のブドウ糖というわけである。インシュリンが肥満ホルモンといわれる由縁がここにある。食物中の脂質(ほとんどが中性脂肪)は、前述の過程で体内に吸収されると再び中性脂肪に再合成され集合し、キロミクロンという集合体になる。キロミクロンは肝臓、脂肪組織、筋肉組織などの毛細血管を通る間に血管壁にある脂肪分解酵素の働きによって脂肪酸とグリセオールに分解される。そして脂肪酸は筋肉細胞などでエネルギーとして利用される。つまり食事で摂取した脂質はほとんどが消費されているのであり、摂り過ぎて肥満を招くのは脂質ではなく糖質なのである。
(続く)

2016年2月4日 診療部U

実録 メタボ戦記㉕

【私と体脂肪との500日間の戦い】
第25話 経験者が語る糖質制限理論(その1)

糖質制限理論を本格的に学びたいのであれば、第20話で紹介した本を読んでいただきたい。ここでは糖質制限理論の簡単な解説と自分の見解を述べてみようと思う。我々が常識と考えている事は、本当に正しい事なのかを考えたい。多くの人が実感できる、いわゆる昔のことは祖父の世代くらいまでのことであり、それより前の時代の事を実感することはないと考える。昭和初期や大正時代より以前のことは本で読んだり、映画やテレビのドラマなどでしか知る事ができない。食生活について自分が育った環境で考えてみると、小さい頃から食事は朝昼夕の3食で、主食にはご飯またはパンをとり、たまに麺類が主食になっていた。副食いわゆるおかずには調理された肉や魚、野菜などをとるのがあたり前であったし、おそらく多くの人が同じであろう。栄養素として考えた場合、炭水化物(糖質+食物繊維)が主食とよばれるものであり、副食がタンパク質、脂質および野菜などになる。栄養学でいうところの3大栄養素は糖質、タンパク質、脂質であり、現代の一般的な食事を摂取した場合にはカロリー的に糖質が50%以上、残りがタンパク質と脂質になるようである。このバランスは本当に体に良いものなのだろうか?生まれたときからそのような食事をしてきているし、自分の親も、祖父の世代もそうだったのであろう。つまり実感できる昔からずっと今のような食生活を送ってきているのだから、今の食事のバランスがあたり前、これこそが食事の黄金比と考えるのも無理がないと言える。現に厚生労働書がまとめている”日本人の食事摂取基準(2015年版)”においても、炭水化物50-65%、たんぱく質13-20%、脂質と脂質20-30%と書いてある。この割合の科学的根拠については日本人の平均的な食事を調査しその平均値を算出したものをベースに作られているらしい。もちろん日本人が長寿世界一である事実もふまえているのだろう。このような平均的な食事をとり、普通の生活をして、メタボと無縁の体型を維持できる人に関しては、そのままの食事を続けてもらって全く問題がないと思う。生まれついての体質に感謝するべきであろう。しかし自分のように普通の食生活では実際にメタボになってしまい、何とかしてやせたいと考えているひとは、この平均的な食事バランスの見直しが必要であると考える。糖質制限食の大きな誤解の一つに、3大栄養素の一つである糖質をほとんど摂らなくなるので、トータルの熱量が絶対的に不足するから痩せるというものがある。つまり脂質制限食やタンパク質制限食なども同じ食事療法として成り立つという考え方であるが、残念ながらこれは大きな間違いである。必須アミノ酸や必須脂肪酸の摂取の観点からも、極端なタンパク質制限食や脂質制限食はおすすめできない。ちなみに必須の糖質というものは存在しない。なぜならブドウ糖は体内で合成できるからである。以前紹介した、糖質制限食VS地中海食VS脂質制限食の研究では、糖質制限食は食べる量の制限は全くないが、脂質制限食、地中海食は摂取量の制限を設けている。そのハンディをものともせず体重減少効果に大きな差がついているという結果がある。また今回自分で体験したが、糖質制限中に空腹感に苦しんだ事は一度もない。食べるものと飲むものに糖質が含まれているか否か、という質的な制限をおこなうだけで、量的な制限はしなかった。それでも一気にメタボを克服したという事実がある。つまり中年を過ぎた人間が、余剰の体脂肪減少を実現するためには、運動だけでなく、何を食べるかという事が重要であり、その鍵が糖質制限なのである。その理論的裏付けは次回に紹介する事にする。
(続く)

2016年2月2日 診療部U

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