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2022年度

3月

「絵本を通しての共有体験」 

 日に日に暖かさが増し、日中は、外に出るのが心地よい日々が続いています。昨年よりも早く、満開を迎えそうな園庭の桜も、新たな季節の到来を知らせてくれていますね。
 先日は、2週に渡る、クラス連絡会に於いて、保護者の皆様と1年間の振り返りをし、お子様1人ひとりの成長の喜びを共有できましたこと、感謝申し上げます。今回は僅かながらではありますが、久しぶりに、懇談の時間を持つことが出来たクラスが多くありました。以前は「保護者懇談会」として開催していたものが、感染症流行の中で、懇談が出来にくく、園からの連絡という形になり、行事名も「保護者連絡会」と変更したのが昨年度。さらにその前年度は、中止という決断を迫られた経緯もあったかと思います。今回は、園をはじめ、市内の感染状況が落ち着きを見せる中で、人数を分散させるという対策を図りつつ、実施しました。(時間の制限により、懇談ができなかったクラスも、少人数での和やかな雰囲気の中、会を進めることができました。ありがとうございました。)懇談の中では改めて、保護者の皆様が、お子様のことを大切に考え、育児に家事に仕事に…と日々、力と心を注いで過ごしていらっしゃることを実感しました。毎日の心労は絶えないかと思われますが、似通った状況の仲間がいることは、心強さも覚えますね。
 さて、そのようなお忙しい日々の中で皆様は、どんな風に、お子さんとの時間を作っていらっしゃいますか?先日、園と関わりの深い、玩具や絵本の業者、浜松こどものとも社代表の安田氏の話を、職員で聴く機会が得られました。絵本のもつ意味、必要性、どう保育・教育の中で用いるかという話を聴くことができた訳ですが、その中で安田氏が言う、近年の、「子どもとメディア」の関係性の変化について、とても納得のいくものがありました。様々な動画配信サービスの普及に伴い、ここ数年の子どもたちの、テレビを観るスタイルさえ変化している。「メディアを通しての共有体験すらなくなりつつある」というのです。〈1つの番組を観て、家族皆で盛り上がる〉〈学校で友達と、「見た?」「見た見た!」と話に夢中になる〉そのような共有が、一層出来にくくなりつつあります。動画配信サービスを完全に否定するわけではありませんが、個々の自由な時間に、身近な端末で視聴できる便利さは、子どもたちから、貴重な共有体験を奪ってしまっていることへの自覚を持たなくてはいけません。
 ある日の1歳児クラスにて、A君が私に「読んで!」と1冊の絵本を持って来て、膝に入りました。おにぎりの絵本です。読み進めていくうちに、A君が私に、「いいよ!」と言い、おにぎりの食べさせ合いが始まりました。「美味しい」「酸っぱい!」色々な表情で、声で、遊んでいると、そこへ1人、2人と周りの子が加わります。「酸っぱい」の私の反応が面白いようで、そうなると子どもたちは、たくさんあるおにぎりの中から、梅干しおにぎりを迷わず選び、何度も私に食べさせます。またある日には、同じクラスで、おべんとうバスの絵本を持って来た子の周りに、次々と友達が集まってきて…絵本の絵に対する、1歳児の〝意見交換会〟が展開されました。「この子、寝てる」「この子の目、なんで×になってるの~?」「この子、にっこりしてる!」「なんで?」等など。(絵本は、絵からイメージを様々に広げることができるのも魅力の1つですね。)
 共有体験は、一緒に散歩に行く、一緒にクッキングをする、スポーツをする、様々なことで経験できるものです。とは言え、それらには時間も必要です。1冊の絵本…お忙しい日々の中で、少しでも早く子どもを寝かせなくてはと必死になる毎晩、絵本の5分、10分も保護者の皆様にとっては貴重かとは思われますが、、自尊感情を育むと言われる共有体験を、身近なところから積み重ねることを意識してみてはいかがでしょうか。
 最後になりますが、今年度も1年間、園の運営にご理解・ご協力いただきまして誠にありがとうございました。来月より、こども家庭庁が設立されます。「こどもまんなか」社会を社会全体で作り上げていくために、園としてすべきこと、出来ることを見出し、今後もまい進して参ります。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

園長 森下美由紀

2月

「子ども同士の育ち合い」 

 冷えこみがぐんと厳しくなり、節分を前に、本格的な冬の到来を実感するこの頃。先日、園の事務所にて、こんな会話が繰り広げられていました。「うまくいったね。」「2階のあそこに置くといいかもしれないね。」「風船とか、面白いよね。」「ビニール手袋!」「やってみるか!」保育者としての経験を何年も重ねた職員3名です。寒波到来のニュースを耳にし、前日から、園内の様々な場所に氷ができるよう、仕掛けていたようです。確かにその日の午前中、新園舎とホールの渡り廊下には、ガラスかと思うほど透き通った氷が、大きなたらいの中にたくさん入っていました。朝から子どもたちと氷を介して様々なやりとりを楽しんだ日の昼過ぎ、さて明日はどうしようか?と思いを巡らし、話が盛り上がっていたようです。子どもたちに負けないほどに心躍らせる様子が手に取るように見え、改めてこの職業の喜び、有難さを実感しました。子どもたちの傍で、〈ワクワク〉を共有しつつ、明日への楽しみをもって毎日過ごせることに感謝です。ちなみに我が家では娘が、花、葉、小枝等を水の中に入れて、氷を仕掛けていて、毎朝、私の方が先に、(今日はどうかな?)思わず確認をしてしまいます。日頃は嫌がられる冬の寒さも、子どもと一緒だと、(凍っているといいな=気温が低いといいな。)と歓迎している自分に気づきます。心の持ちようも変わりますね。
 さて、私共聖隷こども園ひかりの子では、異年齢児保育を行っています。0歳児クラスから3歳児クラスまでは同学年の友達との生活、遊びが主となりますが、4歳児、5歳児に関しては、それぞれ約10名の計20名が1つの集団(クラス)となり、共に過ごしています。家庭のような兄弟的な関わり(大きい子が小さい子のお世話をする中で、優しさやいたわりの気持ちが育まれたり、小さい子は、大きい子にあこがれを抱き、子ども同士の育ち合いが生まれたりすること)を目的としており、日々、子どもたちの様々な関係が垣間見えます。
 最近、4.5歳児クラスの子どもたちが夢中になっている遊びの1つが編み物。ある日、同じ部屋のAさん(四歳児)と、Bさん(五歳児)が隣に座って、それぞれの編み物をしていました。2人とも黙々と。しかし、とある瞬間、Aさんの編み物が、机の上から下に転がったのです。転がった勢いで、編み機の棒(八本ほど)に掛けられた毛糸が全て、外れてしまいました。こういう時私は、まずは様子を見守るようにしています。隣にいるBさんは、自分の編み物に夢中になっているので気づきません。Aさんはまずは床に広がった毛糸と編み機を拾いました。そこに、同じ部屋内で廃材遊びをしていた5歳児のCさんが駆け寄ります。1本1本、棒に掛け直し、元通りになるまでにはしばらく時間がかかりました。Aさんは心配そうな面持ちで、Cさんのするのを覗き込んでいました。そして無事、元に戻るとAさんは編み物を、Cさんは廃材遊びを再開したのでした。
 またある日には、隣り合わせの部屋の0歳児と1歳児。手洗いの順番待ちのDくん(0歳児)にEさん(1歳児)が、「しーっ!」何かを伝えるかのように、鼻の前に1本、人差し指を当てて「しーっ!」と言います。Dくんはそれを真似て「しーっ!」と応えます。「しーっ!」「しーっ!」何度も2人のやり取りが繰り返されました。
 このような子ども同士の育ち合いは、もちろん同年齢児同士の中でも見られるわけですが、発達段階の違う者同士となると、その経験の幅は一段と広がるように感じます。先日、連絡会を前に保護者の皆様に、1年を通しての、お子さんの成長を感じる姿をアンケートにて伺いました。4歳児クラスの保護者の方より、「親は頼んでいなくても、自然と弟の手助けをしてくれる。弟も姉を頼っている。」「これまでもしっかり者の姉だったが、家では姉として我慢することも、園での年下の立場の経験からか、自分の思いを主張することができるようになったと感じる。」等、異年齢児保育を通してのお子さんの姿を伝えてくださる回答をいただき、大変嬉しく思いました。
今は感染症対策の観点から、異年齢児の関わりを制限せざるを得ない現状もありますが、来年度もまず、4.5歳児の異年齢クラスは継続していきます。また、どのようなクラス編成、保育内容に於いても、子ども同士の育ち合いを尊重しつつ、必要と思われる場面には保育者が介入して、子どもの健やかな育ちを支援していきたいと思います。異年齢児保育について、保護者の皆様のご意見等、ありましたらいつでもお聞かせください。

園長 森下美由紀

12月

「クリスマス献金」

 周りの木々の落葉が増し、植物も虫もそして私たちも、冬支度が進みます。そんな中、園庭入口の河津桜の木に目を向けると…2月頃の開花に向けて、新芽がたくさん出ていました。同じ時の流れの中で、多種多様の歩み方がある。身近な自然に触れるだけでも、子どもの育ちと重なる部分を感じます。
 園内には、もみの木やクリスマスクリブを飾り、クリスマスを迎える準備が少しずつ進んでいます。先日はアドベントの1回目の礼拝を、各部屋で行いました。(4、5歳児のみ2部屋ずつの集団です。)どの部屋も、アドベントクランツの1本目のろうそくに火を灯します。2回目の礼拝(来週)には2本のろうそくに火が灯り、3本目、4本目とクリスマスに向けて増えていきます。クリスマスの喜び・明るさが少しずつ増え、私たちの元に近づいてくる…そんな意味合いがあります。0歳児クラスでは、点火ののち、一呼吸置いて担任が「綺麗だねぇ。」と言うとAちゃんが「きれい」と。何とも言えぬ可愛らしい一言に、保育者は顔を見合わせ、その場がとても温かい雰囲気に包まれました。
 アドベント礼拝ではどの部屋でも担任が、「もうすぐクリスマスだよ。嬉しいね。」と話をし、クリスマスまでの期間の過ごし方の1つとして、〈献金〉をしていきたいと伝えました。伝え方は様々で、年齢的にもまだまだ自分の世界、自分中心の中にあって、相手の立場を考えることが難しい子どもたちも多いかと思っています。それでもそれぞれに話をし、保育者が子どもたちの前で献金箱に献金をする姿を示しました。3歳児クラスでは、私たちの身の周り、特に世界に目を向けた時の貧困の現状について伝えるために、担任は写真を用意していました。1枚目は泥水の傍に立つ、外国の子どもの写真でした。「この子、何していると思う?」との問いに、Bさんは「泥んこ遊び」と返答。私にはその一言がとても印象的でした。まだ3、4年の人生の中で、自分自身の経験に基づきながら、Bさんは即答したのです。写真には続き(2枚目)がありました。小さなお椀に泥水が入っていてそれを両手で持つ子どもの写真です。担任は話を続けました。「食べ物が無くてお腹が空いてね、それで、この泥のお水を飲んでいる子もいるんだって。」子どもたちは神妙な顔つきで写真を見ていました。1人ひとりがどんなことを思っていたのかはわかりません。でもそれぞれにそのことを知る時となったことは確かでした。
 貧困について考える時、そして子どもにそれを伝えようとする時、実は私は、いつもそこに難しさを感じます。それは多分、〈貧困〉と〈幸せ〉を一緒に考えてしまうからだろうと思っています。貧困=不幸ではなく、貧困の中にあっても幸せな人はたくさんいるでしょう。「私たちの身の周りで起きている貧困のために、自分のできることを考え、実行する。」ことを子どもたちと一緒にしていきつつ、貧困の中でも幸せに暮らせることもあると伝えることを、これからもしていきたいと考えます。2015年の国連サミットにおいて全ての加盟国が同意した、2030年を達成年限として掲げるSDGs(「誰一人取り残さない」持続可能な社会の実現を目指す世界共通の目標)にも、発展途上国への支援や、差別のない社会を作ることが挙げられています。保育・教育の中でのSDGsの実現も私たちの課題です。献金は、「クリスマスを迎えられる喜びを分かち合い、自分以外の人のために祈る機会となるように」との思いが込められていますが、SDGsに繋がる部分も少なからずあることでしょう。子どもたちと共に、温かな優しい気持ちを自分以外の人にも向け、祈り、アドベントの期間を過ごしていきたいと思います。保護者の皆様もどうぞクリスマスを楽しみにお待ちください。

園長 森下美由紀

11月

「人っていいな 」

園庭のアメリカフウの木が、上から少しずつ色を変え始め、季節の移り変わりを実感します。秋の心地よい陽気の中で、早々に落葉したアメリカフウを、花束のように集める2歳児クラスの子。自分の掌を目一杯広げて、葉と掌と、どちらが大きいか確かめる3歳児クラスのある子。日常の中で、季節を五感で感じ、楽しむことができることに感謝です。
 10月のある日のこと。私が園庭に出ていくと、4,5歳児クラスの子どもたちが園庭遊びを終え、水筒を持ってクラス毎に整列しているところでした。そこで遭遇した、心温まる場面をご報告します。
 Aさんは、保育者に助けを求めることが上手、つまり甘え上手なお子さんです。その出来事の数日前にちょうど、私はAさんの担任と話をしました。「困ったら、自ら助けを求められるのは素晴らしいこと。甘えたい思いも受け止めたい。一方で、状況を見極めながら、それをAさんと保育者との関わりばかりではなく、友達へと広がっていくことも期待したいね。」と。そのAさんが、同じクラスのBさんの手を一生懸命引っ張り、私の前を横切っていきました。Bさんの表情は少し戸惑っているかのようにも見えます。私は、何となく2人それぞれの視線を感じたのですが、気づかぬ振りをしながら、でも2人の様子を見届けたくて不自然に近くに立っていました。Aさんは何とか、Bさんを水筒掛けのところまで引っ張って連れていきます。そして繋いでいた手を放し、掛けてある自分の水筒を取ろうとします。Bさんは隣りで見守ります。AさんはBさんに「取って!」とアピールしているかのように私には見えるのですが、あまり伝わりません。水筒は、S字フックのようなものに掛かっていますが、少し小柄なAさんは、水筒の紐を上方向に持ち上げて取ることが難しいのか、とにかく水筒を取りたい一心で、自分の方へ引こうとします。そのうちに水筒掛け(長さ90センチ、高さ80センチほど)が倒れてしましました。Bさんは思わず「あっ!」と言い、そして水筒掛けを立て直そうとします。でも元通りにすることができません。片手に自分の水筒を持っているので、もう片方の手しか使えないのです。Bさんが苦戦していると、先に入室しようとする別フロアのCさんが列から外れ、やってきました。BさんとCさんとで協力して、水筒掛けが元に戻りました。水筒は掛かったままです。Aさんは再び、水筒を手前に引っ張ります。それを見ていたCさん、水筒の掛かっているS字フックの角度を変えたのです。変えた途端、紐がするっと外れて見事、取ることができました。Aさんはなんとも嬉しそうな、達成感溢れるような表情でした。Cさんはそれを見ると黙って入室の列に戻ろうとしましたので、不自然に立っていた私は慌てて呼び止め、Aさんと一緒に、BさんとCさんへの感謝の気持ち、Aさんの喜びを伝えました。
 最近、私が読んだ文献の中で、著者の今井和子氏(保育者としての20数年間の勤務の後、大学教授を歴任。現在は「子どもとことば研究会」代表)が、現代の子どもたちが今後生きぬいていくために必要とされる非認知能力の1つ、「自己肯定感」についてそれをどう育むかを語っておられます。「友達関係の形成により、人っていいな、人といると楽しい、という自己肯定感、すなわち他者信頼が芽生える。自己肯定感を育むのは、人としての心の土台が築かれること。」と。日々、園生活の中で生まれる様々な出来事を通し、1人ひとりが、人としての確かな土台を築いていくことのできるよう、「人っていいな、人といると楽しい」と実感できるよう、私たち保育者は支援していきたいと思います。

園長 森下美由紀

10月

「こども園の安心・安全 ~家庭と共に~ 」 
 
 夕暮れが早くなり、園周辺でも秋の涼しげな虫たちの合奏が聴かれるようになりました。一日の中ではもちろんですが、日によっての気温差を感じることも多く、体調管理が難しい時期でもあります。子どもも大人も、健康に留意して過ごしていきたいですね。
 さて、先月九月を振り返ると、「園の安心・安全」について考える機会が大変多く与えられました。まず、九月二日の大雨による園周辺の避難指示を受けての園内避難。そして、八日にご協力いただきました、引き渡し訓練。その後の、台風十五号による被害です。園が所在する浜松市東区「長上地区」は、市内有数の大きな川と川の間に位置し、それぞれの川の、氾濫の危険性が高まったことにより、避難指示や安全確保の警報が発令されました。二日は開園時間内でしたので、該当する川の状況が見えない中、情報収集をし、万が一を想定して、全園児二階での保育に切り替えました。台風十五号が通過した翌日は、園自体は大きな被害はなく、土曜保育を通常通り開園出来ましたが、園から少し歩いたところでは、台風の大きな爪痕が残されていることを知り、園が被害を受けることもあり得ることを実感しました。園で毎月一回実施する避難訓練ですが、園の立地柄、一年に一回は冠水の避難訓練を計画しており、ちょうど十月がその予定です。(七日に実施予定。)今回はより実際を想定して実施出来ることと思いますので、子どもたちと共に改めて防災について考え、職員間では、今後の園の、一層の安心・安全のための課題を見出していく所存です。
 また、引き渡し訓練を終え、発行しました「ひかりの子だより~防災特別号~」について、ご感想やご質問をお寄せくださり、ありがとうございました。祖父母様にもお渡してもらえるように、両玄関に置いています印刷物も、こちらの想定以上に多くの方にお持ちいただいたことが分かります。保育時間中の被災時は、職場にいる保護者の方が大半で、園の状況をどのように発信できるのか?メール配信も活用しますが、そもそもメールが出来る状況なのかどうかも不明です。また、メール配信が出来たとしても、すぐにメールが確認できる状況にない保護者の方もいらっしゃることでしょう。そのような状況下で、保護者の皆様に少しでも安心していただくために、また、子どもたちが出来る限り不安少なく、保護者のもとに引き渡しできますように、園として出来ること、すべきことを考えてまいりたいと思います。
 静岡県内で発生しました、バスの置き去り事故についても、園として現状を見直し、整理しました。園児の人数把握は、大切な一人ひとりのお子様をお預かりしている園職員として、基本中の基本ではありますが、それがあまりに機械的になってしまうことは避けたいと考えます。子どもたちの遊びの保障をしながら、時に子どもの声や思いに向き合い、一人ひとりの安全確保をしたいものです。必要に応じて、子どもたちが並んで人数確認することも多いわけですが、それ以外にも、〈園庭から保育室に入る時には、室内に持っていく約束になっている水筒〉や、〈靴箱に靴があるかどうか?〉など様々なツールで把握できることも職員間で確認し合いました。又、今回の事故を機に、先日静岡県が開催した安全管理講習にて、常葉大学教育学部生涯学習学科の木宮 敬信教授の講義を聴講しました。「園の安全は、安全管理と安全教育が車の両輪となって保障される」とのお話に、管理だけでなく、子どもたちへ伝えること、確認していくことの必要性も改めて感じました。私たちが責任もって安心・安全を保障することは当然のことですが子どもたちへの安全教育も併せて行い、また、保護者の皆様の協力もいただきながら、進めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 最後に、台風十五号により被災され、今もなお、不自由な生活を送っていらっしゃる方々が、私たちの身近にも多くおられることと思われます。心よりお見舞い申し上げ、復興をお祈りいたします。

園長 森下美由紀

9月

「お互いが大切な存在」

夏の暑さも和らぎ、心地よく感じられる秋風に、季節の移り変わりを感じます。猛暑の中、なかなか園庭遊びに出てこられずにいた子どもたちの賑やかな声も、再び園庭から聞こえてくるようになってきました。
 8月初旬のある日の朝、「Aくーん!誕生日おめでとう!4歳!4歳!」事務所まで、こんな明るい声が届きました。思わず声のする方に目を向けると、全身で喜びを表現する、A君と同学年(隣りのクラス)のB君のおじいちゃん。登園時刻が同じで、毎日顔を合わせることで身近な存在となっているのでしょうが、ご自身のお孫さんだけでなく、その友達の誕生日もお祝いしてくださるその温かさに大変嬉しく、微笑ましく思いました。実はこの光景は、私たち職員が今年度の始まりに思い描いた理想的な1場面でもあったのです。「玄関の誕生日ボードを、どのようにしようか?」そんなところが話の発端でした。「誕生日ボードの意味って何?」「どうして玄関に飾るようになった?」「誕生児の紹介はクラスだよりでもしているよね?」そんなところから私たちがそれぞれに込める思いを確認し合いました。そして今年度の誕生日ボードのレイアウトが決まり、クラスだよりはこれまで月末発行だったものを毎月1日発行に変更しました。『こども園在籍中に迎える何度かの誕生日。家庭的な雰囲気の中で、友達や職員だけでなく、各御家庭でも個々(主にはクラスメイト)の誕生日に思いを馳せてもらえたら。』というのが私たちの願いでもありました。コロナ禍で人との関わりが希薄化する今、これまで以上に、家族以外の人と遊んだり、関わったり、また、お祝いされたり、そんな経験も少なくなっていることでしょう。しかし、子どもたちの育ちにとっては経験したいことの1つです。
 また別の日には、私が保育室に足を運んだ際、胸についた〈誕生日バッジ〉を「見て!」と言わんばかりに無言で胸を張る4歳児のC君。さらにある日は、誕生日にもらったお祝いのカードを、翌朝も持って登園する2歳児のDちゃん。誕生日って特別で、嬉しい日。そんなことを素直に表現する子どもたちの姿は、こちらまでも喜び溢れた思いになるものです。
聖隷こども園ひかりの子では、誕生日当日、もしくは、その前後でクラス毎にお祝いをします。以前は、月に1回、皆でホールに集い、その月に生まれた子どもたちが前に並んで、お楽しみを見て…という誕生会を開催していたようですが、折に触れて見直す中で、1人ひとりの誕生日、その日をお祝いしようということになりました。4,5歳児クラスでは、1クラス20名ほどの友達の前に、1つだけ椅子が用意され、誕生児はそこに座ります。友達がお祝いの歌を歌ったり、質問をしたりして会が進みます。カードに添えるために毎年お願いしている保護者の方からのお子さんへのメッセージも、皆の前で読ませていただいています。そして最後に、その子のことをみんなで祈ります。保護者の方からのメッセージはもちろんのこと、様々な内容を通して、園目標でもある「お互いが大切な存在であることを知る。」…それぞれが愛され、大切にされている存在であることが伝わり、実感する経験が積み重なっていくことでしょう。大切な1人ひとりが生まれた嬉しい、喜ばしい日。ささやかながら園でもお祝いし、子どもたちと、そして保護者の皆様とも喜び合い、共に過ごしていきたいと思っています。     
(※誕生日バッジは、安全面も考慮の上、3歳児以上のクラスで付けています。)

園長 森下美由紀

8月

「お泊り保育」                             
 暑い毎日が続き、プールや2階のテラスでは、子どもたちが水遊びに夢中になっています。水と戯れる子どもたちの表情。なんとも良い顔ですね。日本国内の感染症拡大が急速化し、不安を抱く日々です。子どもたちに色々なことを経験させてあげたくても、数年前のようにはいかないもどかしさや、いつどこで感染するかわからない緊張感も高まりますが、そのような中で少しでも、それぞれのご家庭が楽しみを見出し、健康に過ごせたらと祈らずにはいられません。7月末に予定していました夏まつりも、開催1週間前に、参加対象を全園児から幼児クラスのみに変更。そして、前日に園内の状況から延期と決定いたしました。本来「雨天中止」と計画していた行事を「延期」とし、疑問を持たれた保護者の方もいらっしゃるかもしれません。ただ、当日までを楽しみに待っていた子どもたち、また、保護者の皆様の様子を身近で感じていた職員が一丸となり、何とか開催したいと出した結論です。「雨だから中止だね」は子どもにとっても多少納得できるかとは思いますが、目には見えないウイルス(感染症)を理由にすることはなかなか難しいことです。親子で経験していただく行事がこれまでも中止となってきた園の経緯も含めて決定しましたこと、ご理解いただけましたらと思います。
 さて、7月の上旬に、そら組(5歳児)のお泊り保育を行いました。金曜の朝、登園をしてから園に1泊し、翌朝保護者の方にお迎えに来ていただく全26時間ほどを、友達や園の職員と過ごします。<友達と力を合わせて取り組む達成感が得られること>や、<家族と離れ、そのありがたさ、存在を再確認すること>を目的とし、午前中は園外に出て、グループの仲間と探検に。そして昼過ぎよりクッキングを始めて、夕飯のカレーがグループごと4つの鍋に出来上がりました。様々な活動を通して、当日を楽しみに待ってきた子どもたちですが、この夕飯づくりひとつとっても、当日までの日々の中で、グループごとに何をカレーに入れたいか相談し、買い物へ。(感染症対策で、実際の店舗には行けず、園内に「おばけマート」が開店しました。)買い物先で、他の商品が目に付き、「これもカレーに入れたい!」とそこでも相談が繰り広げられました。あるグループはリンゴを入れ、その他、ナス、コーン、きのこ…と、当日、4つのグループそれぞれにオリジナルのカレーが完成したのです。夜は友達と協力して布団を敷きました。外が暗くなり、いつもの園生活と雰囲気も変わると、「ママに会いたい。」とAさん。寝る前のお家の方からの手紙に涙するBさん。(手紙には、Bさんへの愛情がたっぷり感じられるメッセージが込められていました。)それでもずっと涙している訳ではなく、友達の手紙に耳を傾けたり、また、消灯するとあっという間に眠りについたりしたのには、周りに居てくれた友達の存在と、その日1日、存分に遊んだ充実感とがあったのだろうと推測しました。翌朝のご家族のお迎え。ご家族を見つけて「ママー!」と手を振る子どもたちの姿からは、安心と再会の喜びとが感じられ、今年のお泊り保育が終わりました。
保育・教育の場面では、こんな風に子どもたちとのエピソードがたくさん生まれます。子どもたちは、人と関わりながら様々なことを感じ、学んで達成感や充実感を得て成長しています。今回はお泊り保育について記載しましたが、行事当日が特別なものではなく、日々の生活の中での経験・育ちを大切にすることで見えてくる子どもの姿は大変喜ばしいものです。どの年齢に於いても、今この時、それぞれに必要と思われる心身両面の育ちを、今後も援助し、支えていきたいと思います。

園長 森下美由紀

7月

「花の日・こどもの日」
 今年は異例の早さの梅雨明けとなり、暑さ厳しいほどの日々が続いています。昨日、今日と各部屋で「プールはじまるよ」の会をもち、本格的な水遊びもスタートしました。年齢の大きな子どもたちは、これから始まるプール遊びに期待をもち、早く水着に着替えたくて仕方のない様子。小さな年齢の子どもたちは、水たまりのようなプールに座り込み、水面を叩いて笑顔を見せる子もいれば、一方で、これまでと様変わりした二階テラスの雰囲気に戸惑い、「部屋に戻りたい」と保育者に主張する子もいるなど様々です。今年も個々のペースで、夏の楽しみに触れていくことができたらと願います。
 さて、先月の「花の日」には、ご家庭に咲く花をお持ち寄りくださりありがとうございました。色や形、大きさ、香り…それぞれに違うたくさんの花に囲まれて、礼拝の時をもちました。キリスト教行事の花の日は「こどもの日」とも言われます。花と同じように、それぞれに個性を持ったこども一人ひとり。その個性はどれも素敵で愛らしく、存在そのものが周りを和ませてくれます。「花の日・こどもの日」には、日頃の感謝を周りの人たちに伝えるべく、4,5歳児クラスは近隣宅や園医さん、交番や近くの小学校などに向けて、「ありがとう」のカードを作成してくれましたが、今回の花の日、花(こども)に囲まれて過ごすことの喜び・感謝を子どもたち以上に改めて感じられたのは、私も含めた保育者自身だったかもしれません。
それは、1歳児2クラスでのこと。こりす組では、礼拝をまもろうと、職員が花を次々と部屋に持ち運び、机の上に並べました。それまで遊んでいた子どもたちは身を乗り出すように、また手を伸ばしてたくさんの花に興味をもっているようでした。Aさんはお家の方との経験があるのでしょうか、自然と自分の鼻を近づけます。Bさんは、ガーベラの花を何度も指さして、すると思わず花びらに触れてしまってびっくりしたのか、大きな瞬きをしました。その表情の可愛らしかったこと。りす組は、子どもたちが園庭遊びをして室内に居ない間に、いつもの保育室に花を集めておきたいと担任が計画しました。帰ってきて、入室するなり花に走り寄る子どもたち。密を避けるために、室内のいくつかの場所にテーブルを置き、花を飾りましたので、Cさんは、2つのテーブルの行き来を繰り返していました。テーブルに飾ってあったからか、自ら椅子を運んできて、花の前に座る子がいると、僕も私もと椅子を持って来て座る子が複数名。Dさんは同じ花の前から離れようとせず、Eさんは「いっしょ!」と同じ色の花を見つけて保育者に伝えます。私たち保育者はそんな1人ひとりの花との関わりに寄り添う時を頂くことが出来たことに喜び・感謝を覚えたのです。
大きな集団である園生活に於いて私は、ある1つのこと(活動)に、クラスの全員が興味を持たなくても良い、興味を持てない子が居ても良いと考えます。(とは言うものの、特に幼児クラスでは、保育者の思い描く短期的・長期的な計画の中で、いかに子どもに興味を持ってもらうか?が保育者としての醍醐味の1つだとも思っています。)それでも今回、1歳児クラスの子どもたちでさえ、誰もが興味を持ち、関わりを喜ぶ姿に、改めて「花」「こども」の魅力を実感しました。ひかりの子の園目標の1つ、「1人ひとりの違いに気づき、お互いを認め合いながら共に主体的に生活する」を、このような保育・教育の実践を通して、今後も実現させていきたいと思います。

園長 森下美由紀

6月

「大切な1人ひとり」
 青く晴れた空の下、園庭には子どもたちの元気な声が響き渡っています。木の実を拾い集めたり、時にはジャンプしてもぎ取ろうとしたり、1ヶ月程前は、園庭入口の河津桜に集まっていた子どもたちが、最近は、園庭1番奥の畑入口付近にて、ダンゴ虫探しに夢中になっていました。季節の移り変わりの中で、自然と関わりをもちながら過ごすことができる日々を嬉しく思います。
 さて、園内の感染症発生につきましては、引き続きご心配をおかけしております。1年前の5月末日、1日の全国新規感染者数は、 1791名。昨日は22022名と10倍以上です。これは流行中の変異株の特性によるものも大きいかとは思われますが、今や、誰がどこで感染してもおかしくない状況となってきているのは数字を見ても明らかです。そのような中で私たちは、子どもたちの健やかな育ちと、安心、安全を第1に考え、そして第2には、就労を理由として利用されています保護者の方が大部分を占める、幼保連携型認定こども園としての役割を認識して、園運営を考えております。今後、園内での感染拡大が懸念される場合には、登園自粛や、休園または部分休園(一部のクラスのみ。その時には、該当クラスの保護者の方々にお知らせしますので、これまでよりも情報開示の量が増えることになります。)のお知らせをすることとなりますが、まずはこれまで通り、継続して保護者の皆様と共に、予防対策、感染拡大防止対策に努めて参る所存です。どうぞよろしくお願いいたします。なお、マスクの着用については昨今、国内にて様々な議論がなされてきました。国・県等の発表を受け今後の対応を検討しています。詳細については後日改めてお知らせします。
 5月の第2日曜日は母の日でしたね。そして今月は父の日を迎えます。園では、それぞれのお子さんに応じて、話をしたり、歌を歌ったりして、両親の存在に気づき、そこに思いを向ける時を過ごしています。そんな中で私たちが1番子どもたちに伝えたいのは、「1人ひとりに、お父さんがいて、お母さんがいる。お父さんもお母さんも、あなたのことを大切に思っているよ。愛されているんだよ。」ということです。おじいちゃん、おばあちゃんやおじさん、おばさんが身近な存在のお子さんもいますね。また、日々一緒に過ごさせていただいている私たち保育者も含め、たくさんの人に愛される『大切な1人ひとり』であることを、大人の言動を通して伝えたいと思っています。それらを基として、幼保連携型認定こども園教育・保育要領にもあります、乳児(0歳児)期の、身近な人と気持ちが通じ合う・身近なものと関わり感性が育つ経験を重ね、一歳児以上の年齢では、他の人々と親しみ、支え合って生活するために、自立心を育て、人と関わる力を養う。このような育ちの支援をすることが、私たちの園目標でもある「愛されて愛するこころを知り、お互いが大切な存在であることを知る」とも繋がることと考えます。最後に、私たち大人も「大切な1人ひとり」です。是非ご自身を大切に思い、お労りくださいね。

園長 森下美由紀

5月

「広がっていく視野」 
 新年度が始まり1ヶ月が過ぎました。今年の春は寒暖差が激しく、天候も不安定で、私たち大人さえも過ごしにくい気候に戸惑うことも多かったのではないでしょうか。初夏を迎え、新たな季節に向かっていくこの時期、連休明けの感染症拡大も不安なところではありますが、健康に留意して過ごしていきたいものです。
さて、聖隷こども園ひかりの子では幼児クラスを中心に、1週間の始まりに礼拝の時を持ちます。お祈りをするだけでも、歌を賛美するだけでも礼拝ですので、正確には「どのクラスのお子さんも」1週間の始まりに、また、折に触れて礼拝の時を持っていることになりますが、教会(ひかりの子とつながりのある教会が、この左に毎月、メッセージを寄せてくださる、日本基督教団 遠州教会/浜松市中区紺屋町 です。)のような形式で進行される礼拝を毎週まもるのが幼児クラスです。この礼拝では、子どもたちに聖書の御言葉を届けられるように、私は毎週聖書を子どもたちの前で開きます。「先生、今日も聖書、持ってきたね。」と子どもたち。4月のある日の礼拝では、『最後の晩餐』で、弟子たちの足を洗ったイエス様の話をしました。その物語に加えて話したのが、私たちひかりの子が属する法人、聖隷福祉事業団のシンボルマークについてでした。マークの外側の二重円は、弟子たちの足を洗ったたらいです。〈法人のマーク〉と言うのは、子どもたちには少し難しいような気もしましたので、〈ひかりの子のマーク〉として、「どこかで見たこと、ある?」と聞いてみました。様々な回答が返ってきます。その日の礼拝は、「ひかりの子の外や中に、このマークがあるはずだから、見つけてみてね。」と結びました。それ以降、子どもたちは時々教えてくれます。「先生、見つけたよ!」と。その話をしてから2週間近く経ったある日にも、年長のAさんが声を掛け、見つけた場所を細かに教えてくれました。話を受け止め、視野を広げてくれたことを、とても嬉しく思いました。
ある日の1歳児クラスでは、Bさんが絵本を1冊手にして、私の膝に座りました。絵本を読み進めると、出てきたビスケットに手を伸ばし、食べるように口に運びます。ふと目の前や隣に、友達がいることに気づいて、自分が食べた物とは違うビスケットを1人、また1人と分けてあげ、友達が食べる仕草をすると嬉しそうに笑います。
また、2歳児クラスでは、園庭での遊びを終えて、担任より先に部屋に入った2人が、牛乳パック4本程を繋げて作った小さな椅子をせっせと運び、2人で顔を見合わせながら、目的の場所に置くと、1人がその上に立ち、手を伸ばして、その椅子の上で背伸びまでして、それまで暗かった部屋の明かりをつけてくれました。
4月に入園されましたお子さんはもちろんですが、進級した子どもたちも含め、1人ひとりが新たな環境の中で視野を広げ、そこに楽しみや喜び、意欲を見出して過ごしています。保護者の皆様には、どうぞ安心して大切なお子さんを預けていただけたらと思います。不安や疑問など、ありましたらいつでもお声がけください。今月もどうぞよろしくお願いいたします。

園長 森下美由紀

4月

「入園進級おめでとうございます」
 「みて!さいてる!」園庭のチューリップが一斉に咲き揃い、暖かな陽気の中、子どもたちの喜びの声が聞こえてきました。本日より2022年度のスタートです。お子様のご入園、ご進級を心よりお喜び申し上げます。
3月に年長児39名がここ、ひかりの子を巣立ち、小学校に向けての第1歩を歩み始めました。そして本日、37名の新入園児をお迎えいたしました。これから、共に『ひかりの子』として歩んでいきましょう。新たな出会いに感謝いたします。また、昨年度末には保護者の皆様のご協力をいただき、年度末研修会および新年度準備を行うことができました。お忙しい時期に家庭保育のご協力をありがとうございました。
 この年度末の期間、私たちは毎年、同じ理念のもと、同じ園目標を掲げた聖隷こども園・保育園(浜松・磐田・宝塚・奄美)の仲間とともに研修を行い、立ち止まって考える、振り返る機会をもっています。今年度の講師は昨年度に引き続き、井桁容子先生でした。(東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学非常勤講師を務められ、現在は、非営利団体コドモノミカタ代表理事)〝これまで「できる」ことを目指してなされてきた日本の教育・保育に今、求められているのは、心を育てることであること、それは具体的にどのようなことであるのか?〟が示された昨年の講義に続いて、今年度は、『共感から子どもと関わる保育』という演題でお話を伺いました。昨年度ここでご紹介しました、一人ひとり違う個性をもった子どもを花に例え、「一括りに〝花〟と言っても、色や形、香りは様々で、それぞれ必要とする水分量も、日射量も、栄養分も違う。」というお話は、一人ひとりを理解し、それぞれに適した関わりをすることが心を育てることにつながるという再確認ができました。それに加え今回は、「ダメダメ期をいいね!期に変えよう」とのお話が印象に残りました。子どもの様々な言動は時に大人にとって困った行動に見えることもあるかもしれません。そんな時、ついつい「ダメ!」と言ってしまいがちですね。でも視点を変えて見ると「いいね!」とも思えることがないでしょうか?私はその話から、我が子のこれまでのイタズラの数々がすぐに思い浮かびました。トイレでトイレットペーパーをひたすら引き出して、それはそれはいい顔をして遊んでいたこと・・・出しても出しても引き出せるその快感や面白さに気付いたことは、ある意味「いいね!」です。子どもの行動を(どうしてなんだろう?)(どうしてこんなこと、するんだろう?)その視点こそが〈共感〉につながるのだろうと思います。
 共感から子どもと関わるとは具体的にどのようなことだろうか?井桁先生の話から、職員間で考え合い、2022年度を迎えることができました。今年度も園目標を基に、教育・保育を展開し、保護者の皆様とお子様の成長を共有していきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

園長 森下 美由紀