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健やかな育ち

 5月の風が、爽やかな花の香りを運んできてくれるようになりました。日によっては日差しが照りつける夏のようなときもあります。子どもたちの健康状態にも留意しながら、安心して遊び込める環境を作っていきたいと思います。
 新年度を迎え新しい環境の中で喜びや不安が様々な場面で見られますが、新入園児はもちろん、在園児のお子さんも、驚く程に日々成長しています。一人ひとり一日一日様々なことを感じ、自らやってみることを積み重ね、認められる環境の中で少しずつ安心して過ごせるようになってきました。子ども達の素晴らしい力にたくさん出会った4月。その中で自分自身の心の状況を理解し、クラス、お友達のことを考えて行動したAさんのエピソードを紹介します。
 新年度が始まり2週間目の事でした。午後のおやつ後4歳児のAさんが一人廊下にいました。私と目が合うと始めは目を反らしていたのですが、「どうしたの?」と声を掛け膝に入れると目が涙でいっぱいになっていくのがわかりました。お部屋の扉が閉まっていたため、急いで部屋を覗き担任とアイコンタクトで確認すると、Aさんのことを把握できていることがわかりました。「Aさんはどうしてここにいるの?」「先生とお話したの?」等と問うと、「みんなの楽しい気持ちが駄目になっちゃうから…」「まだここにいるの」と言ったのです。びっくりし、確認をするかのように話をしていくと、ぽつりぽつりと教えてくれました。椅子が無く困ったこと、先生が「こちらにもあるよ」と椅子を出してくれたこと、しかし見付けられなかったことが嫌(辛く)で泣けてしまったこと、だから自分で廊下に出て来て扉を閉めたこと…Aさんの友達やクラスの仲間を思う気持ちに驚かされ、ぎゅーと抱きしめ「Aさんありがとう、クラスの皆のことを考えてくれたんだね。」と言うと少し照れくさそうにしっかり私の目を見て「黄組さんと青組さんだから」と。その後、話をしていると笑顔が戻ってきました。そして自らお部屋に行き、友達の輪の中に入って行ったのでした。4歳児は縦割りクラスで生活をしていますので、4、5歳児が共に過ごしています。一日の最後にお友達と今日の楽しかったことを振り返っていたため、自分の乱れた気持ちが、クラスの雰囲気を壊してしまうと思ったのでしょう。Aさんが考えた行動は、隣にいるお友達を大切に思う姿でした。子ども達は子ども達同士、時には大人も及ばない共感と連帯で励ましあい、成長していきます。
 毎日の毎日の園生活の中で、子どもや保育者の笑顔に出会わない日はありません。保育はいつも子どもの生きるエネルギーで溢れています。日々繰り広げられる子どもを取り巻く小さな出来事は、ぴょんぴょん跳び上がるほど嬉しいことも、涙をぐっとこらえる悲しいことも、数えきれないほどたくさんあります。そしてどの出来事も一度きりです。「すべての子どもの健やかな育ちを家庭と連携して支援していく」(保育所保育指針より)とは、まさにこうした子ども達の日々の出来事と確かな育ちを、園と家庭で喜び合うことから始まっていくのだということを痛感した4月でした。各クラス毎日ドキュメンテーションを配信させいただいております。遊びを通した子どもの姿や言葉、保育者が考察を加えて、どのような学びや育ちがあったのかを可視化できるように学びを重ねています。保育のねらいや保育者の思いも具体的に伝え、安心していただけるようにお子様達の園での様子を様々な形で共有、共感し、保護者の皆様と共に子育てをしていきたいと思っております。   
                                         園長 梶山 美里