7月に入り、暑さが一段とます今日この頃。子どもたちは目をキラキラと光らせながら、水遊びを楽しんでいます。この時期に、夏ならではの様々な水の感触を体験できたらと考えています。休息を取りながら、体調管理に気をつけて過ごしていきます。
こうのとり保育園の2階には子育て支援センター「エンジェル」があり、地域の子育て家庭の皆さんが毎日利用して下さっております。先日、大人気のエンジェルリトミックの様子を覗くと、大きなパラバルーンを使って遊んでいました。パラバルーンのふんわりとした不思議な動きを赤ちゃんと共感しようとお母様たちが様々な関わりをされていました。講師の芳川先生は、お子さんがバルーンの動きを目で追えるように、また自ら手を出せるようにとお母様たちの主体性を認めながらさりげなく姿で示しておりました。入園前のまだ小さな赤ちゃんの力を見せていただくことができました。
なぜ子どもに主体性が必要なのでしょうか?ある海外の研究では、2007年に日本で生まれた子の半数が107歳より長く生きると推計されており、日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えています。これを基に、現在は「人生100年時代」と言われます。100年という長い期間をより充実したものにするためには、乳幼児期から、幼児教育、小、中、高等学校教育、大学教育、更には社会人の学び直しに至るまで、生涯にわたる学習が重要となり、必要な力が「社会人基礎力」と言われています。「社会人基礎力」とは、人生100年時代、自分らしいキャリアを生きるために必要な力を示したもので、経済産業省により定義された概念です。現在は、AIの登場もあり、学校で学んだ知識がその後の人生において一生通用していくとは考えられなくなりました。このような社会の変化や、先を見通せない社会に適応していくため、新しいことに挑戦したり、課題解決に取り組むことが求められています。そのため、就学前から状況に応じて子ども自身が目的を果たすために何をすべきか考え、自分の意思で臨機応変に行動できるような力、いわゆる「子どもの主体性」を育てる必要があると言われているのです。主体性を育む教育は、持続可能な社会の担い手を育てる観点から、また個々人のwell-beingを向上させ、より豊かに生きる力をあたえるためにも重要になってきます。函館短期大学教授 咲間まり子氏が「人生100年時代の社会人基礎力」を「子どもの主体性」に置き換えられていましたので、紹介します。「前に踏み出す力」(アクション):指示待ちにならず、自分の考えを実行するため、他人を巻き込み、目的に向かって行動することです。これは、子ども自身が目的を果たすために一歩前に踏み出すことに繋がります。「考え抜く力」(シンキング):自らの考えを実行するため課題に向かって、解決方法を考えていくことです。これは、子ども自身が一歩踏み出すために何をすべきかを考えることに繋がります。「チームで働く力」(チームワーク):多様な人々との繋がりや協働を生み出す力です。つまり子ども自身が自分の意思で行動を決定するためには、何をすべきか考え、自分の考えを分かりやすく伝えるためのコミュニケーション力や、グループ内の協力が非常に重要になるということです。
エンジェルリトミックの講師の先生がお母様達の主体性を認めたように、保育者自身も主体性を考えて、保育に関わることが必要です。保育者は日々の保育の中で、子ども達の意欲や関心等の主体性を引き出していくことが大切です。そのためには、子どもの行動をよく観察し、必要に応じては支援しますが、温かく見守ることが重要です。そしてできた時にはたくさん褒めて子どもに自信を持たせることが大切です。AIでは難しい、自分で考え、行動する「主体性」は、子どもが大きくなり社会に出た時、主体性を持って人生を歩んでいけるための重要なキーワードです。子ども達が自分の意志で主体的に遊ぶことができる環境を整え、遊びを通して好奇心や探求心を養い、集中力、工夫する力、創造する力、想像力、最後までやりとげる力、コミュニケーション能力など人間として生きていくために必要なさまざまな力を獲得していけるよう職員一同学びを深めていきたいと思います。遊びによって育つ力が一つ一つ集まり「生きる力」が形成されていきます。人生100年時代、子ども達が安心し、希望と期待を持って夢を語ることができるように、子どもと共に保育をつくっていきたいと思います。
園長 梶山 美里