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~年長組の田植え活動より~

園長 大塚麻紀子
5月29日に、東海地方の梅雨入りが発表されましたね。5月の梅雨入りは10年ぶりだそうです。
31日の田植え予定日の予報は雨が上がる日で安心していました。しかし、当日朝の雨降りで不安定な天気の時期を実感。いろいろな人に相談をし、天気図の雲の切れ間と空の明るさで雨は上がりそうと判断し決行しました。開始早々のポツポツ雨粒もすぐに止んで曇り空での作業となり、逆に日差しに苦しめられることがなかった分、スムーズに行えたと感じました。また肌寒さを感じないよう時間的考慮をしつつ予定通り実施できたこと、そして何より地域の方々はじめ、呼びかけに応じてボランティアとして参加してくださった保護者の方々のおかげだと感謝の気持ちでいっぱいです。ひまわり組の子どもたちはもちろん、当日一緒に体験・交流をした聖隷こども園こうのとり富丘の年長組の子どもたちも、「たのしかった」と言っていました。
田植え作業にかかわった職員から、こんなエピソードを聞きました。
泥の田んぼに入るのが嫌だったAちゃんと、誘いかけをしていたその職員本人のやり取りを見ていた地域の方が、「まぁまぁ、やる気になるまでちょっと待とう、嫌ならそこで見ていて」と声を掛けて、見守ることを提案してくれました。そしてそのまま苗植えを続けつつ、Aちゃんがじっと観察する様子を伺いながら絶妙の頃合いで、「1つやってみる?」と尋ねると、「うん」と応じ、Aちゃん自ら田植えをはじめたそうです。その様子を見て、「これで大丈夫」と地域の方が言ったとおり、その後Aちゃんは次々に苗を植え始め、終わりの頃には「もっと(苗)ちょうだい」と言うほどに生き生きとした表情と意欲的姿勢の変化があったようです。
その職員は、子どもの様子を見ながら作業を続け見守る感じや、タイミングを見極めて声を掛けることの自然なかかわり、数少ない言葉かけで、子どもが自ら動き出すきっかけになったこと、子どもを信じて待つ温かいまなざし、地域の中で育つということ、地域交流の良さ、また子どもの主体性を信じて待つということを改めて実感したそうです。担任にもこの話をすると、Aちゃん自身も「はじめはいやだったけど、やっているうちにたのしかった」と田んぼでの出来事を語っていたようで、心は達成感と充実感で満たされていたようです。
子ども自身が考え理解納得して行動に移すまでは、一人一人タイミングが違います。保育者は皆で行う活動では、そのタイミングのズレが生じるのは当たり前と分かりつつも、少しでも早く安心して一緒に参加できたら・・・と思い、強引にならないよう最大限配慮しながらきっかけを作るための誘いかけをします。それも大事なことですが、子どもが自分で見て「大丈夫」と確信するまでかかる待つ時間は、意外とそう長くないものでもあります。その確信をその子のタイミングで得た方が、自信も意欲も確かなものとして子どもに根付くことを、保育をしている中で出会う様々な場面で子どもたちが教えてくれます。田んぼでの経験は、食について学ぶことだけでなく、乳幼児期に育ってほしい心情意欲の成長のきっかけがたくさん詰まっていて、まさに生きた学びの場であることを実感しました。
田植えが終わった後には、お風呂につかるように腰までつかっていた子どもがいて、楽しかった思いや終わってしまう名残惜しさを感じていたのでしょうか。その姿を微笑ましい気持ちで見守っていた大人たちのまなざしがとてもあたたかく、やさしさに包まれていて、とても幸せな気持ちになりました。