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自律

園長 平野春江
 アドベント(Advent)に入りました。アドベントは、降誕節または待降節と訳します。ラテン語でADは何々への「へ」、英語のtoであり、Ventは「来る」という動詞から変化したものでAdventを直訳すれば「来ること」「到着」です。クリスマスを待ち望むアドベントではいつもの日課の中にクリスマスならではの過ごし方が加わります。クリスマスツリーが飾られ、クランツの4本のろうそくは毎週1本ずつ灯りが灯されます。入口にはクリスマスリースやひいらぎも飾られ彩りが加わります。アドベントカレンダーを毎日めくっていくなかで、嬉しいクリスマスが近づいてくることを子ども達は気付いていきます。
 さて、今月は子どもの自律についてお話をさせて頂きます。当園は幼児の給食もクラス全員で一緒に食べることはしておりません。どういうことかと申しますと、それぞれのタイミングで遊びに区切りをつけて、席が空いていたら食べたい子から食べ始めております。食事の準備が始まると、遊びに区切りをつけて、早々に座って待っている子の姿もあります。みんな同じ時間に一斉に食事をしていた時は、保育者の「給食ですよ」の合図で全員が席について待っている姿がありましたが、同じ食事を待っている姿でも意味が違います。それは、保育者の「待っててね」という指示によって待っていることと、自分でおなかがすいたから早く食べようと思い、遊びに区切りをつけ、席を確保して自発的に待っていることの違いです。子ども達は自分のおなかのすき具合を自分で感じ、自分で時間を決めて食べています。しかし、保育の都合も色々あるため「〇時ぐらいまでには食べてね」と伝えてあります。このような方法を取り入れていますと、保護者の方から「給食を自分のタイミングで食べる形式で、自律が養われるのでしょうか。」との質問を頂くことがございます。一人ひとりに十分な遊びの時間を保障し、意思を尊重することを積み重ねていることで一人ひとりを大切にすることに繋がり、集団での行動が難しくなるということはないと考えております。なぜかと申しますと、誰かに指示されたから行動するのではなくて、日常の中で毎日自分で考えて行動することをしているからではないかと思います。そのことを裏付けるエピソードをひとつ紹介します。5歳児はページェント(降誕劇)の準備として役柄一つひとつについて担任と子ども達で絵本や聖書を読みながら、登場人物の気持ちや状況等について話をしております。子どもの声を拾いながらセリフに反映していくためです。その日、担任と男の子二人が話し合いをしていました。「この時、ヨセフさんはどんな気持ちだったのかね。」等と何冊もの絵本の言葉や、玄関近くのクリスマスコーナーに掲示してある聖書を読みながら30分程かけて話をしていました。途中、給食室の方からいい匂いが漂ってきました。A君が、「あ!唐揚げの匂いだ!楽しみ!」との声があがり、保育者も「そうだね。楽しみだね。」と応答しました。その日、5歳児は、家から持参した弁当箱に給食のおかず等を自分で詰めるという活動をする日だったのです。A君は、唐揚げの匂いに反応したものの、また直ぐにヨセフさんの話に戻っていきました。そして、話し合いが終わったとたんに、担任が何も言わなくても、急いで自分の部屋に戻り、手を洗ってエプロンと三角巾を身に着け、自分の弁当箱をもって食事の準備を始めました。その行動の速さに驚いたと共にとても楽しみにしていたことが伝わりました。話し合いの時に『早く食べたい』という思いがあっても、今はヨセフさんについて友達や先生と話をする時であるということを理解し、自分の気持ちをコントロールしていたことが分かりました。これこそが自律(自分をコントロールする力)ではないかとA君の姿から教えられました。A君に限らず、3歳児でも、空いた席に座る時には隣に座っている子に「ここいい?」と自然と声をかける姿が見られます。大人が相席を利用する時にマナーとして使う言葉です。自律心や社会性は集団で一斉に行動することで養われるということではなく、一人ひとりが大切にされ、自分で考えていく経験の積み重ねにより育まれていくこともあると思います。