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「 瞬間の積み重ね 」

園長 平野春江
「生活の中で見たことを模倣しているのかな」
「何で首の所に掛けようとするのかな」
「首の所に掛けて物の大きさや長さを感じているのかな」
この会話は、0歳児Aさんの行動に対して理解を深めている複数の保育者の言葉です。
Aさんが直径7㎝の繋げて遊ぶ玩具に興味を示しました。遊ぶ様子を観察していますと、いくつか繋がっているものを首に掛けようとします。この動作は偶然なのか、Aさんなりに意図を持ってやっていることなのかを保育者は知りたくなり再びAさんに繋がっているものを渡してみました。やはり同様に首に掛けようとします。その後も繰り返し行う姿が見られました。試しに繋げたものをネックレスのように輪にして渡してみますと、輪にしたものは首に掛けようとはしません。この違いは?その場にいる担任同士がAさんの行動について共有します。そこでの保育者の見立てが冒頭に述べた会話です。はっきりとAさんの心持ちを理解したわけではありませんが最後には必ず「子どもって面白いね。子どもって凄いね。」と成長に喜びと敬意を示します。
 0歳児のBさんは、自力で立ち上がろうとする成長過程にあります。低い棚に両手をついて足の裏を床につけ力を入れていざ立ち上がります。ふらふらしながらも立ち上がることができると誇らしげに保育者の顔を見て『ほら、見て』と誘導します。保育者もBさんの思いを共有し「立てたね。凄いね。」と言葉を添えます。その後、座ろうとしますが、まだそこには怖さがある様子が伺えました。そこで保育者がさり気なくBさんのお尻を手で支えながら「大丈夫だよ。」と促すとその支えと励ましの言葉をもとにゆっくりと座ることができました。
 子どもは、日々成長を遂げています。それは小さなことであり瞬間の積み重ねです。保育者は生活や遊びの中で子どもの姿をよく観察しながら瞬間の育ちを出来る限り見逃さないように心掛けています。
 特定の保育者と子どもが結ぶ信頼関係の重要性は、保育の基本の一つです。特に3歳未満児には、特定の保育者との間に結ばれる愛着が重要となります。子どもが特定の保育者との間に結ばれる愛着によって情緒が安定し、それによって周囲への興味・関心が生まれます。そうして生じた興味・関心が子どもを動かし、子ども自身の主体的行動が始まります。体を動かすこと、周りの環境(玩具や身の回りのこと等)に働きかけること、そうした子ども自身の行動からはじまる直接的経験が子どもの発達を支えていきます。当園の乳児保育は、生活全般を特定の保育者が担う『ゆるやかな育児担当制保育』を行っています。流れる日課の中で、遊びは担任全員が見守りますが、生活面は特定の保育者が特定の子どもに対して継続的に関わるようにしています。
そのような中で子どもとの深い関係を築き、安心して園生活が送れるように援助しています。このような乳児期を過ごした子どもたちが幼児になり、主体性を大切にしながら自分で考えて行動することを生活や遊びの中でより多く経験できるようにしています。各年齢の保育室に成長・発達や興味・関心に応じた遊びの環境が設定されており、子ども自らが遊びを選択して夢中になって遊んでいます。また、幼児でも流れる日課を継続し、給食も時間に幅を持たせ、ある一定時間の中で子ども自らが遊びに区切りをつけて給食に向かいます。これらの教育・保育方法は、乳児であっても幼児であっても一人ひとりを大切にしたいという保育者の願いが根底にあります。そのことを常に心に留めながら子どもと共に保育を創り上げていきたいと思います。