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2013年6月

このページの目次


夏至

夏至今日と思ひつつ書を閉ぢにけり (高濱虚子)



2013.06.21

自宅の近所にファストフード店があると太りやすい!?

「American Journal of Public Health」(5月16日)に面白い記事が掲載されました。


 米国の黒人を対象とした研究で、ファストフード店が自宅の近くにあると、店が遠い 場合に比べてBMIが高いそうです。特に、低所得者はこれに当てはまるようです。

 黒人は糖尿病、心疾患などの肥満による悪影響のリスクが高いため、この知見は重要だ。研究を率いた米テキサス大学M.D. アンダーソンがんセンター医療格差研究部門助教授のLorraine Reitzel氏は、「アフリカ系アメリカ人、特に女性は他の民族集団よりも肥満率が高い」と述べ、黒人のBMIに寄与する因子についての情報は、医療格差防止のための政策や介入に役立つはずだと説明している。

 今回の研究では、1,400人強の黒人成人を対象とし、年収(4万ドル以上か、それ未満か)によって2つのグループに分けた。子どもの有無、性別、年齢、運動、教育など、BMIに影響を及ぼし得る因子を考慮に入れ、さらに、被験者の自宅からファストフード店までの距離――自宅から800m・1.6㎞・4㎞以内にあるファストフード店の数を分析した。Reitzel氏によると、世帯収入を考慮してファストフードの利用性とBMIの関連を調べた研究は過去に見られなかったという。

 その結果、被験者の自宅から800m以内に2.5軒、1.6㎞以内に4.5軒、3.2㎞以内に11.4軒、8km以内に71.3軒のファストフード店があった。収入に関わらず、自宅から店までの近さと高BMIには有意な関連がみられ、距離が1.6㎞離れるごとにBMIは2.4%低下した。また、低所得群では、自宅から800m、1.6㎞、3.2㎞の範囲内にあるファストフード店の数が多いほどBMIが高かった。

 「時間に追われる人は、なるべく少ない時間で用を済ませようとするため、食べるものの選択にもその影響が及ぶと考えられる」とReitzel氏は説明している。また、低所得者は移動手段がないため、自宅近くにファストフード店があると利用しやすくなると著者らは指摘し、自宅から8kmの範囲では店の数とBMIに有意な関連がみられなかったのも、それが理由であると考えられると述べている。この研究は、「American Journal of Public Health」オンライン版に5月16日掲載された。


BMI(Body Mass Index)とは、体重と身長の関係から算出される、ヒトの肥満度を表す体格指数である。BMIの計算式は世界共通であるが、肥満の判定基準は国により異なる。WHOでは25以上を「標準以上(overweight)」、30以上を「肥満(obese)」としている[2]。日本肥満学会では、BMI22の場合を標準体重としており、25以上の場合を肥満、18.5未満である場合を低体重としている。



2013.06.13

終末期の医療と介護に関する松山宣言

 2013年03月30日・31日の2日間、愛媛県松山市に於いて、第15回日本在宅医学会が開催されました。

 その会において、「終末期の医療と介護に関する松山宣言」が発表されました。「多死社会を迎え、避けられない死から目を背けず、患者にとって幸せや生き方に向き合う医療と介護を提供しよう」を基本スローガンとし、以下の5つの提言が行われました。


●住み慣れた自宅や施設で最期を自然に迎える選択肢があることを提案しよう。
●治すことができない病や死にゆく病に、本人や家族が向き合える医療と介護を提供しよう。
●本人や家族が生き抜く道筋を自由に選び、自分らしく生きるために、苦しさを緩和し、心地よさを維持できるよう、多面的な医療と介護を提供しよう。
●最期まで、本人が自分らしく生きることができるよう適切な医療と介護を提供し、本人や家族とともに歩んでいこう。
●周囲の意見だけで選択肢を決定せず、本人の生き方や希望にしっかり向き合って今後の方針を選択しよう。



2013.06.12

常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎の治療薬

 2013年05月08日付の本ブログに於いて、常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎について記載しました。

 日本医師会雑誌の今月号(2013年第142巻第3号)に常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎の治療薬についての記事が載っていましたので、御紹介します。

 治療薬として用いられたのは、ヒト抗利尿ホルモン(バソプレッシン)の受容体拮抗薬である「トルバプタン」です。Torresたちは常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎の患者1445名を対象とし、トルバプタン投与群とプラセボ(偽薬)投与群とに分けて3年間経過を観察しました。

 その結果、トルバプタンを投与した群は、有意に腎機能が低下する速度を抑えることが示されました。

 常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎は、腎不全に至る遺伝性疾患で、現在まで有効な治療方法がありませんでした。同剤が臨牀に応用されることになれば、常染色体優性遺伝性多発性嚢胞腎の患者様の透析移行を防ぐことが出來るようになるかも知れません。


参考文献
Torres VE, et al: Tolvaptan in patient with autosomal dominant polycystic kidney disease. NEJM 2012; 367: 2407-2418



2013.06.11

最近の医療系学部人気について(2)

数年前には薬学部の新設が相次ぎ、昨今は看護学部の新設が相次いています。少子化が進行しているにもかかわらず、大学が新設されるということは、それだけ薬学部や看護学部に進学を希望する生徒が増えたということでしょう。

日本は、新卒一括採用が原則です。そのため新卒で正社員になれない場合、一生非正規労働者として暮らさなければならなくなる可能性があります。現在、大学新卒者のうち、多くの方が正社員になれないのが現実のようです。この現実を見れば、就職がほぼ保障されている医学部、薬学部あるいは看護学部に進みたいと考える受験生が増えても不思議ではないのかも知れません。

個人的には、優秀な生徒こそ、これら医療系学部でなしに、工学部や理学部あるいは農学部など、未来の日本のモノ作りを支える人材になって欲しいと思っています。



2013.06.10


最近の医療系学部人気について(1)

 数年前、私の娘が高校に入学した際、早々に志望学部調査がありました。その結果、驚くことに、新入生の約半数が医学部を志望していたそうです。

 入学後、2年生に進む時に理系と文系とに、およそ半数ずつ別れます。新入生の約半数が医学部を志望しているということは、つまり将来理系に進もうと考えている生徒のほぼ全員が医学部志望であることを示しています。

 30年程前、私が高校生だった頃、医学部はこれほど人気ではありませんでした。私が卒業した高校の同級生は8クラス、340名ほどいます。しかし医学部に進学したのは、私を含めて3名だけでした。

 30年前、私立大学医学部は、一部の大学を除いて、さほどの学力を有しなくても入学は可能でした。しかし現在、たとえ私立大学医学部といえども、その偏差値は高くなり、高い学力を有する生徒でなければ入学できません。将に隔世の感があります。



2013.06.08

ヒトパピローマウイルス(HPV)陽性率とHPV多重感染率は10-20歳代で高い

 2013年05月10日から札幌市で開催された第65回日本産科婦人科学会学術講演会に於いて、子宮頸癌に関する気になる調査結果が発表されました。

子宮頸癌の原因ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)の陽性率は、若年者ほど高く、更に複数のHPV型が認められる多重感染の割合も同年代で高いことがわかったそうです。この結果は、多施設共同研究J-HERSグループを代表して前濱俊之氏(豊見城中央病院産婦人科)が同学術集会で発表されました。


 対象は、2011年10月から2012年3月に、全国71施設に来院した女性7019人(16-50歳)。液状検体での細胞診検査とHPV検査を実施し、HPV検査はPCR法とLuminex法により31種類のHPV型の検出が行われました。
 
 細胞診が適正と判断された6831人のうち、16-19歳は88人、20-29歳が2245人、30-39歳が2729人、40-50歳が1769人で、患者の平均年齢は33.7歳でした。
 
 解析の結果、HPV陽性率は40.6%(2776人)でした。年齢別には16-19歳では60%(53人)、20-29歳が48%、30-39歳が41%、40-50歳が30%で、16-19歳は40-50歳に比べ有意に陽性率が高値を示していました(p<0.001)。
 
 多重感染は、HPV陽性患者の47.2%に認められました。多重感染も若年者ほど多く、16-19歳ではHPV陽性患者のうち68%(36人)、20-29歳では58%、30-39歳は43%、40-50歳が34%でした。
 
 また対象者のうち、子宮頸癌検診で来院した女性は2892人(検診群)、それ以外は子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)や尖圭コンジロームの既往歴を含め、何らかの婦人科疾患で来院した女性でした。
 
 検診群において、HPV陽性率は24.3%(702人)でした。年齢別に16-19歳では42%(8人)、20-29歳では34%、30-39歳は23%、40-50歳が14%だった。またHPV陽性患者の39.9%に多重感染が認められ、16-19歳では71%(5人)、20-29歳では53%、30-39歳は35%、40-50歳が17%でした。
 
 細胞診では、ベセスダシステムでNILM(異常なし)が80.9%、扁平上皮内病変の疑いがあるASC-USが7.9%、ASC-Hが1%、軽度の扁平上皮内病変(LSIL)が6.3%、高度の扁平上皮内病変(HSIL)が3.6%、扁平上皮癌(SCC)が0.1%(8人)、腺癌が0.03%(2人)でした。
 
 細胞診の結果とHPV16型および18型陽性を組み合わせると、NILMではHPV16/18型陽性は6%だが、LSILでは19%、HSILでは43%、扁平上皮癌では50%、腺癌では100%が陽性でした。
 
 これらの結果について前濱氏は、「開業医を対象にした調査であったため、子宮頸癌が気になる患者さんが多いというバイアスはあるが、若年者でHPV陽性率が高いことは確実だ。やはり10代前半でのワクチン接種は意味があるだろう」と話したそうです.


 つまり多施設共同研究J-HERSグループの研究結果をまとめると、16-19歳の女性では、実に60%の方がHPV陽性であったとういことです。また多重感染も16-19歳ではHPV陽性患者のうち68%に認められたということです。
 
 HPV感染が子宮頸癌発症に関与することは間違いありません。そうであればより早期(つまり10歳代前半)に子宮頸癌ワクチンを接種することが必要であるということです。



2013.06.07

慢性腎臓病とサプリメント

 診療をしていると、患者様からサプリメントに関する質問をよく受けます。サプリメントとは、もともと食事を補うための補助栄養食品として位置付けられてきました。しかし近年では、疾患の改善、体調の改善、健康増進、痩身、老化防止等を意識した成分が注目されているようです。コエンザイムQ10、プロボリス、イチョウ葉、アガクリスなどや、あるいは様々なハーブなど「自然食品」の分野もサプロリメントと同様に扱われるようになってきているようです。

 しかし副作用が懸念されるサプリメントも少なくありません。慢性腎臓病患者様に勧められないサプリメントの例を下記に示します。


青汁(ケール)
 青汁とは緑色野菜の葉を絞ったりすり潰したりしてジュース状にしたもので、現在市販されている最もポピュラーなものは、栄養のバランスがよく収穫量の多い「ケール」というキャベツの原種の野菜を使ったものです。ケールの生葉100グラム中には約420mgと非常に多いカリウムが含まれており、腎機能の低下した患者様が青汁(ケール)を服用すると、高カリウム血症を来す可能性があり、最悪の場合、心停止を来しこともあり得ます。
 現在、商品として販売されている青汁(ケール)のカリウム含有量は、60~400mg/日と、商品によって大きくばらついています。服用量を制限すれば慢性腎臓病患者様でも服用が可能な青汁(ケール)もあります。
 また抗凝固剤(ワルファリン)をしている患者様の場合、青汁(ケール)に含まれるカリウムが同剤の効果を減弱させます。またキャベツ類はグルクロン酸抱合能を高める効果があるために、アセトアミノフェン、オキサゼパム、ハロペリドール、モルホネ等の効果を減弱させることがあります。またCYP1A2を誘導する作用により、テオフィリンやプロプラノロールの作用を減弱させることがあります。

ウコン(ターメリック)
 秋ウコンはクルクミンという黄色色素を春ウコンに比べて豊富に含むため、カレー粉・フレンチマスタード・沢庵漬けなどに用いますが、薬効が強いのは、精油成分の豊富な春ウコンです。
 カリウム含有量はウコン100グラムあたり1760mg、リン含有量は592mgと高めであり、注意が必要です。
 ウコン中に、クマリンまたはクマリン誘導体が含まれているため、抗凝固剤(ワルファリン)を服用している患者様がウコンを摂取すると、抗凝固剤(ワルファリン)の効果が増強される可能性があります。またタンパク同化ステロイド、アミオダロン、メトトレキセート、ケトコナゾールなどの肝毒性のある薬物を服用されている患者様がウコンを摂取すると、肝臓障害を起こし易くなる可能性があります。更にウコンは降圧作用も有しているため、降圧剤の作用を増強する可能性があります。

梅エキス
 青梅の果汁を絞って煮詰めたものです。梅100グラム中にはカルシウムが56mg、リンが1130mgと、多くのカルシウム・リンが含まれています。これは他の果実の数倍~数十倍量ですが、更に梅エキスは約20~50倍(メーカーによって異なる)に煮詰められているために注意が必要です。

クランベリー
 ツツジ科ツルコケモモ属の果実で、酸味が強く生食には向きませんが、ソース・ジャム・ジュースなどに用いられています。血中蓚酸濃度が上昇することが報告されており、保存期腎不全患者は腎機能が悪化する可能性があるので、摂取は勧められません。クランベリーに含まれるフラボノイドはCYP2C9の基質であるとともに阻害作用もあるため、抗凝固剤(ワルファリン)の代謝を阻害し出血リスクを高める可能性があります。

有機ゲルマニウム
 ゲルマニウム欠乏症は今までいかなる動物においても報告がありません。ゲルマニウムを大量摂取すると、腎障害・腎不全あるいは重篤な肝障害に至ることがあります。1982年より18症例がゲルマニウム摂取によって急性腎不全あるいは急性の腎傷害に陥り、そのうち17名は16~328グラムと、健常者の平均摂取量の100~3000倍の用量を4~36ヶ月にわたって服用していました。ゲルマニウムの服用を中止しても1名を除きすべての患者で腎機能は改善しなかったことが明らかとなっています。保存期腎不全患者では、腎機能の急速な悪化が懸念されるため摂取すべきではありません。


参考文献:『CKD診療テキスト』(富野康日己編集 中外医学社刊)



2013.06.06

腎臓内科と泌尿器科との相違について

 腎臓内科医と泌尿器科医とにとって、両診療科の相違は明確です。しかし一般の方々には、両診療科の違いはなかなかわかり難いかも知れません。更に一般の方々のみならず、両診療科以外の医師のなかには、その相違を弁えていない先生もいらっしゃいます。

 腎臓内科は、腎臓の疾患を扱う診療科ですので、腎盂・尿管・膀胱・前立腺の疾患は扱いません。腎盂・尿管・膀胱・前立腺の疾患は泌尿器科疾患です。腎臓の病気であっても、手術療法が選択肢に入って来る疾患(悪性腫瘍、外傷等)は、泌尿器科疾患となります。

 従って学校や職場の健康診断で検尿異常を指摘された場合、二次健診のために受診する診療科は、泌尿器科ではなく腎臓内科です。また所謂「慢性腎臓病」は、腎臓内科で扱う疾患となります。

腎機能が廃絶して腎不全に至った患者様(透析患者様)に対しては、腎臓内科医が診る施設と泌尿器科医が診る施設とがあります。本院では腎臓内科医が透析患者様の治療を担当しています。

 本来腎臓内科を受診してしかるべき患者様が泌尿器科を受診されるケースがままあります。しかしその反対、つまり本来泌尿器科を受診してしかるべき患者様が腎臓内科を受診するケースはあまりみられません。その理由は、泌尿器科の開業医院も少なくなく、多くの方の認知を受けているからでしょう。一方で腎臓内科は、その存在すら知らない方も多くいらっしゃいます。


2013.06.05

血糖コントロールの指標であるHbA1cの目標値が変更となりました(2)

 第56回日本糖尿病学会年次学術集会(2013年05月16~18日 於熊本市)で、「新たなHbA1c目標値についての特別声明」と題するセッションが組まれ、同学会常務理事の春日雅人氏(国立国際医療研究センター総長)、羽田勝計氏(旭川医科大学病態代謝内科学教授)、今学会長でもある荒木栄一氏(熊本大学大学院代謝内科学教授)が登壇して同学会が発表しているHbA1cの新目標値について、設定の背景や根拠について発表を行い、活用を呼びかけました。

 それによると、従来の評価分類である「優」「良」「可(不十分・不良)」「不可」が、同学会によるHbA1cの国際標準化に伴い「中途半端な値になった」ことから、「見直しを図ろうという機運が高まった」。加えて「米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)とが提唱している患者中心の医療を目指す(Patient-Centered Approach)の理念に対し、『不可』などの否定的な呼称がそぐわないという意見や、あるいは『優』という呼称が低血糖などを考慮せずに、ひたすらHbA1cを下げるべきという意味に取られかねない危険もあるという意見もあった」と続けた。

そこで「患者と医療者がともに目指す糖尿病治療の目標」となり,「国際的な基準との整合性」が取れ、「非専門医にも理解されやすく,活用しやすいように簡素化」した新たな評価分類として3案が提示され、評議員を対象としたパブリックコメントで賛成多数であったことなどから、患者の年齢や病態などに合わせた3つの目標値を設定した案が採択された。



2013.06.04

血糖コントロールの指標であるHbA1cの目標値が変更となりました(1)

日本糖尿病学会は、第56回日本糖尿病学会年次学術集会にて「熊本宣言2013」を発表しました。これは、多くの糖尿病患者さんにおける血糖管理目標値をHbA1c 7.0%未満とし、日本糖尿病学会が、これからも糖尿病発症予防に尽力するとともに、より良い血糖管理などを通じて糖尿病の合併症で悩む人々を減らすための努力を惜しまないことを宣言したものです。

今まで、HbA1cの目標値は以下のように決められており、患者様にもそのように説明・指導してきました(糖尿病指導ガイド 日本糖尿病学会編 2012-2013)。

HbA1c 6.2%未満 コントロール優
HbA1c 6.9%未満 コントロール良
HbA1c 7.4%未満 コントロール可(不十分)
HbA1c 8.4%未満 コントロール可(不良)
HbA1c 8.4%以上 コントロール不可


しかし2013年06月01日より、HbA1c目標値が変更となります。新しいHbA1cの目標値は下記の通りです。

血糖正常化を目指す際の目標 HbA1c 6.0%未満
合併症予防のための目標 HbA1c 7.0%未満
治療強化が困難な際の目標 HbA1c 8.0%未満



2013.0603

禁煙すると太ります。しかしそれでも禁煙が重要です

 国民健康栄養調(2010年)によると、我が国における喫煙率は、男性55.3%、女性9.4%です。私が普段診ている患者様のなかにも愛煙家はいらっしゃいます。そのような方には禁煙を勧めるのですが、多くの方が仰るのは、「煙草を止めると太るからイヤです」という返事です。

 体重増加を理由に禁煙を拒む方に対し、私は「禁煙成功のメリットは体重増加のデメリットに比べて大きいです。禁煙に成功したことの意義の方がはるかに大きいのです」という趣旨の説明をします。

 確かに禁煙すると体重増加がみられることはしばしばあります。2012年のイギリス医師会雑誌(BMJ: British Medical Journal)にも発表されました。此の論文の結論では、禁煙してから12ヵ月後に平均4~5キログラムの体重増加がみられたとのことです。(Smoking cessation is associated with a mean increase of 4-5 kg in body weight after 12 months of abstinence, and most weight gain occurs within three months of quitting. (BMJ. 2012 Jul 10;345)

 しかし2013年の米国医師会雑誌(JAMA: The Journal of the American Medical Association)に、たとえ禁煙して体重増加がみられたとしても、それを上回るメリットがある旨の研究結果が報告されました。以下にその結論だけを記載します。

対象者を糖尿病と非糖尿病に分け、喫煙状況ごとの体重増加を見ると、糖尿病であれ非糖尿病であれ、最近の禁煙者の体重増加が一番多かった。一方,長期の禁煙者における体重増加は,非喫煙者や喫煙者との間で差異が認められなかった。

 この観察期間中に631の心血管イベント(虚血性心疾患や脳卒中等)が生じており、その発症率は、明確に非糖尿病よりも糖尿病で多かった。それを喫煙状況で分けた場合、糖尿病であれ非糖尿病であれ、体重増加の影響を補正するしないにかかわらず、喫煙者よりも非喫煙者,禁煙者で心血管イベントの発症率は低下していた。

今回の研究結果からは,糖尿病であれ,非糖尿病であれ,体重増加があろうとも,禁煙の成功(最近の禁煙)により心血管イベントを半分程度にできることがわかりました。

(JAMA. 2013 Mar 13;309(10):1014-21..)



2013.06.01

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