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ホーム  > 園長コラム  > 尊厳に立ち返る

尊厳に立ち返る

2020年東京オリンピックが開幕しました。そして、24日には東京パラリンピックも始まります。連日、選手たちの活躍とそれをサポートする人々の姿が報道され、複雑な思いの中でも心潤うひと時となっています。
この東京大会、ご存知の通り開幕前から驚くほどの問題が次々と浮き彫りになりました。そしてその多くは、潜在的な課題としてやはり私たちが抱えているものでした。感染症との戦いはもとより、人格を軽んじる言動や女性蔑視発言など、「命が脅かされること」「尊厳が損なわれること」への不安や悲しみは、これまでも歴史のなかで繰り返されてきました。そしてそれらの一部が、不満や怒りに移行し増幅する過程は、向かう方向や程度の差はあってもやはり繰り返されてきたことです。
私たちは、平穏な気持ちで日々を過ごし続けることが、いかに難しく貴重なことであるのかを、改めて思い知らされています。平和であること、心穏やかでい続けられることは自然がもたらすものではありません。努力によって得られ、努力をしないと維持できないものなのです。
 ドイツの哲学者カントは、「手段としてのみならず目的として互いの人格を尊重する」社会を理想であると訴えました。私は、カントについて学んだ学生時代、この考えにとても感銘を受けたことを覚えています。そして、聖隷の理念にも通じる、自律を持って「人間の尊厳」を重んじることを改めて今、心に留め置けずにはいられません。
 子ども達には、そのままで、ありのままで大丈夫であること、そのままで愛されるべき存在であること、尊厳を持ち合わせてこの世に命を与えられたことを、実感しながら育ってもらいたいと願います。そして、困っている人苦しんでいる人を目にした時、感謝をされたいから手を添える(感謝を受けるための手段)ではなく、ただ手を添える(その人の困り感が軽減するという目的)ことができる人になってほしいと切に願います。
東京大会。福島県からスタートし、121日間かけ全国47都道府県をつないだ聖火が太陽をモチーフとした聖火台に燈されたとき、子ども達に向け、ごくごく個人的で普遍的な幸せを心から願いました。
  かるみあ富丘 所長 大塚美美