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ホーム  > 園長コラム  > 『おもちゃにも心がある』~子どものことばから~

『おもちゃにも心がある』~子どものことばから~

初秋の候。松虫、鈴虫、コオロギなどたくさんの虫の鳴き声が、夜の音楽会のように心地よく響きます。
暦の上では秋ですが、残暑がきびしい毎日です。どうぞ、熱中症には十分にお気をつけください。
現在、磐田市でも感染拡大がみられ、先日27日には、幼稚園保育園課から『家庭保育のお願い』が公私立の幼稚園・保育園・こども園に要請されました。保護者の皆様には、仕事の調整や子どもさんの過ごし方などで苦慮されていることも多いと思います。ご負担をお掛け致しますが、ご協力をよろしくお願いいたします。

少し前になりますが、子どもたちの何気ないやり取りがとても心に残りましたので、紹介させて頂きます。
保育室で、4歳児と5歳児が少し離れて数人で遊んでいました。5歳児のAくんと4歳児のBくんは、一緒にロボットを作っていました。少し離れたところで、5歳児のHくんがひとり夢中になって大きなロボットを作っていました。4歳児のBくんは材料が足りなくなったのか、「Hくんが使っている積木をもらってきて」とAくんに頼みました。頼まれたAくんはHくんの所にある積木が残り少ないこともあったのか、もらいにいくこともなく、たたずんでいると、「じゃあ、こわしてきて!」と頼むBくん。Aくんはその場を離れ、つぶやくように『そんなことはA(自分)はやらない、行かない。壊すことはいけない』と言っていました。さらに「こわしてきて」と言うBくんに対し「A(自分)はやらない!」ときっぱり断りました。あきらめたのかBくんは、しばらくそのまま遊んでいたのですが、片付けになり、心にひっかるものがあったのでしょうか、思ったようにつくりあげられなかったのでしょうか、音を立てながら乱暴に片付けをしていました。その姿を見て、Hくんは、穏やかに「なげたら、おもちゃが痛いって言うよ」とことばをかけると「おもちゃは痛いって言わない」とBくん。「しゃべらなくても、おもちゃにも心がある」とHくん。「心なんてないし、おもちゃだし」とBくん。聞いていたAくんは「おもちゃにも心はあるよ。赤ちゃんの時から言われてきたでしょ」となだめるように話しましたが、「B(自分)は赤ちゃんじゃない」とBくん。「Bくんにも赤ちゃんの時はあったでしょう」とAくんになだめられ、それ以上、ことばを交わすことはありませんでした。
 私は『おもちゃにも心がある』のことばが印象に残りました。物に対する愛着を持つようになるのは、幼い時からで、おもちゃもその一つです。自分らしさを出せたり、自分を表現できたり、心地よく感じられるものです。物も自分に馴染み、それが、まるで自分を思ってくれているかのように感じ、そこに自分の気持ちが注ぎ込まれていくようになるのです。大人になっても同じように、愛着のあるもの(手作りの物等)に囲まれていると幸せを感じるものです。さらに自分自身の存在を感じていくようになり、自己実現にもつながっていくとも言われています。私の娘も、何度も服を手直ししボロボロになった人形を抱き、自分が関わってもらったように愛情もって関わっていたことを思い出します。
『おもちゃにも心がある』このことばを通して、私たち大人があらためて教えられた気がします。
聖隷こうのとり富丘 施設長 永島 弘美