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“心の理論”

2月を迎え、庭のロウバイが咲きました。朝晩は冷え込みが厳しく、寒い日が続いています。暖かい春が待ち遠しいですね。どうぞ風邪などひかぬようにお過ごしください。
先日、クリストファー大学で教職に従事している言語聴覚士の資格を持つ教授をお招きして、4歳児クラスの子どもたちの構音(発音)検査と質問応答検査(一部)をしていただきました。もちろん希望されたご家庭のみです。検査と言っても子どもの能力を推し量るためのものではなく、一人ひとりの日常のコミュニケーションの中での基本的な会話力や聴覚的な文章理解等、また発音の苦手な部分も知る事ができました。このことを通して、家庭や園での周りの大人の関わり方を工夫することでより良い成長を促すことにつながると考えています。子どもたちは、ことばあそびの感覚で楽しんでいたようです。その結果は、面談で保護者の方にもお伝えしていきます。
コロナ禍の中で、マスク生活が続き、子どもたちへの影響はどうなのか、ことばの発達の問題や円滑なコミュニケーションという点において問題はないだろうか等、私自身、この3年心配なことも多かったです。教授から子どもの成長発達やことばに関する助言指導を頂くことで、改めて一人ひとりの子どもの姿を見つめ直し、保育の中での必要な対応を加え、来年度へと向かいたいと考えています。

教授から伺ったお話の中で興味深い内容が数多くありました。特に興味深かったのが“心の理論”です。「個人差はあるが、4歳を過ぎてくる(4歳~6歳)と“心の理論”(自己と他者を区別し、それぞれが心を持つ存在だと認識する能力のこと)を獲得するようになる。話し手や聞き手に対する意識や他者の意図することを表情や状況からも推論するようになる。」「コミュニケーションの基盤となるのは、ことばだけでなく、やりとりが大事。そして、ことばを共有している『終助詞』が大切です。共感につながります。」このようにお話されました。

“心の理論”(相手の気持ちを推測し、理解する力)を獲得し、相手の認識を推論した上で、用いられる文法形式が、終助詞。『終助詞』とは文末につくもので、話すことばのニュアンスを補足するようなことば(助詞)です。
例えば 「寝んねするよ~」「これ美味しいね」「公園にいったね~」 → 「寝んねする」「これ美味しい」「公園いった」この文(ことば)の違い、ニュアンスの違いがわかりますか?
このような よ ね などは単独では意味のあることばではありませんが、どうですか 微妙にニュアンスが変わってくると思いませんか。このような共感を表す『終助詞』は子どものことばにも現れます。一般的には、1歳半から2歳以降に見られるようです。これらの表現は日本語を母国語とする幼児が幼い頃から用いるため、他の言語を用いる幼児と比べて、“心の理論”の理解が早いという仮説もあるようです。

子どもは傍らにいる安心できる大人の存在(愛してくれる人)とのやりとりの中で、ことばに込められた気持ちや温かさを肌で感じながら成長していくのだと思います。日常的に保護者の皆様も自然と使っていると思いますが、私はあらためて、共感できる ことばの魔法 を教えていただいた気がしました。
こうのとり富丘 園長 永島 弘美