B.不眠
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緩和ケアの対象となる患者ではせん妄を生じるリスクが非常に高いことを認識しておきます。せん妄か、せん妄になりそうな状態であれば、せん妄を悪化・励起しないようにベンゾジアゼピン系や非ベンゾ系(Z薬:エスゾピクロンなど)を避けて、抗精神病薬や、鎮静作用のある抗うつ薬(トラゾドン)などを最初に選択するのが無難です。
せん妄がない場合、入眠困難と中途覚醒を聞き分けて、睡眠薬を選択します(図)。「眠れない」という訴えを聞いたら、「寝付けない」のか「(寝付けるけど)起きてしまう」のかを聞き分けるようにします。どちらもある場合、睡眠薬を組み合わせて使うことがあります。
ベンゾジアゼピンはせん妄や転倒のリスクがあるので基本的には避けますが、不安が強くて眠れない場合や他が無効のときに使うことがあります。その場合、依存ができないよう極力短期間で中止するように心がけます。
なお、ベンゾジアゼピンを長期間内服している患者では、急に中止することで反跳性不眠や離脱せん妄が起こることがあるので、慎重に時間をかけて他剤に置き換えていくか、状況によってはそのまま継続します。
不眠の原因
不眠の原因になる要因を除外してください。
しばしばあるのは、以下のようなものです。
・ | ステロイドの午後の投与→朝1回投与に変更。 |
・ | 夜間の持続点滴(頻尿)→可能なら日中だけで夜間ロックとする。夜間だけ投与速度を落とす。 |
・ | 夜間の疼痛・せき(分3処方で眠前に鎮痛薬が切れている)→分3処方を時間処方にする(8時間ごとなど)、眠前に鎮痛薬を定期投与する(ロピオン0.5A 眠前、アンペック坐薬10mg 眠前など)。 |
・ | 痛い・お腹が張る→眠前にオピオイドの投与(アンペック坐薬など)。 |
・ | せん妄→せん妄の身体要因を除外してください。 |
処方例 |
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せん妄かも/せん妄になりそう ・トラゾドン25mg 1錠 ~6錠 ・クエチアピン25mg 0.5錠 ~2錠 (糖尿病では使わない) ・デエビゴ5mg 1錠 ~2錠 または ベルソムラ20mg 1錠 高齢、脆弱 ・ラメルテオン8mg 1錠 ・デエビゴ5mg 1錠 または ベルソムラ15mg 1錠 寝付けない ・デエビゴ5mg 1錠 ~2錠 ・エスゾピクロン1mg 1錠 ~2錠 起きてしまう ・デエビゴ5mg 1錠 ~2錠 または ベルソムラ20mg 1錠 ・トラゾドン25mg 1錠 ~6錠 不安が強い(&せん妄リスク低い) ・アルプラゾラム 1錠 ・ブロチゾラム 1錠 など |