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卵円孔開存症のカテーテル治療


2020年2月 静岡県初 奇異性脳塞栓の再発予防を目的とした
経皮的卵円孔開存閉鎖術の実施施設に認定されました。


脳梗塞の原因となる可能性のある心臓の卵円孔開存(PFO:Patent Foramen Ovale)は、成人の4人に1人に見られ、奇異性脳塞栓の一番頻度が高い原因と考えられています。
2019年12月から奇異性脳塞栓を合併した卵円孔開存症に対して、脳梗塞の再発を予防する目的で閉鎖栓を用いたカテーテル治療が可能になりました。
この治療は、脳梗塞の診断をする脳卒中専門医と卵円孔開存の診断のための経食道エコー、カテーテル治療を実施する循環器専門医によるブレインハートチームを結成して行います。


卵円孔開存症(PFO)と奇異性脳塞栓

卵円孔は右心房と左心房の壁(心房中隔)に開いている孔で、胎児期(図1)には重要な役割があり開いていますが、生後自然に閉じていきます(図2)。しかし閉鎖せず小さな孔が残った状態を卵円孔開存症(PFO)といい、成人の約25%(4人に1人)に見られると考えられています(図3)。
通常は無症状で治療の必要はないとされていますが、咳、排便の時など腹圧がかかった際に卵円孔を介して右心房から左心房に血液が流れ込む場合があります。この時に足の静脈にできた血栓が一緒に卵円孔を通過し脳に到達すると頭痛、めまいなどを引き起こす場合があり、大きな血栓では一過性脳虚血発作や脳梗塞を引き起こすと考えられています。このような脳梗塞は高血圧や動脈硬化による脳梗塞と区別して奇異性脳塞栓と呼ばれていて、比較的若い人に多い特徴があります。

図1:出生前

図2:出生後、PFOは自然に閉じる

図3:PFOが開いたままである

卵円孔開存症(PFO)に対するカテーテル治療

卵円孔開存症(PFO)に対するカテーテル治療は卵円孔を閉鎖することで奇異性脳塞栓の再発を予防する治療です。
従来から奇異性脳塞栓の再発予防として内服治療、手術治療が行われています。内服治療は血液をさらさらにする薬(アスピリン、ワーファリン、新規抗凝固薬など)を使って血栓が作られることを予防するもので、広く行われています。この治療は一定の効果がありますが、卵円孔は開存したままなので一生涯の内服を続ける必要があります。また内服していても再発する場合があります。
一方、卵円孔を閉鎖する治療が心臓手術です。手術治療は確実に閉鎖することができますが、体にかかる負担が大きいという問題があります。新たに開始されるカテーテル治療は手術よりはるかに低侵襲で卵円孔を閉じることができる治療です。

メリット

カテーテル治療は胸に傷が残りません。手術と比較して術後の回復が早いため入院期間が短く、5泊6日で退院できます。また内服薬単独治療よりも、脳梗塞の再発予防効果が高いことが3つ臨床試験で証明されています。

カテーテル治療の適応条件

  • 卵円孔開存症であり、脳梗塞の既往がある方
  • 閉鎖術施行後、一定期間の抗血小板薬が内服ができる方
  • 原則として60歳未満の方
  • 女性の場合、妊娠していないまたは1年以内の妊娠を希望していない方

治療に用いる閉塞栓

卵円孔を塞ぐ閉鎖栓は2枚の笠とそれを結ぶ筒が一体になったもので、2枚の笠で両側から卵円孔を挟んで閉鎖します。素材はニチノールというニッケル-チタンの合金で、笠の中に特殊な布(ダクロン)がはめこまれています。ニチノールは形状記憶合金で冠動脈ステントなどさまざまな医療機材で採用されている金属で、特殊な布(ダクロン)は心臓手術で使用されているものと同じ成分です。

Amplatzer® PFO オクルーダー(閉鎖栓)

PFOオクルーダー(閉塞栓)のサイズイメージ

治療の流れ

①治療は、全身麻酔または局所麻酔をかけて行います。
直径3mmぐらいのカテーテルを右足の付け根の大腿静脈から挿入します。

②カテーテルは、右心房側より卵円孔を通り左心房側に進みます。折りたたまれた閉鎖栓をカテーテルに挿入します。

③左心房側の閉鎖栓を開きます。(左)
④左心房側の閉鎖栓を心房中隔に近づけます。(右)

⑤右心房側の閉鎖栓も開き、2枚の笠で卵円孔をはさんでいきます。(左)
⑥閉鎖栓が卵円孔をしっかりはさんでいることをエコーで確認した後、カテーテルをはずします。(右)

治療後必要なこと

  1. 抗血小板薬(主にアスピリン)を治療の1週間前から術後6ヶ月の間服用していただきます
  2. 治療後、約1ヶ月間は激しい運動は避けてください
  3. 6ヶ月間は細菌(感染)性心内膜炎を予防するため歯科治療、手術などなるべく避けてください
  4. 定期的な経過観察が、最低3年間必要です

卵円孔開存に伴う奇異性塞栓症とは?

脳梗塞の病態が明らかになるにつれて、塞栓源不明脳塞栓症(Embolic Stroke of Undetermined Source 略して ESUS)が注目されています。ある程度の年齢の方では、発作性心房細動に伴う「心原性脳塞栓症」が原因の脳梗塞を発症する可能性が高いことがわかっています。最近では、2~3年間持続的に心電図が図れる「持続型心電図計(ICM)」を胸部皮下に留置することが可能となりました。当院脳卒中科では、積極的に留置を行っております。
一方、特に若年性(50歳以下)のESUS患者では病態は多岐に渡ります。上述の発作性心房細動は勿論可能性としてありますが、「奇異性塞栓症」という病態が存在します。

奇異性脳塞栓症とは?

心臓に卵円孔という部分があります。胎児の時は母胎の中で開存し、出生とともに閉鎖すると言われる隙間です。
一般剖検の集計によれば、卵円孔開存の有病率は26%といわれており、一定の条件のもと開通していることがあります。
一般的にエコノミークラス症候群と言われる深部静脈血栓症を合併し、この開存があると奇異性塞栓症という通常のルートでは肺塞栓となる塞栓症が脳梗塞を発症することがあり、これが奇異性脳塞栓症と呼ばれる所以です。
若年性脳塞栓症の主な原因となり、再発予防のための卵円孔閉鎖が治療となり、開胸術によって行われていました。(海外のサッカー選手で、現役時代に脳塞栓症を発症し、予防のための開胸による閉鎖術をうけ、その後選手に復帰しております。) 

まずは若年性で特に大きなリスクなく、塞栓症というタイプの脳梗塞になった方は心臓エコーでこの卵円孔開存がないか、しっかりとチェックする必要があります。その後、閉鎖術が必要かどうか、各科の先生と相談して決めていきます。開胸によらず、カテーテルによる治療ができることは患者さんにとって、とてもメリットが高いことであり、そういった塞栓症を見逃さないことが、私たち脳卒中治療医に求められていると考えて日々診療にあたっております。
脳神経外科 主任医長/林正孝

お問い合わせ・連絡先【医療機関用】

林医師(左)齋藤医師(中)中嶌医師(右)

地域医療連絡室(JUNC) 電話:0120-107-352 / FAX:0120-107-362 
平日:8時30分~19時00分 / 土曜日:8時30分~13時00分 ※日・祝日は休み
担当医師 循環器科外来:齋藤秀輝/脳卒中科外来:林正孝/成人先天性心臓病外来:中嶌八隅
「経皮的卵円孔開存(PFO)閉鎖術」は、日本脳卒中学会、日本循環器学会、日本心血管インターベンション治療学会及び厚生労働省により認可した施設のみで実施可能な治療法です。当院は、2020年2月に実施施設として、正式に認定されました。

「経カテーテル的心臓短絡疾患治療基準管理委員会」のホームページをご覧ください。(別ウインドウで開きます)

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