グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ




ホーム > Ⅳ精神症状  >  A.せん妄

A.せん妄

ページの目次


Overview

まず、全身状態のスクリーニングを行ってください。それまで継続投与され副作用のなかったオピオイドがせん妄の原因となることはまれです。次のことを確認してください。
・ 採血(肝不全:肝機能・アンモニア、腎機能、カルシウム、ナトリウム、感染症)
・ 酸素飽和度か血液ガス(低酸素・高炭酸ガス血症・代謝性アシドーシス)
・ 神経所見(状況によっては頭部CT・MRI)
・ ベンジアゼピン系薬剤
・ 抗コリン性薬剤(オピオイド、抗うつ薬、キシロカイン、H2ブロッカーなど)

原因治療が「不可能」か「可能」かによって、患者さん、ご家族の価値観を聞きながら、個別に目標を立てることになります。

せん妄の緩和治療のoverview



ケア

看護ケア

コミュニケーションへの支援、環境整備、家族ケアなど薬物以上に重要です。


薬物治療

オピオイド

腎不全を伴う患者にモルヒネが投与されている場合、オキシコドンかフェンタニルへ変更します。

終末期の臓器不全によるせん妄はオピオイドスイッチングのみで改善は期待できないため、鎮痛を優先してモルヒネを継続しても良いことが多いです。


対症的薬物治療

【原則】
教科書的にはmajor tranqulizerの単独投与ですが、回復困難な終末期では睡眠を重視してベンゾジアゼピンでも良い場合があります。

不穏になってからでは効果はないので、「不穏の始まり」に投与します

終末期(原因治療困難)では、患者・家族の価値観によって治療目標が異なり(不穏でも起きてほしい人もあり、不穏なら休んでいる方を望むこともある)、状態が日々変わる、個人差のため効果予測が難しいため、数日ごとに評価/修正してください。

抗精神病薬には不整脈励起作用(QT延長)、フェノチアジンには血圧低下、ベンゾジアゼピンには呼吸抑制があります。


処方例
あまり鎮静したくないとき
クエチアピン・リスパダール・ハロペリドールを中心に、足りなければベンゾジアゼピンを足す。クエチアピンが睡眠にも有効でhangoverが少ないといわれています。
定期薬:(不穏になる時間の少し前に投与)
・ クエチアピン25mg×1~2 夕・夜
・ リスパダール0.5mL×1~2 夕・夜(最大3mg)
・ ハロペロドール0.5~1A皮下注 または、+生食20~100mL 静注(最大2A)
臨時薬:不眠時・不穏時
(1)
クエチアピン25mg、追加2回まで
リスパダール 0.5mL、追加2回まで
ハロペリドール0.5~1A±アタラックスP0.5~1A皮下注、+生食20~100mL 静注
(2)
サイレース0.25~0.5A+生食100mL、適宜入眠したら中止(合計1Aまで、RR≦12になれば中止)
ドルミカム1A+生食100mL、入眠に合わせて滴下、RR≦12になれば中止
セニラン坐薬1個
ダイアップ坐薬4mg
ワコビタール坐薬50mg

しっかり鎮静したいとき
抗精神病薬に最初からベンゾジアゼピンを併用する
定期薬:
・ ハロペリドール0.5~1A+サイレース0.25~0.5A+生食100mL、適宜入眠したら中止(合計2Aまで、RR≦12になれば中止)
・ ハロペリドール0.5~1A+ドルミカム1A+生食100mL、入眠に合わせて滴下、RR≦12になれば中止
・ サイレース0.5~1A+コントミン0.1~0.5A+生食100mL、適宜入眠したら中止(RR≦12になれば中止)

日中もひどい不穏のとき
ハロペリドール2~4A+生食で50mLのシリンジポンプで24時間持続皮下・静注
不穏時:サイレース0.5~1A+コントミン0.1~0.5A+生食100mL、適宜入眠したら中止

苦痛緩和のための完全な鎮静(緩和ケアチームに相談してください)

他に緩和手段がない場合、家族の同意を得たうえで完全な鎮静下におくことも適切な場合があります。「VI-A 看取りの数日間の症状緩和」を参照してください。