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ホーム > Ⅵ死亡直前  >  A.看取りの数日間の症状緩和・鎮静

A.看取りの数日間の症状緩和・鎮静

ページの目次


Overview

患者さんの亡くなられる前の数日間にはいろいろな苦痛が生じますので、あらかじめ対応できる指示を出しておくと「苦痛緩和」(=おだやかに最期を迎えること)がすでに目標になっている患者さんには適切と思います。「苦痛緩和」が目的でない場合はこれらの指示は出さずに、そのつど状況から相談する方がいいと思います。

基本的には主治医の先生方や病棟で使い慣れているものをご検討ください。

処方例:坐薬中心であれば下記のような対応が考えられます。
疼痛時・呼吸困難時アンペック坐薬(使用量はそれまで使用していたレスキュー量や1日投与量の6分の1を目安に判断ください。)
2時間あけて反復可。効果乏しい時は不眠時不穏時を使用。
不眠時不穏時軽い鎮静セニラン坐薬3mg 抗不安薬であるレキソタンの坐薬です。
中程度の鎮静ダイアップ坐薬6mg セルシンの坐薬です。
しっかり鎮静ワコビタール坐薬50~100mg
鎮静に至るまでは時間を要しますので、
鎮静が必要な場合には、初期に200~400mg/日のinitial loadingを100mg/回を数回行ってください。その後、50~200mg/日で維持してください。
確実な鎮静が必要なく、軽度の鎮静でいい場合には、50~200mg/日を数日使用してください。


疼痛時・呼吸困難時

処方例
オピオイドが投与されている場合1日投与量の6分の1を坐薬投与で指示。
オピオイドが投与されていない場合アンペック坐薬10mg0.5個、またはモルヒネかオキシコドン注の持続注射を指示
レペタン坐薬0.2mg1個も可能。

死前喘鳴(ゼコゼコするとき)

ハイスコを投与します。(VI-B 死前喘鳴を参照)


鎮静・身の置き所のない苦痛

処方例
緩徐に開始すれば呼吸抑制は生じませんが、10%前後で急速な呼吸・循環機能の悪化をきたします。10%で無効です。

「ゼコゼコ」するときはドルミカムとハイスコを併用してください。

鎮静かかるまでは、

(1)効果のあった不眠時があれば使用
(2)早送り
(3)初期のみ投与速度をローディングする
のいずれかと併用してください。急ぐ場合は、ドルミカム0.5Aずつ皮下注。

ドルミカム、ドルミカム+ハイスコが無効な場合のみ、フェノバルビタールによる持続鎮静を使用してください。
静脈ラインがあるとき:持続静注で
【指示(1)】最小量から開始して増量するとき
**これは静注用指示です**
ドルミカム 4A 8ml (40mg)+生食32ml / 合計40ml
注意:ドルミカム 1mg/ml (ドルミカム5倍希釈)
投与デバイス:シリンジポンプ
■0.5ml/時(ドルミカム 0.5mg/時,12mg(1.2A)/日)で開始
■ベースアップ:効果不十分なとき、RR≧10回を確認して1時間毎に増量可
 -0.1ml/時(ドルミカム 0.1mg/時,2.4mg(0.24A)/日)
 -0.2ml/時(ドルミカム 0.2mg/時,4.8mg(0.48A)/日)
 -0.3ml/時(ドルミカム 0.3mg/時,7.2mg(0.72A)/日)
 -0.5ml/時(ドルミカム 0.5mg/時,12mg(1.2A)/日)
 -0.7ml/時(ドルミカム 0.7mg/時,17mg(1.7A)/日)
 -1.0ml/時(ドルミカム 1.0mg/時,24mg(2.4A)/日)
 -1.5ml/時(ドルミカム 1.5mg/時,36mg(3.6A)/日)
 -2.0ml/時(ドルミカム 2.0mg/時,48mg(4.8A)/日)
 -3.0ml/時(ドルミカム 3.0mg/時,72mg(7.2A)/日)
 -4.0ml/時(ドルミカム 4.0mg/時,96mg(9.6A)/日)
 -5.0ml/時(ドルミカム 5.0mg/時,120mg(12.0A)/日)
 -6.0ml/時(ドルミカム 6.0mg/時,144mg(14.4A)/日)
 -7.0ml/時(ドルミカム 7.0mg/時,168mg(16.8A)/日)
 -8.0ml/時(ドルミカム 8.0mg/時,192mg(19.2A)/日)
 -9.0ml/時(ドルミカム 9.0mg/時,216mg(21.6A)/日)
 -10ml/時(ドルミカム 10.0mg/時,240mg(24.0A)/日)
■効果不十分なとき:1時間分早送り [RR≧10回なら30分あけて反復可]

【指示(2)】初期ローディングするとき
**これは静注用の指示です**
ドルミカム 4A 8ml (40mg)+生食32ml / 合計40ml
注意:ドルミカム 1mg/ml (ドルミカム5倍希釈)
投与デバイス:シリンジポンプ
■3.0ml/時(ドルミカム 3mg/時)で開始 *1時間でドルミカム 3mg(0.3A)が入ります
■鎮静されたら0.5ml/時におとす
■ベースアップ:効果不十分なとき、RR≧10回を確認して1時間毎に増量可
 -0.1ml/時(ドルミカム 0.1mg/時,2.4mg(0.24A)/日)
 -0.2ml/時(ドルミカム 0.2mg/時,4.8mg(0.48A)/日)
 -0.3ml/時(ドルミカム 0.3mg/時,7.2mg(0.72A)/日)
 -0.5ml/時(ドルミカム 0.5mg/時,12mg(1.2A)/日)
 -0.7ml/時(ドルミカム 0.7mg/時,17mg(1.7A)/日)
 -1.0ml/時(ドルミカム 1.0mg/時,24mg(2.4A)/日)
 -1.5ml/時(ドルミカム 1.5mg/時,36mg(3.6A)/日)
 -2.0ml/時(ドルミカム 2.0mg/時,48mg(4.8A)/日)
 -3.0ml/時(ドルミカム 3.0mg/時,72mg(7.2A)/日)
 -4.0ml/時(ドルミカム 4.0mg/時,96mg(9.6A)/日)
 -5.0ml/時(ドルミカム 5.0mg/時,120mg(12.0A)/日)
 -6.0ml/時(ドルミカム 6.0mg/時,144mg(14.4A)/日)
 -7.0ml/時(ドルミカム 7.0mg/時,168mg(16.8A)/日)
 -8.0ml/時(ドルミカム 8.0mg/時,192mg(19.2A)/日)
 -9.0ml/時(ドルミカム 9.0mg/時,216mg(21.6A)/日)
 -10ml/時(ドルミカム 10.0mg/時,240mg(24.0A)/日)
■効果不十分なとき:1時間分早送り [RR≧10回なら30分あけて反復可]


静脈ラインがないとき:持続皮下注で
【指示(1)】最小量から開始して増量するとき
**これは皮下注用の指示です**
ドルミカム 5A 10ml (50mg) / 合計10ml
注意:ドルミカム 5mg/ml
投与デバイス:小型シリンジポンプ 10mL使用
■0.10ml/時(ドルミカム 0.50mg/時,12mg(1.2A)/日)で開始
■ベースアップ:効果不十分なとき、RR≧10回を確認して1時間毎に増量可
 -0.05ml/時(ドルミカム 0.25mg/時,6mg(0.6A)/日)
 -0.10ml/時(ドルミカム 0.5mg/時,12mg(1.2A)/日)
 -0.15ml/時(ドルミカム 0.75mg/時,18mg(1.8A)/日)
 -0.20ml/時(ドルミカム 1.0mg/時,24mg(2.4A)/日)
 -0.30ml/時(ドルミカム 1.5mg/時,36mg(3.6A)/日)
 -0.40ml/時(ドルミカム 2.0mg/時,48mg(4.8A)/日)
 -0.60ml/時(ドルミカム 3.0mg/時,72mg(7.2A)/日)
 -0.80ml/時(ドルミカム 4.0mg/時,96mg(9.6A)/日)
 -1.00ml/時(ドルミカム 5.0mg/時,120mg(12A)/日)
 -1.20ml/時(ドルミカム 6.0mg/時,144mg(14.4A)/日)
 -1.40ml/時(ドルミカム 7.0mg/時,168mg(16.8A)/日)
 -1.60ml/時(ドルミカム 8.0mg/時,192mg(19.2A)/日)
 -1.80ml/時(ドルミカム 9.0mg/時,216mg(21.6A)/日)
 -2.00ml/時(ドルミカム 10.0mg/時,240mg(24.0A)/日)
■効果不十分なとき:1時間分早送り [RR≧10回なら30分あけて反復可]

【指示(2)】初期ローディングするとき
**これは皮下注用の指示です**
ドルミカム 5A 10ml (50mg) / 合計10ml
注意:ドルミカム 5mg/ml
投与デバイス:小型シリンジポンプ 10mL使用
■0.60ml/時(ドルミカム 3.0mg/時)で開始 *1時間でドルミカム 3.0mg(0.3A)が入ります
■鎮静されたら0.1ml/時におとす
■ベースアップ:効果不十分なとき、RR≧10回を確認して1時間毎に増量可
 -0.05ml/時(ドルミカム 0.25mg/時,6mg(0.6A)/日)
 -0.10ml/時(ドルミカム 0.5mg/時,12mg(1.2A)/日)
 -0.15ml/時(ドルミカム 0.75mg/時,18mg(1.8A)/日)
 -0.20ml/時(ドルミカム 1.0mg/時,24mg(2.4A)/日)
 -0.30ml/時(ドルミカム 1.5mg/時,36mg(3.6A)/日)
 -0.40ml/時(ドルミカム 2.0mg/時,48mg(4.8A)/日)
 -0.60ml/時(ドルミカム 3.0mg/時,72mg(7.2A)/日)
 -0.80ml/時(ドルミカム 4.0mg/時,96mg(9.6A)/日)
 -1.00ml/時(ドルミカム 5.0mg/時,120mg(12A)/日)
 -1.20ml/時(ドルミカム 6.0mg/時,144mg(14.4A)/日)
 -1.40ml/時(ドルミカム 7.0mg/時,168mg(16.8A)/日)
 -1.60ml/時(ドルミカム 8.0mg/時,192mg(19.2A)/日)
 -1.80ml/時(ドルミカム 9.0mg/時,216mg(21.6A)/日)
 -2.00ml/時(ドルミカム 10.0mg/時,240mg(24.0A)/日)
■効果不十分なとき:1時間分早送り [RR≧10回なら30分あけて反復可]

フェノバルビタールによる持続鎮静

■持続的鎮静の適応があって、ドルミカムが無効な場合に用いる
フェノバール持続皮下注のプロトコールを用いる(オーダーは電子カルテ内の「フォルダ」から行うこと)

※状況に応じて、ノーベルバール点滴静注フェノバール皮下注ワコビタール坐薬のプロトコールを選択してもよい

■有効かつ安全な持続鎮静のために、
・立ち上がりは早くしたい → ローディングをしっかり行う
・維持期に血中濃度が右肩上がりになるのを避ける → 維持量は少なくする


処方例
【フェノバール持続皮下注による鎮静】
小型シリンジポンプを使用して、フェノバール原液を持続皮下注する
フェノバール5A(500mg、5ml) = フェノバール100mg/ml
■導入 フェノバール 1ml/時(100mg/時)を4時間(400mg入る)
ただし体格がいい/肝腎障害がない/確実な鎮静が望まれる場合はフェノバール 1ml/時(100mg/時)を6時間(600mg)
導入中、適切な鎮静がえられたらその時点で下記の「維持」に移行する
■維持 導入後に0.05ml/時(120mg/日)に減量する
ただし体格がいい/肝腎障害がない/確実な鎮静が望まれる場合は0.1ml/時(240mg/日)でもよい
●鎮静が不十分なとき、
①フェノバール以外の指示があればそちらを優先する
②0.5ml(50mg)または1.0ml(100mg)早送り(4時間あけて、1日4回まで)
③ベースアップ(12時間あける)
-0.05ml/時(5mg/時、120mg/日)
-0.1ml/時(10mg/時、240mg/日)
-0.15ml/時(15mg/時、360mg/日)
-0.2ml/時(20mg/時、480mg/日)
***以下は他に方法がないときのみ***
-0.25ml/時(25mg/時、600mg/日)
-0.3ml/時(30mg/時、720mg/日)
●適切な鎮静がえられたら0.1ml/時(240mg/日)または0.05ml/時(120mg/日)に減量する
●RASS-5、呼吸抑制、血圧低下のとき、 0.05ml/時(120mg/日)に減量するか、いったん中止する
※半減期が長く(2-5日)蓄積性があるので、ベースアップは慎重に行う。
※早送りは効果発現まで1-2時間かかる。早送りの効果は数日続く(ベースアップの効果も含まれる)。






【ノーベルバール点滴静注による持続鎮静】
■導入
初日 ノーベルバール1V(250mg) 点滴静注1時間かけて 1日1回 または2回(4-6時間あけて)
■維持
2日目以降 ノーベルバール0.8V(200mg) 点滴静注 1日1回
●鎮静が不十分な時
①ノーベルバール以外の指示があればそちらを優先する
②ノーベルバール0.6V(150mg)点滴静注(鎮静されたら中断してよい)(4時間あけて、1日4回まで)
③ベースアップ
-ノーベルバール0.2V 1日1回(50mg/日)
-ノーベルバール0.4V 1日1回(100mg/日)
-ノーベルバール0.6V 1日1回(150mg/日)
-ノーベルバール0.8V 1日1回(200mg/日)
-ノーベルバール1.0V 1日1回(250mg/日)
-ノーベルバール0.6V 1日2回(300mg/日)
-ノーベルバール0.8V 1日2回(400mg/日)
-ノーベルバール1.0V 1日2回(500mg/日)
***以下は他に方法がないときのみ***
-ノーベルバール0.8V 1日3回(600mg/日)
-ノーベルバール1.0V 1日3回(750mg/日)
●適切な鎮静がえられたら1~2段階減量する
●RASS-5、血圧低下、呼吸抑制のとき、0.4V(100mg/日)以下に減量するか、いったん中止する

【フェノバール皮下注による持続鎮静】
■導入
初期ローディング フェノバール1A100mg 1回2A(200mg) 1日2回(4-6時間あけて)
■維持
2日目以降 フェノバール1回2A(200mg) 1日1回 (1回1A 1日2回でもよい)
●鎮静が不十分な時 
①フェノバール以外の指示があればそちらを優先する
②フェノバール1A(100mg)(4時間あけて、1日4回まで)
③ベースアップ
-フェノバール1回0.5A 1日1回(50mg/日)
-フェノバール1回1A 1日1回(100mg/日)
-フェノバール1回2A 1日1回(200mg/日)
-フェノバール1回1A 1日3回(300mg/日)
-フェノバール1回2A 1日2回(400mg/日)
●適切な鎮静が得られたら1~2段階減量する
●RASS-5、血圧低下、呼吸抑制のとき、100mg/日以下に減量するか、いったん中止する

【ワコビタール坐薬による持続鎮静】
■導入
初期ローディング ワコビタール坐100mg 1回2個 1日2回(4-6時間あけて)
■維持
2日目以降 ワコビタール坐100mg1回2個 1日1回
●鎮静が不十分な時 
①ワコビタール以外の指示があればそちらを優先する
②ワコビタール坐100mg1個(4時間あけて、1日4回まで)
③ベースアップ
ワコビタール坐100mg 1回0.5個 1日1回(50mg/日)
ワコビタール坐100mg 1回1個 1日1回(100mg/日)
ワコビタール坐100mg 1回2個 1日1回(200mg/日)
ワコビタール坐100mg 1回3個 1日1回(300mg/日)
ワコビタール坐100mg 1回2個 1日2回(400mg/日)
●適切な鎮静が得られたら1~2段階減量する
●RASS-5、血圧低下、呼吸抑制のとき、100mg/日以下に減量するか、いったん中止する