聖隷佐倉市民病院は、千葉県佐倉市の地域に根差した中核病院。腎臓病・脊椎脊髄疾患・がん治療における高度な医療技術に対応。
CKD(慢性腎臓病)全流域を対象に、成人だけでなく小児を含め、腎炎に始まり透析、移植へと続く一連の流れに対応しています。
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聖隷佐倉市民病院
院長 鈴木 理志
皆さんは医療機関でよく見かける「○○病センター」という名称や表示から何を想像しますか?おそらくは、その道に精通したプロフェッショナル、特に医師達が専門の診療科問わず集まり、患者さんにとって最善の医療を目指して力を合わせている濃密な場所、といった感じではないでしょうか。多分正解です。
私たちの病院でも2006年に「腎センター」を創設し、早いもので15年が経ちました。もちろん目指すところは基本的に同じです。腎臓病に関する専門家達(腎臓内科医・小児腎臓医・移植外科医・泌尿器科医)が綿密に連絡をとりあって、切れ目のない医療を提供していくことを目的としています。
ただ、私たちの「腎センター」はもう少し欲張りです。一人の患者さんをめぐる情報共有・連絡・連携に気を配るのは医師達だけではありません。看護師も、薬剤師も管理栄養士も、さらにはあらゆる事務職員も、つまり患者さんにかかわるすべての病院職員が、その立場に応じて必要な情報を共有することを目指しています。具体的に言うならば、患者さんがすでに職員Aに伝えたことなのに、もう一度職員Bに繰り返し伝えなければならない理不尽さを解消します。そのうえ職員Bから「えっ?聞いていません」などといった対応をされることもなくしたいと思っています。こんな当たり前のことではありますが、100%の正確性を求め、実行していくことを当センター最大の目標と定めています。お気づきの際は遠慮なく、ご意見をお寄せください。
皆さんに安心して治療をうけていただけるよう全力で取り組んで参ります。
腎医療にはつぎのような段階にわかれますが、当院では、 腎臓内科専門医・小児腎臓専門医・移植外科医により、すべての段階において対応する体制が整っております。
当院の前身の国立佐倉病院は、腎不全対策病院として早くから腎移植医療に積極的に取り組み、 聖隷佐倉市民病院となる平成16年3月までに生体腎移植131例、献腎移植103例を実施して参りました。
聖隷佐倉市民病院へ移行してからも、その伝統を引き継ぎ、国立病院から引き続き診療にあたっている 腎医療関係スタッフとともに新しいメンバーが加わり、レベルの高い腎医療を提供しております。
①蛋白尿や血尿がある、画像診断で腎障害がある
②GFR<60mL/分/1.73m2
これらが3か月以上続くこととされています。
慢性糸球体腎炎、高血圧性腎硬化症、糖尿病性腎症などとても多くあります。
食生活の欧米化や社会の少子高齢化に伴い糖尿病患者さんが増加しており、糖尿病性腎症の患者さんは増加の一途をたどっています。
残念ながら現在のところCKDを治癒させる治療法はありません。ですから、食事療法や薬物療法など悪化の抑制に主眼を置いた治療が主体となっています。
血圧の管理目標は130/80以下であり、糖尿病の管理はHbA1c 6.9%未満です。
CKDは症状がありません。糖尿病と同様に“痛くも痒くもない”ことが、病状悪化の要因となっています。
早期発見・早期治療するためにも、
①1年に1回健診の受診
②生活習慣病に気をつける
③疑問点は主治医に相談
以上のことを心にとめ生活してみましょう。
eGFR( estimate glomerular filtration rate)とは推算糸球体ろ過量(値)の略語で、血液をとって調べるクレアチニン(Cr)値と、性別・年齢の3つから計算して出すGFR(糸球体ろ過量といい、腎機能を示す指標)です。
eGFR計算はこちらのサイトでできます(別ウィンドウで開く)
※東京都福祉保健局Webサイト
当院では7名の腎臓病療養指導士と6名の腎代替療法専門指導士が活躍しています。
腎臓病療養指導士とは「CKDとその療養指導全般に関する標準的かつ正しい知識を持ち、保存期CKD患者に対し、一人ひとりの生活の質および生命予後の向上を目的として、腎臓専門医や慢性腎臓病に関わる医療チームの他のスタッフと連携をとりながら、CKDの進行抑制と合併症予防を目指した包括的な療養生活と自己管理法の指導を行い、かつ、腎代替治療への円滑な橋渡しを行うことのできる医療従事者」。
簡単にいえばCKDのエキスパートです。
腎臓病は尿潜血や尿蛋白・血液検査だけでは診断できない病気がたくさんあります。正確に診断するために入院して腎生検を行い、腎臓の細胞を数個採取し顕微鏡でみて詳しく調べます。必要な場合は腎生検後、そのまま治療に入ることもあります。
早期に診断をして病態に応じた適切な治療を行うことが大切です。
腎生検のみの検査入院は5日~1週間くらいで、外来で結果を説明します。
急性・慢性の腎臓病の治療を行っています。
生活習慣病の関連した糖尿病や高血圧、高脂血症、高尿酸血症が原因の腎臓病に関しては、食事療法や薬物治療を主体にかかりつけの先生と連携して診療にあたっています。
自己免疫疾患のかかわるような腎炎・ネフローゼ症候群に関しては、ステロイドなどの免疫抑制剤を使いながら、治療を行っております。
腎臓を守る生活習慣を身につけるためにみっちりと合宿(=10日~2週間の入院)を行います。医師をはじめ看護師・薬剤師・管理栄養士が自分の得意分野について皆さんにお話しをしますのでたくさん勉強していただきます。
また、慢性腎臓病の方は様々な心血管病が潜んでいることが多く、それらに重点をおいた検査を行います。
そして何よりも入院生活では腎臓病食を「舌」で感じて慣れていただき、退院後も継続できることが大きな目標です。
血液透析は、血液を持続的に、血液透析の機械(血液濾過装置)に送り、透析膜で老廃物や余分な水を濾して身体に戻す方法です。
大がかりな機械が必要になるので、週3回透析施設に通院していただきます。一度に多くの量の血液を機械に送るため、動脈と静脈をつないで、血管を太くする内シャントの手術を行う必要がありますが、それも私たちの診療科等で行っています。
初めて透析を開始する際には、合併症などのトラブルを避けるため入院となります。退院後は継続して当院への通院が可能です。また、ご希望に合わせて近隣の透析クリニックへの紹介も行っています。
腹膜透析は内臓と腹膜を隔てている「腹膜」という膜を使っています。おなかにチューブをいれて、透析液を出し入れ老廃物や余分な水を体から出す方法です。
生活スタイルに合せてできる反面自己管理が重要です。また、腹膜は自身の身体の一部のため個人差はありますが、何年間か行うと腹膜の働きが低下してしまいうまく透析が行えなくなり、血液透析に移行する可能性があります。
当院では、チューブの挿入手術から、腹膜透析を始めて(導入)、腹膜透析の指導・管理(外来診療)、合併症が起きた場合の治療、血液透析への移行、腹膜透析終了(離脱)のすべてを行っています。
血液透析・腹膜透析・腎移植を指します。
どんなに頑張っても、疾患によっては腎臓の働きがなくなってしまうことがあります。
そのときに、尿毒症などで動けなくなってしまう前に腎代替療法の知識を身に付け、患者さん自身で治療法を選択していただくことを大切にしています。
看護外来で、生活指導・相談ができます。また、入院して他職種に話を聞くこともできます。
シャントは動脈に静脈をつなぐため、静脈に多量の血液が流れます。
また、血液透析を行うために何度も針を刺すことで、血管は損傷と修復を繰り返し、血管の壁が厚くなることで血管が狭くなることがあります。
シャントが狭くなったり、閉塞した場合は、※経皮的血管形成術 で治療を行います。難しい場合は再手術を行います。
※経皮的血管形成術とは:レントゲンや超音波で確認しながら、細くなったり詰まったりした部分に、細くて柔らかい針金を通し、それを芯にして風船で広げる治療です。
腎臓内科 入院患者数 | 腎生検数 | 教育入院 | シャント造設術 | 透析導入 | 腹膜透析 | PTA | |
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2017年度 | 1,193名 | 63件 | 145件 | 92件 | 96件 | 1件 | 74件 |
2018年度 | 1,093名 | 51件 | 97件 | 76件 | 93件 | 2件 | 133件 |
2019年度 | 1,156名 | 48件 | 112件 | 62件 | 103件 | 3件 | 88件 |
2020年度 | 994名 | 24件 | 87件 | 75件 | 78件 | 1件 | 125件 |
2021年度 | 1,088名 | 42件 | 114件 | 62件 | 71件 | 3件 | 135件 |
2022年度 | 990名 | 39件 | 77件 | 66件 | 77件 | 8件 | 170件 |
腎臓内科では被災を受けた地域の皆さんの受入を行いました。
2011年 | 東日本大震災 | 福島県より24名の透析患者を受入 |
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2019年 | 令和元年台風15号 | 千葉県内3施設92名の透析患者を受入 |
当院はCKD(慢性腎臓病)の全ての段階に対応できる病院です。
CKDという概念の広まりは、対象となる患者さんの増加が背景にあるからです。
現在では、日本の成人の8人に1人がこのCKDと呼ばれる状態にあります。この状態が悪化すると腎臓の機能が低下して、透析を導入することに至ります。そのような患者様を少しでも減らせるように、医師をはじめとする私達医療スタッフから、自己管理についてお話しさせていただきます。少しでも腎臓が心配だとお感じになる方はぜひ一度ご参加ください。
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