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サステナビリティ

人生会議(ACP)


「人生会議」とは、アドバンス・ケア・ プランニング(Advance Care Planning)の愛称です。
アドバンス・ケア・プランニングとは、あなたの大切にしていることや望み、どのような医療やケアを望んでいるかについて、自ら考え、また、あなたの信頼する人たちと話し合うことを言います。
あなたの希望や価値観は、あなたの望む生活や医療・ケアを受けるためにとても重要な役割を果たします。

外部リンク

ACP 人生会議

人生会議ロゴマークやACPの愛称「人生会議」についての詳細はこちらをご覧ください。

厚生労働省ホームページ:
「人生会議」してみませんか


ACPの現場に聞く

ACPは現場ではどのように捉えられ、行われているのでしょうか。
現場で活躍する聖隷三方原病院 緩和支持治療科の森雅紀医長に取材しました。
(取材:2020年11月)
■森 雅紀(もり まさのり)略歴
2002年 沖縄県立中部病院
2004年 ベスイスラエルメディカルセンター
2007年 MDアンダーソンがんセンター
2008年 バーモント大学医学部
2011年 聖隷浜松病院
2016年 聖隷三方原病院

森雅紀医長

人生会議(ACP)が注目されています。ACPとはどういったものでしょうか?

簡潔に言うと、ACPは患者さんご本人が大切にしていることや、これからの治療やケアについての意向を考えて、周りの人に伝えていく一連のプロセスと言えます。ご家族やケアチームと話し合うプロセスが大切です。患者さんにとって自分が望む医療が受けられる可能性が高まるというメリットがあります。ご家族、医療者にとってもあらかじめ患者さんの希望、ご本人の意向がわかっていることがメリットです。

なおとらシート※1や人生会議手帳※2など、さまざまなACPのツールもあります。各自でシートを記載する際の注意点のようなものはありますか?

治療の意向や死生観などについて記入する「なおとらシート」

なおとらシートは聖隷三方原病院や在宅福祉サービス事業部の看護師が参加して作成されました。ACPのシートの設問について考えていくことは非常に大切ですね。ぜひ、ご自分またはご家族に記載を体験してほしいと思いますが、実はただ書けばよいというものではありません。ご自分で書くだけではなく、その思いについてぜひご家族や信頼できる人と共有いただければと思います。対話しながら自分の将来を考えるツールとしてもなおとらシートはすばらしいと思います。なおとらシートでも人生会議手帳でもよいので一度開いてご覧になることをお勧めします。なお、病院や施設ではシートの形にこだわらず、電子カルテなどへの記録という形で、患者さん・利用者さんの意思を共有していきます。
※1 なおとらシート…聖隷三方原病院が訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所などとプロジェクトを立ち上げ、ACP啓発のため作成した。治療の意向や死生観などについて記入できる意思決定支援シート。
※2 人生会議手帳…静岡県浜松市が、市内の医療・介護の専門職などによる地域包括ケアシステム推進連絡会を中心に作成。「自分の思いを大切な人と共有するきっかけとなること」や「一人でも書けるようなわかりやすいものにすること」などがコンセプトになっている。

森先生がACPに関心を持たれたのはどのようなきっかけだったのですか?

私が医師になった2002年当時はがん告知をしないこともよくありました。自分の病気が何かわからないまま80代の担当患者さんが肺がんで亡くなりました。当時はご家族にとっても医療者にとってもよく見られる対応であったのですが、ご本人にとってそれでよかったのかと疑問を感じました。その後就職したアメリカの病院では、日本とは真逆のやり方でした。がんと判明すれば、まずご本人に伝える。どのような対応が良いかご家族に聞いてもそれは本人に聞いてくれと答える文化。自分の病気を知らないまま闘病するよりもいいのかもしれないと思いましたが、個々の患者さんにとって、何をどれだけ伝えるのがよいのだろうかと考えるようになりました。これらの経験から個々の患者さんにとって適切な意思決定プロセスがあるはずと思い、そこからACPに関心を持ちました。

告知の有無だけではなくその後の治療への姿勢や残された人生の希望など“患者さんにとって適切な意思決定プロセスがある”というお話は実感としてよく理解できます。 では、ACPはどのような場面で進めていくことが適切なのでしょうか?

ACPは健常者、慢性疾患の治療期、終末期といった場面によってアプローチが異なります。
健常者であれば、人生の最終段階にどのような治療・ケアを受けたいかなど、ざっくりとした幅広い内容でよいと思います。
疾患を有した患者さんであれば、症状が進行するにしたがって、幅広い内容から、どの程度積極的な治療を受けたいか、どこで過ごしたいか、終末期のケアはどうするかなど、より具体的な内容になっていきます。また、急性期病院、入所施設、在宅、緩和ケア病棟など、患者さんのおかれた場面ごとに意向を確認することが大切です。なにより、その時点での患者さんの意思を反映する。人の意思は変わるものでもありますから随時それを捉えなければならない。そういう意味でも意思が表現できるうちに、ACPを行っていくことが必要となります。ACPはご本人だけではなくご本人、ご家族、医療・ケアチームの話し合いの過程で進めていくものです。特に医療者は必要十分な情報を提供することが重要です。
ACPを開始する3つのタイミングについて以下のことが言われています。
  • いつ始めてもよいが状態に合わせて具体的にしていく。
  • 日頃から繰り返し話し合っていく。状態の節目で振り返るようにする。
  • 市民啓発が重要。どのようなことを話し合ってゆけばよいか社会的理解が必要。
ACPについての話し合いを行う場合、健常者や慢性疾患を持つ患者さんでかかりつけ医がいる場合は、一般的にはかかりつけ医に相談することになります。
私はがん患者さんの症状緩和を担当させていただくことが多いのですが、診察の時にふと患者さんやご家族が今後について言及されるタイミングや、化学療法や治療が変わる前後でお気持ちを教えていただくことが多いですね。体調が急速に悪化する可能性も念頭に、患者さんがやっておきたいことや希望される過ごし方などを聞くように配慮しています。急にACPと言っても患者さんはびっくりされます。日頃からACPに関わる内容を話し、電子カルテに記録を残すようにしています。医師が話した後に看護師が話すとより本心を教えてくださる場合もあり、医師の記録と看護師の記録の両方があることが大事だと思います。私の担当させていただく患者さんにはACPを行います、と何か文書を作るということはなく、日々の会話の中から大切にしていることを伺い、適宜記録に残す形になります。緩和ケアチームでは看護師がACPの主な担い手として活躍しています。

聖隷福祉事業団の中ではでどのように普及していくとよいでしょうか?

先ほど、市民への啓発が大切と申しましたが、実はACPについて院内でもまだあまり知られていません。多くの職員が理解を深めることで意識的な実践につなげられますので、まずは院内、施設内の認知度を上げることから始めることになると思います。患者さん中心で、患者さんの意向をどのように叶えていくかの話し合いのプロセスがACPです。お互いが話すことで患者さん中心になってきます。ACPのカギはご本人の心の準備に合わせて医療・ケアチームが支援することかなと思います。例えば病院や特養の利用者さんから「これから自分はどうしていこう?」と聞かれたら、これは利用者さんが心を開いて話してくれている証拠。このような場が発生したことが大事です。大事な局面であることを認識して話を伺いましょう。でも結論を急ぐ必要はありません。ご本人の話を伺い、会話をしていく中で、なぜ今この発言になったのかという背景を探っていくことは職種を問わずできると思います。一方で「先生に全てお任せします」といった風潮が日本にはあります。これも患者さんの意思決定スタイルの一つです。患者さんはどこまでを医療者の判断に任せたいかを見極めることで、適切な意思決定支援を提供していくことにつなげられると思います。また、DNAR(心肺停止時に蘇生措置をしない宣言)の指示を出すことがACPと同義と思われることもあります。しかし、DNARはACPのプロセスの一部でしかありません。もっと広いこと、今後の療養にあたり何を大切にして、どのような治療やケアを受けたいのかを話し合っていくプロセスがACPです。専門的なことはいろいろありますが、まずは聖隷の職員が「ACP」について知ること、「患者さん・利用者さんにとってACPが役立つかもしれない」と意識することが第一です。私自身は、まずは関わっている患者さんに対して真摯に向き合い、他科からのコンサルトにも積極的に協力していきたいと考えています。

看護師からみたACP

これまでにどのようなACPのケースがありましたか。

聖隷三方原病院 看護相談室 課長 沖村宏美
(取材:2021年1月)

「最期は病院で迎えたい」と話してくれた患者さんとそのご家族がいました。ですが、それぞれ丁寧に聞き取りをしてみると、患者さんご本人は「本当は住み慣れた自宅で迎えたいけど、家族に迷惑をかけたくないから…」という想いから、一方でご家族は「最期まで一緒にいたいけど、本人が望むようにしてあげたいから」と、お互いを思いやって本当の希望とは違う選択をしていたことがわかりました。看護師は、ケアをしている際、ぽろっと患者さんの本音が聞けることもあります。その人らしい最期を迎えられるよう、ご本人とご家族の意向のすり合わせをしっかりすることが看護師の役割だと感じました。
また脳腫瘍の患者さんのケースでは、事前になおとらシートを記入してくれていましたが、緊急入院されてからは意識レベルが下がり、なおとらシートをどこに置いたかわからなくなってしまいました。その時は、もっと前もって本人の意向確認や、なおとらシートの置き場所を共有しておけばよかったと後悔しました。

看護師としてご本人やご家族との調整をされる中で工夫していることは?

患者さんのACPに関する意向が日々変わることはよくあり、揺れ動く気持ちに寄り添いながら支援をしています。なかなかご自身の考えが持てない方には、医師などと繰り返し面談をしたり、ご家族と相談してもらったりしています。また、ご本人が自分の考えを話せる状態ではない場合はご家族にアプローチしますが、患者さんのACPを決める上で何が鍵になるかを見極めるのが難しいところです。ご家族から色々な意見を聞くこともありますが、最終的には「患者さんご本人がどう考えていたか」を大切にして、支援をしています。

ACPの活用についてどう思われますか。

救急の場面では、患者家族が動揺されているのをよく目にします。しかしACPについてあらかじめ考えていてくだされば、医師が点滴や人工呼吸器など、患者さんの今後について説明をする際、内容も理解しやすく、選択も変わってくるかもしれません。私は、ACPはよい最期を迎えるための入り口だと思います。
先日、浜松市の広報誌に人生会議手帳が取り上げられた時、「どこで手に入りますか」など反響が大きかったと聞いています。地域の皆さまにはぜひ興味を持って、ご家族などと語っていただきたいですね。そして、私は地域の皆さんが興味を持ってくれた後、きちんと活用できるようフォローすることが大切だと感じています。患者さんになおとらシートの記入を勧めるにあたり、まずは私たち看護師が理解を深めるよう、自分のこととして「なおとらシート」や「人生会議手帳」を書いてみるなど、職場でも勉強しています。今後、ご自身の最期についてのご意向をもって入院してくる人が増えてきた際、きちんと対応できるようACPについて看護の職場でも理解を深めていきたいと思います。

さらに詳しく知りたい方はこちら

Advance Care Planning のエビデンス 何がどこまでわかっているのか?

「Advance Care Planning のエビデンス 何がどこまでわかっているのか?」
出版社:医学書院
著 森 雅紀/森田 達也

なおとらシート、DVDに関する問い合わせ先

〒433-8105
浜松市浜名区細江町中川7220-1
聖隷厚生園 1F 訪問看護ステ-ション細江
TEL053-439-1133 FAX053-414-5100

浜松市北区意思決定支援プロジェクト
代表 聖隷福祉事業団 訪問看護ステ-ション細江 所長 尾田優美子
副代表 聖隷福祉事業団 聖隷三方原病院 高度救命救急センタ- 課長 村松武明


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