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Inspire〜ここからはじまる〜

聖隷ケアセンター初生「限られたスタッフでおいしい食事提供と地域に求められる質の高い栄養管理を実施するために」


取り組み概要

食事提供を給食委託から完全調理品(以下、完調品)を用いた直営運営に変更した。加熱調理後に急速冷却して配送されるクックチル食品は、現場の再加熱で調理が可能なため、限られたスタッフで厨房が運営でき、変更後の食事内容も利用者から高い評価を得ている。また管理栄養士を配置し給食・栄養管理をあわせて行うことで、食事に課題がある方への迅速な対応・栄養評価ができ、他職種での連携と聖隷ケアセンター初生が一丸となって協力し合える体制となった。給食を直営で準備する「給食の内製化」をすることで、初生地域の利用者に対する栄養サービス向上に貢献した。また、小規模給食施設も多く存在する事業団内の給食提供への選択肢を増やす大きな影響を与えている。

SDGsとの関連性

「限られたスタッフでおいしい食事提供と地域に求められる質の高い栄養管理を実施するために」と関連するSDGsの目標は・・・

3.すべての人に健康と福祉を
8.働きがいも経済成長も
17.パートナーシップで目標を達成しよう

大塚仁美 (おおつか ひとみ)

和合せいれいの里 食事サービス室
係長 管理栄養士

完調品を導入するにあたり、業者選定、職員採用、厨房業務の確立などの実務を担い、質の高い栄養管理の実現に寄与した。

森島絢子 (もりしま あやこ)

和合せいれいの里 食事サービス室
課長補佐 管理栄養士

完調品を導入するにあたり、給食委託業者と直営化に向けた協議や、職員採用など全体的なマネジメントを担った。

用語解説

※クックサーブ
従来から行われている調理法で、加熱等の調理後すぐに提供する方式。
※クックチル
調理した料理を専用の機械で急速冷却してチルド保存しておき、食事提供の時間に合わせて再加熱し盛り付け・配膳を行う調理方式。
※リヒートウォーマーキャビネット
加熱調理後の料理を器に盛り付けてセットし、冷蔵、再加熱、温蔵を自動制御する調理機。タイマー機能が使えるため、最終工程の盛付け作業を前倒しで行え、提供前の必要人員や作業量をコントロールでき、決まった時間に確実に食事提供ができる。

リヒートウォーマーキャビネット

インタビュー

①取り組むきっかけとなったエピソードを教えてください。

加熱した食事を各フロアに届ける

大塚
聖隷ケアセンター初生の、栄養サービスを向上させたいということが大きかったです。これまでは和合せいれいの里の厨房で作った食事を、聖隷ケアセンター初生に1日3食分配送していました。聖隷ケアセンター初生には常駐の管理栄養士がいないため、週に1回、和合せいれいの里から管理栄養士が来ていましたが、もっと日々のご利用者の状態に合わせながら随時必要な栄養ケアマネジメントをしたいと思っていました。

森島
和合せいれいの里には、高齢者や障がいのある方、こどもなど多様な方を対象とする施設がありますが、ひとつの厨房で食事を作り、各施設に配送しています。配送先のご利用者にあった献立(高齢者・障がい献立、こども献立)・提供方法(クックサーブ、クックチルなど)で個々に対応していましたが、業務が煩雑化していたため整理したいとも考えていました。

大塚
本取り組みでは、限られた職員数でも運用可能な食事サービスの確立、普通食から嚥下食まで同一メニューで提供し、味や硬さの標準化をすることに加え、調理作業量の削減も図りました。

緑枠は和合せいれいの里から給食提供している範囲
赤枠は今回完調品を取り入れた施設

②取り組み内容を詳しく教えてください。

森島
2022年1月頃、まずは当時給食委託をしていただいている業者と、費用や業務面、人員配置、提供したい食事等について相談するところから始めました。相談を重ねた結果、聖隷ケアセンター初生の契約は、2022年8月から現在の契約とは切り離すことを決めました。
これまでは配送された食事をご利用者の嚥下状態に合わせ施設で加工していましたが、今回「完全調理品」を導入することで、すでにご利用者の状態にあった常食、ソフト食、ミキサー食、ゼリー食の4パターンに加工された食事が届くようになりました。

大塚
食事形態の数が多いと、どんなご利用者にも対応できる可能性が高いので、良いと思いました。

左:各形態に加工された状態で届く(厚焼き玉子) 右:届いた完調食はコード読み取りで簡単に検品ができる
導入後は職員一人当たり(7.5時間換算)の生産性が50.45食→55.9食に増加し、業務時間も短縮した。

各フロアではご利用者に合わせて汁物や飲み物にとろみ剤を加えて調整している

森島
嚥下食は施設で加工すると、加工する人によって形態の認識に微妙な差が出る場合もありましたが、今はその心配もありません。嚥下学会分類に基づく食事形態の統一は、自宅と近隣施設、また病院とも連携しやすいという利点もあります。口から食べられるということは、ご利用者のQOL(Quality of life。生活の質)が上がるので、管理栄養士としてとても大切にしているポイントです。
選定する完調品業者は、食事の形態の多さやご利用者に必要な栄養が足りているか、味つけ、内容はよいかを主眼とし選定しました。私たちも初めてのことなので、業者のサポートの手厚さも考慮しました。初めは完調品にちょっとマイナスなイメージもあって…本当においしいの?って。正解がわからなかった分、様々な職種の職員も呼び、たくさん試食しました。

大塚
新しい食事の提供にあたり、厨房にリヒートウォーマーキャビネットを導入しました。これまでは朝食提供のため、朝早く出勤して料理を加熱し、その後嚥下食用にミキサーにかけるなどの加工処理をしてから盛り付けてご利用者に提供していました。今は前日に配送された完調品を器に盛り付け、この機械に入れておけば、翌朝出勤時には自動的に加熱が完了しています。

③取り組みの際に工夫したことや苦労したことを教えてください。

管理栄養士が常駐し
ご利用者の栄養管理向上に努める

大塚
今まで厨房の人員体制は委託業者が整えてくださっていたので、採用面の難しさは直営になって初めて気付きました。委託から直営への転換に当たり、委託業者に所属し聖隷ケアセンター初生で働いていた方に、聖隷に転籍してくださるかを委託業者責任者の方を交えてご本人と相談しました。結果、転籍してくださる方もおり、この施設を好きでいてくださっているように思えて嬉しかったです。

森島
調理師免許など資格がなくてもできる職場環境を目指していますが、厨房職員の応募が少なく、人の定着にも苦労しました。試行錯誤しながら、今も模索中です。

④取り組みを行って得られた効果を詳しく教えてください。

食事レクリエーションは完調品業者の協力もあり、ご利用者も毎回楽しんで参加されている

大塚
完調品を使用することで嚥下調整食への調理加工がほぼなくなり、安定した品質で食事の提供ができるようになりました。また野菜くずも出ないので生ごみ量が削減されました。以前までは食事レクリエーションを開催するのも栄養士が常駐していないので連絡調整に時間を要し、気軽に実施することが難しかったのですが、直営になったことでご利用者、職員の声が届きやすく介護スタッフや厨房スタッフ一丸となって、ご利用者が楽しめる食事レクリエーションを積極的に開催できるようになりました。ソフトクリームや餡フラワー、ブリの解体ショーなどはご利用者から好評でした。

森島
聖隷ケアセンター初生の介護スタッフは、「最近〇〇さん、体重減ってきちゃってて…」などとご利用者の情報を積極的に共有してくれます。ご入居されているご利用者であれば管理栄養士が迅速に対応し、質の高い栄養管理をすることができていますが、デイサービスをご利用している方ですと、情報がすぐにキャッチできても、調理を担当するご家族との連携も必要になってくるので、栄養管理をどのように対応していくかという事が課題です。

大塚
実際に地域に出向いていくことも大切だと思っています。数件ではありますが、ご家族から食事についてのご相談があり、ご自宅を訪問したことがあります。デイサービスで提供している食事形態を実際に見ていただき、食事に関する様々な相談にお応えしています。入院する前は特に制限なく常食を召し上がっていたけれど、形態の低いやわらかい食事を勧められ、自宅でどうやって作ったらいいかわからないという悩みもあります。そういった時に、私たちのような管理栄養士が悩みに寄り添える存在になりたいと思っています。

⑤ご利用者・職員にとってさらに良い施設・サービスにしていくために、今後どう発展させていきたいですか。

ご利用者に寄り添い食事の楽しみや
大切さを伝えていける職場を目指す

大塚
先日、管理栄養士とご利用者との会話の中で「チャーハンを食べたい」というリクエストをもらい、チャーハンのレクリエーションを開催しました。その時に、管理栄養士が大人数のチャーハンをおいしく炊飯器で作れる方法がないか何度も試作する姿が見られました。完調品導入で効率化できた時間はこのように、ご利用者の食べたいという気持ちに応える取り組みにあてていきたいです。今後も職員がやりがいをもって、食の楽しみや大切さをご利用者に伝えていける職場でありたいと思います。

森島
多様な人材が活躍できる職場にしていきたいと思います。完調品を導入したことで作業の平準化ができつつあるため、障がいのある方でも働けるのではないかと思っています。例えば、就労支援事業所の厨房で盛付けや下処理などの補助を行っているご利用者が、聖隷ケアセンター初生の厨房で一般就労として働くことができれば、ステップアップ、ご利用者のやりがいアップにもつながると思います。今後は障がい者雇用ができる環境をどのように整えることができるのかを考えていければと思います。

聖隷ケアセンター初生 施設概要

所在地 〒433-8112
静岡県浜松市北区初生町1095-1
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