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Inspire〜ここからはじまる〜

聖隷横浜病院「摂食機能療法領域で活躍できる病棟看護師育成への取り組み」


取り組み概要

脳神経外科病棟での摂食機能療法※1を必要とする患者さんが増加し、看護師が食事介助や経口摂取※2を促す援助に関わる機会も増えている。それに伴い看護師から摂食機能療法について質問などが多くでていたため、他職種と協働し、ケアの知識・技術向上を狙い研修を行った。これにより病棟内でも知識や技術を共有でき、ケアの質が向上した。

SDGsとの関連性

「摂食機能療法領域で活躍できる病棟看護師育成への取り組み」と関連するSDGsの目標は・・・

3.すべての人に健康と福祉を

黒澤 晶浦 (くろさわ あきほ)

聖隷横浜病院
西1病棟(脳神経外科病棟)
看護師

看護師にとっても課題と感じた摂食機能療法のケア向上に向けて、言語聴覚士を始めとした他職種に協力を求め、病棟内で中心となって研修の企画・運営を行った。

中野 夕子 (なかの ゆうこ)

聖隷横浜病院
リハビリテーション部
言語聴覚士

摂食機能療法領域で病棟看護師の依頼を受け、言語聴覚士として研修講義や技術演習などの講師として携わった。

用語解説

※1摂食機能療法:
食事や水分などがうまく食べられない、飲み込めない状態の人(食べ物を噛めない、飲み込めてもむせてしまう等)に対して、飲食による誤嚥リスクを予防して安全に食事を楽しむことを目的とする。飲食時の姿勢の調整・指導や食器の工夫などを行う。
※2経口摂取:
口から飲食物を摂ること。誤嚥の危険性が高いなど、口から食事を摂ることが難しい場合は、点滴や、チューブを通して胃や腸に直接栄養剤を注入し栄養を摂る方法(経管栄養)がある。
※3リンクナース:
医療施設の中で、専門チーム(感染制御チーム、摂食・嚥下など)と病棟看護師をつなぐ役割を持つ看護師のこと。病棟スタッフへ専門的な学び等を還元することで各病棟の看護の質を向上させる。

インタビュー

①取り組むきっかけとなったエピソードを教えてください。

黒澤
私が所属している西1病棟は脳神経外科を主科とし、経管栄養の方や嚥下障害、手足の麻痺がある患者さんが多い病棟です。そのため摂食機能療法に伴う食事介助が必要となり、取り組みを行う前は言語聴覚士(以下、ST)がほぼ1人で食事介助や嚥下機能評価などのリハビリテーション(以下、リハビリ)を行っていました。徐々に患者さんも増えていきST 1人だけでは対応しきれなくなったため、ある程度の技量を持った看護師3~4人も食事介助の対応をしていました。そのような状況で、患者さんの状態が安定しているにも関わらず、対応する看護師によって患者さんの食べる量に差があることに気づきました。また同時に看護師からも食事介助に対しての不安や大変という声もあがっていました。

中野
西1病棟のSTは私1人しかいないので、土日などで私が休んでしまうと、その度にSTが介入しないといけない患者さんのリハビリが中断し、継続的なリハビリができなくなってしまいます。週末は患者さんにとって食事というリハビリをお休みしなければならない状況だったので、STが不在になってもリハビリを続けることができればなと日頃から思っていました。

黒澤
STだけではなく看護師も日常的にリハビリに介入できる方がいいですし、本来の「食事」として継続させたいと西1病棟全体が思っていました。このような思いを日頃から共有していた中野さんと、何とか改善しようという話になりました。

②取り組み内容を詳しく教えてください。

黒澤
ただの勉強会になってしまうと、参加者が集まらないと考え、ST、管理栄養士、薬剤師、作業療法士(以下、OT)など多職種の職員に講師になってもらい付加価値のある研修にしました。結果的に西1病棟看護師の半数の13名が参加してくれました。計8回の研修を行い、1回1時間、17時~18時の勤務外として開催しました。

中野
夜勤で出席できなかったり、コロナ禍だったこともあり、自宅学習もできるようeラーニングも活用しました。最後は修了テストを行い合格した看護師をリンクナース※3と認定しました。

黒澤
研修の中では特にOTが担当した講義の反響が大きかったです。体の仕組みから始まり、実際に患者さん一人ひとり楽な姿勢に調整し、抵抗なく座位が取れた状態でしっかり食べられている様子を実際に見て、参加していた看護師たちも目の色を変え感心していました。今までのやり方では不十分だったと分かり、講義の翌日から実践している様子が見られました。

中野
参加した看護師には「これってどうなんだろう」だとか、「自分のやり方であっているのか」など疑問を持ってほしかったことも一つの狙いでした。一人で対応する看護師を育成したいわけではなく、困ったときにSTやOTなどの他職種に聞いて柔軟に対応できる看護師を育成したいと考えていたので、この取り組みにより他職種とのパイプ作りもできたと思います。

他職種の職員を講師に招くことで、付加価値があり、参加したくなる研修に。

患者役も体験し作業療法の観点からのアプローチを学んだ。

③取り組みの際に工夫したことや苦労したことを教えてください。

黒澤
研修を2022年6月~11月の期間で行いましたが、途中コロナ感染で集合研修ができない期間もあり実質3か月で行いました。月に2回研修を行ったときもあり、次の研修までの資料作成に苦労しました。

中野
eラーニング用に研修内容をまとめる作業が大変でした。でも使い捨てではなく今後も使える研修資料なので、これで状況が改善できるならと大変ながらも楽しんでやっていました。

黒澤
工夫した点としては、研修で受け持った患者さんを実際の勤務でも担当し、そのまま実践できるようにしました。そして研修生のモチベーションを下げないように、マイナスなことはあまり言わず、できている部分を褒めるよう努めました。

中野
プラスのフィードバックをしていくと、スタッフからは「この患者さんはもっと柔らかい食形態にしてもいいか?」「ここが上手くいかないがどうしたらいいか?」など積極的な質問も多くなりました。

解剖と摂食嚥下モデルに始まり、口腔ケアや食形態など看護師にも知ってほしい知識をぎゅっとまとめた。

聖隷横浜病院「摂食機能療法」リンクナースの証!オリジナル認定バッジ

④取り組みを行って得られた効果や課題を詳しく教えてください。

二人三脚で取り組みを推進した、元西1病棟課長(右)。現在は手術室で活躍中。

黒澤
経管栄養だった患者さんも口から食べられるようになり、退院後は自宅に帰るなどの選択肢が増えました。家に帰ることができれば、患者さんご家族にとって費用面でもメリットがあります。

中野
口から食べられる患者さんは元気になるんですよね。動こう、喋ろう、という気力が出るので。「口から食べられる」ということは患者さんの今後を考えるうえで大きなポイントです。食べられないと、当院は急性期の病院ですから、退院後、患者さんは療養病院などへ移ることになります。

黒澤
看護師側のメリットは自己発信が増えたことです。食形態の提案もできるようになり、食事介助に積極的に入るようになりました。研修に参加した看護師に触発されて、どの看護師も意識が変わったことも驚きでした。

中野
私はSTとして講師を務めたことで、病棟看護師との距離が近くなったように思います。自分も話しかけやすいし、看護師からもよく話しかけられるようになりました。研修参加者は実際の業務で関わる顔ぶれですから、その後の業務も円滑に進むようになりました。

黒澤
今後の課題は、病院全体での進め方です。取り組みの規模が大きくなったので、誰にどこまで報告すればいいのか戸惑うこともまだあります。

黒澤
西1病棟のみで取り組んでいた時は、当時の課長が「患者さんにとっていいことだから、どんどんやろう」とチラシ作成や会場設営、必要な会議に通すなど組織的な部分を全てしてくださったので、研修内容に集中できました。スタッフが日頃考えていることを拾い、取り組む許可を出すだけではなくて、遂行できるようにサポートしてくださるのですごく助かりました。

⑤利用者・職員にとってさらに良い施設・サービスにしていくために、今後どう発展させていきたいですか。

「最期まで口から食べられる」病院を目指して

黒澤
今後は院内で活躍できる看護師を増やしつつ、研修受講者の継続学習と、収益性も図るような運営につなげる体制作りをしていきたいです。

中野
看護師がここまで食事に興味を持ってくれるケースは珍しいと思います。黒澤さんみたいな人が1人いると周りは影響を受けるんですよね。私もSTとして今後も色々広めたいし、学んでいきたいです。この取材を通してまた仲間が増えてくれると嬉しいです。

黒澤
最期まで口から食べられるのが叶う病院、ということが聖隷横浜病院の強みの一つになるといいなと思います。高齢者が多いというここの地域性にもあっていると思うので。より地域から選ばれる病院を目指したいですね。

聖隷横浜病院 施設概要

所在地 〒240-8521
神奈川県横浜市保土ヶ谷区岩井町215
電話番号 045-715-3111
FAX 045-715-3387
開設日 2003年3月
定員・定床数 367床
施設種別 無料又は低額診療事業
ホームページ こちらをご覧ください
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