理事 山本貴道:聖隷三方原病院院長 (2025年10月号)「学術活動の重要性: 国際てんかん学会 (リスボン) 報告記」
今回は病院経営とは異なる学術的な活動を報告いたします。
8月30日から9月3日までポルトガルの首都リスボンで行われた国際てんかん学会 (International Epilepsy Congress; IEC) に出席してまいりました。今年の初め頃はこの学会は予定には入れてありませんでした。リスボンは行ったこともないし、日本からは片道24時間近くかかります。しかし半年くらい前になって、口演発表と座長をそれぞれ指名され、行かざるを得なくなった格好です。
8月30日から9月3日までポルトガルの首都リスボンで行われた国際てんかん学会 (International Epilepsy Congress; IEC) に出席してまいりました。今年の初め頃はこの学会は予定には入れてありませんでした。リスボンは行ったこともないし、日本からは片道24時間近くかかります。しかし半年くらい前になって、口演発表と座長をそれぞれ指名され、行かざるを得なくなった格好です。
急勾配の坂道が多いリスボンの中心地。所々に歴史を刻むモニュメントがありました。
私は若い頃にアメリカに6年間近くおりましたので、国際学会出席に抵抗はありませんが、それでも英語での準備や発表は大変です。自分が担当したてんかん外科のセッションでは、アメリカと欧州諸国からの錚々(そうそう)たる医師らが中心で、日本人で指名されたのは友人でもある自治医科大学医学部脳神経外科教授兼病院長の川合謙介先生と私だけでした。韓国や中国などのアジア圏からは参加者がほとんどおらず、日本からの我々はアジアの代表として孤軍奮闘しました。
今回の会場であるリスボン国際会議場です。
私が発表した内容は「海馬多切術」と言って、その川合先生も勤務されていた都立神経病院で開発された手術手法です。話が少し難しくなりますが、言語性優位半球の海馬がてんかんの原因 (側頭葉てんかんの焦点) の場合、既に萎縮してしまっている海馬は切除しても記銘力低下は起きない場合がほとんどです。逆に萎縮が無い場合は、切除によって深刻な記銘力障害を招きます。そのために海馬内で発生するてんかん波が伝播しないように、海馬を5mm間隔で切離しててんかん波を消していきますが摘出はしない手法です。よって記銘力は温存される。かなり細かく手間のかかる手技なので、本邦でさえ普及している訳ではありません。手術ビデオも含めて紹介したので、参加者からは “Nice talk!” と言ってもらえました。遠方まで行った価値はあったようです。
口演発表が終わり安堵と共に満足といったところです。
さて、こう見てくると医師というのは診療だけではないということが分かってきます。部長など幹部になるほど、その診療科の収益を考え、かつ後進への学術的な指導もしなければなりません。学術的に頑張ることは、最終的には患者さんに最先端の医療を提供するという利益につながるために必須と考えられます。大学病院だけがやっていればいいことではありません。今回のような国際学会はその中でも最も高いレベルを要求され、かつ緊張を強いられる場面と言えましょう。院長である現在は、積極的に学術的な指導をする立場ではなくなってきていますが、むしろそのような最先端医療を提供できるよう設備を整え、医局の皆をサポートするのも大きな仕事の一つと考えています。一人でも多くのスタッフが国内のみならず海外においても積極的に発表の機会を持つことを期待しています。しかし、それにしても遠方で大変疲れた旅になりました。せっかく行きましたが、情緒ある歴史的な街であることはわかりましたが、観光らしいこともほぼ無く、やはり観光はそれのみで行くべきですね。ではまた次回の報告をお楽しみに。
聖隷三方原病院の紹介
所在地 | 〒433-8558 静岡県浜松市中央区三方原町3453 |
電話番号 | 053-436-1251 |
FAX | 053-438-2971 |
開設日 | 1942年12月24日 |
定員・定床数 | 934床〈一般810床、精神104床、結核20床〉 |
施設種別 | ・医療保護施設 ・助産施設 ・居宅療養管理指導事業 ・訪問看護事業 |
ホームページ | こちらをご覧ください |
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