理事 服部東洋男(2026年11月) 新たなる価値創造に向けて―聖隷AIポータル―

聖隷では昨年、新たな「中期事業計画2026-2030」を策定しました。そこで、5年前に策定した「中期事業計画2021-2025」を改めて読み返してみました。そこにも、すでに「AI」という言葉が登場しています。「ICT、AI、ロボット等を活用して、少人数でも質の高いサービスを提供できる業務体制を目指す」と書かれていました。5年前のことですが、当時のAIは、ICTやロボットと並ぶ、業務を効率化するための技術の一つ、という位置づけだったように思います。
それが今、生成AIの急速な進化によって大きく変わりました。文章を作る、情報を整理する、分析する、アイデアを出す、そして時には一緒に考える。これまで人が行ってきた「考える」という仕事の一部をAIが担うようになっています。これまでの情報技術の進化とは少し次元の異なる、大きな変化だと感じます。

聖隷AIポータルの月ごとの利用者数
改善活用事例も多く報告されています
聖隷では今年7月、職員が安全に生成AIを利用するための「聖隷AIポータル」の運用を開始しました。開発に至った背景には、現場から生成AIを利用したいという声が高まっていたことに加え、いわゆる「シャドーAI※」の利用という新たな課題もありました。生成AIには、入力する情報の取り扱いや、もっともらしい誤った回答(ハルシネーション)など、利用にあたって注意すべき点があります。特に、医療・保健・福祉・介護の現場では個人情報を扱う機会も多いため、安全に利用できる環境を整えることが重要です。
そこで、「危ないから使わない」という選択ではなく、「どうすれば安全に使えるのか」を考えました。そのため、利用環境を用意するだけではなく、規程を整備し、教育も合わせて行うことにしました。利用者は当初想定していた月1,000人を大きく上回り、さまざまな改善要望も寄せられています。安全性を重視して開発してきたため、まだ十分ではない機能もありますが、皆さんの声を聞きながら、より使いやすいAIポータルに育てていきたいと考えています。
そこで、「危ないから使わない」という選択ではなく、「どうすれば安全に使えるのか」を考えました。そのため、利用環境を用意するだけではなく、規程を整備し、教育も合わせて行うことにしました。利用者は当初想定していた月1,000人を大きく上回り、さまざまな改善要望も寄せられています。安全性を重視して開発してきたため、まだ十分ではない機能もありますが、皆さんの声を聞きながら、より使いやすいAIポータルに育てていきたいと考えています。
AIを導入する目的は、単なる業務の効率化だけではありません。電子カルテを導入した当初、「先生がパソコンばかり見て、こちらを向いて話を聞いてくれなくなった」という患者さんの声を聞いたことがあります。また、利用者満足度調査では「看護師さんが忙しそうなので、声をかけるのをためらった」という意見もありました。私たちがAIによって生み出したいのは、患者さん、利用者さんに向き合うための「時間」です。
実際、AIを使った議事録作成では、作業時間を半分以上減らすことができ、要点の整理や内容のばらつきを減らす効果もありました。
実際、AIを使った議事録作成では、作業時間を半分以上減らすことができ、要点の整理や内容のばらつきを減らす効果もありました。

聖隷DX「攻め」部隊
法人本部 総合情報システム部
システム企画課のメンバー
(聖隷AIポータルにて画像加工)
これまでの情報システムは、導入されたシステムに仕事を合わせることが少なくありませんでした。AIは少し違います。「この作業、もう少し何とかならないかな」と思ったとき、AIに手伝わせるという選択肢が増えました。こうした小さな試みを現場から積み重ね、うまくいった事例を皆で共有していく。そのためにも、まずは自分で使ってみることが大切だと思います。

聖隷DX「守り」部隊
法人本部 総合情報システム部
システム管理課のメンバー
(聖隷AIポータルにて画像加工)
一方、AIの活用が「攻め」だとすれば、サイバー攻撃などへの備えは「守り」です。AIが攻撃する側にも利用される中、すべての攻撃を防ぐことだけでなく、万一の時にも事業を止めないための準備が重要です。聖隷の各施設でも「もしシステムが使えなくなったらどうするか」を考え、障害などが発生しても事業を継続するための「IT-BCP」の準備が進められています。
そして、AIが便利になればなるほど、人との関わりは大切になります。「AIにすべてを任せる」のではなく、「AIに手伝わせ、最後は人間がしっかりと責任を持つ(Human-in-the-Loop)」という考え方を持つこと。
AIを使うことそのものが目的ではありません。AIによって生まれた時間を患者さんや利用者さんのために使う、そんなAI活用を聖隷の中で育てていければと考えています。
※シャドーAI…組織のIT管理部門の許可や把握がないまま、職員が業務で外部のAIサービスを無断で使用すること
そして、AIが便利になればなるほど、人との関わりは大切になります。「AIにすべてを任せる」のではなく、「AIに手伝わせ、最後は人間がしっかりと責任を持つ(Human-in-the-Loop)」という考え方を持つこと。
AIを使うことそのものが目的ではありません。AIによって生まれた時間を患者さんや利用者さんのために使う、そんなAI活用を聖隷の中で育てていければと考えています。
※シャドーAI…組織のIT管理部門の許可や把握がないまま、職員が業務で外部のAIサービスを無断で使用すること




