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ホーム > Ⅱ消化器症状  >  C.嘔気・嘔吐(3) 原因が不明確な嘔気・嘔吐

C.嘔気・嘔吐(3) 原因が不明確な嘔気・嘔吐

ページの目次


嘔気の原因

嘔気の原因として、以下を除外してください。


高カルシウム血症
消化管閉塞:上部・下部・食道縦隔、便秘(麻痺性イレウス)、胃炎・胃潰瘍、膵炎


閉塞を伴わない消化器からの刺激(迷走神経から嘔吐中枢への入力)、腹腔神経叢周辺のリンパ節転移


脳転移、癌性髄膜炎(CTではdetectできないことが多いのでMRIが必要です。MRIで陰性なら髄液検査を2回が基本とされます)、錐体骨移転や耳鼻科疾患による前庭神経の刺激
副腎不全
高サイトカイン血症による chronic nausea:CRPが中程度上昇しているが明確な感染のない場合


化学療法・放射線による遅発性嘔吐(delayed emesis)→院内の化学療法マニュアルを参照してください。
オピオイド、NSAIDs、抗生物質、ジギタリスなど催吐作用のある薬剤


対症治療

ステロイド

消化管の亜閉塞、脳転移、高サイトカイン血症がある場合


処方例
ベタメタゾン6mg+生食100mL×1朝、点滴静注、5~7日
効果あれば1週間ごとに症状が取れる投与量まで漸減(目標4mg以下)

胃潰瘍の予防をしてください。

高血糖、胃潰瘍、精神症状(不眠)、結核などをモニターしてください。

胃潰瘍除外のために胃カメラをする方がbetterと考えますが、状況によってはしなくてもいいと思います。

末梢性制吐剤

理学所見で蠕動が低下している、肝転移で胃が圧迫されている、食後に満腹感があり嘔吐する(「食欲はあるけど何か食べようとするといっぱいになっちゃって…」)場合


処方例
・ プリンペラン2~4A、持続皮下・静注、または0.5~1A静注×3回/日、食直前
・ ドンペリドン3T、またはナウゼリン坐薬60mg 3個/日、食直前

中枢性制吐剤

ヒスタミン拮抗薬が有効な臨床所見:体動で悪化する(「動くと気持ち悪くなるんです」)、めまいがある、頭蓋内圧亢進

原因機序が分からない場合は、多受容体拮抗薬(オランザピンやリフレックス)を検討してください。オランザピンは、Delayed emesis や癌患者の原因の分からない嘔気の緩和に有効だとする、ある程度の根拠があります。抗コリン性副作用(便秘・尿閉・静脈・口渇・まれにせん妄)や高血糖を生じることがあります。少量(2.5mg)から開始して漸増してください。オランザピンは「抗悪性腫瘍薬(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心・嘔吐)」が公知申請で、保険での使用が可能となりました。オランザピンを選択しない場合、リフレックスが選択肢になります。

ヒルナミン 0.1~0.3A、眠前皮下注、コントミン 0.1~0.2A/生食100mLの眠前点滴が有効な場合があります。ごく少量投与から開始して漸増してください。血圧が低下する場合があります。

いずれも眠気あり、開始後の症状と眠気とのバランスを患者個々に判断して投与量を調節することが重要です。


処方例
ポララミン1~3A/日、持続皮下・静注
ノバミン1~3A/日、持続静注、またはノバミン2~4T 分2~4
オランザピン 2.5~5mg 寝前
ハロペリドール0.75~1.5mg 寝前、または 0.3~0.5A/日、持続皮下・静注
リフレックス7.5~15mg 寝前