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ホーム > Ⅱ消化器症状  >  E.癌性腹水による腹部膨満感

E.癌性腹水による腹部膨満感

ページの目次


Overview

腹水性状により治療方法が異なります

肝不全 ・転移性肝腫瘍による腹水(血液中のAlb-腹水中のAlb>1.1)は治療が有効な場合があります。

一般的に癌性腹水(血液中のAlb-腹水中のAlb<1.1、細胞診+)は保存的治療に抵抗性です。

腹水そのものの鑑別診断(試験穿刺→蛋白、LDH、AMY、腫瘍マーカー、ADAなど、心機能、血管、腎疾患の除外)については当科の対応とは考えませんので、必要でしたら主科でお願いします。



治療オプション

腹水穿刺

確実な症状緩和手段です。在宅でも行うところが多くなっています。


利尿剤

1.癌性腹水の場合、利尿剤が有効な場合がありますが、腹水穿刺よりも腎不全・電解質異常の合併率が高いので強くは推奨されません。しかし、有効な場合はあるので、肝転移による腹水に準じて利尿剤を投与して反応をみるのは初期治療として良いと思います。

2.肝転移による漏出性腹水の場合、スピロノラクトン50~100mg±初期にフロセミド20~40mg併用が勧められます(ループ利尿剤の単独投与はsalt-losingなため勧められません)。スピロノラクトンの効果は3~7日後に出ますので、特に投与初期は、週1~2回電解質と腎機能をチェックして、腎機能が悪化したら利尿剤の適応は乏しいと考えられます。カリウムの値によって、スピロノラクトンとフロセミドの比率を変えてください。


アルブミン

肝転移による漏出性腹水や感染症など一時的な低アルブミン血症の場合、アルブミン×3日でアルブミン終了後にラシックス1A静注(+ソルダクトン1A静注)は伝統的によく用いられていました。(近年はcost-effectivenessから使用されることはほとんどなくなっています)
癌性腹膜炎ではcost-effectivenessから推薦されていません。


輸液

観察的研究で、輸液量はやや脱水に置く方が腹水の貯留を有意に抑制できることが確かめられています。終末期では、経口補給できない患者では1日の水分負荷を経口量とあわせて1L以下を目安とし、浮腫や胸水など全身の溢水症状が増悪する前にdry controlとしてください。


腹水濾過濃縮再静注法(CART)

CARTは難治性腹水症に保険適応がある治療ですが、効果の明確なエビデンスはありません。採取した腹水を、専用フィルターを用いて細菌・細胞を除去しながら蛋白を回収して濃縮し、患者の静脈から再投与する方法です。適応禁忌として、感染(膿性腹水)、血性腹水、黄疸(T-Bil>5mg/dL)が挙げられています。蛋白喪失を避けたい場合には、提案してみても良い方法と考えます。
主科から直接透析室へ依頼してください。


シャント

全身状態が良い患者ではシャント術の適応となる場合があります。IVR(Interventional radiology)を用いたシャント術が全国で行われております。
国立がんセンターのIVRチームと連絡がとれますので、緩和ケアチームに相談してください。


薬剤・神経ブロック

 腹水量に働きかけずに「腹満感」を減らす方法として、少量のオピオイド(フェンタニル100~200μg/日、フェントステープ0.5~1mg)が経験的に用いられています。「張って苦しいだけですか、張って痛いという感じもありますか?」と聞いて「張り痛みもある」と言われるときに効果があることがあります。
 国内では、キシロカイン500~1,000mg/日、ケタミン10~50mg/日が勧められることもありますが、国際的には一般的ではありません。
 筋弛緩作用のある抗不安薬(エチゾラム、セルシン、ダイアップ坐薬)も効果があることがあります。
 硬膜外ブロックも効果がある場合があります。また腹横筋膜面ブロックが症状軽減につながったとの報告があります。


ステロイド

高サイトカイン血症(CRP高値で感染症が否定的)の場合にステロイド少量を全身投与することが教科書に記載されていますが実証報告はありません。

ケナコルト大量腹腔内投与のopen studyがあります。


感覚的アプローチ

ナースによるメンタシップ、マッサージなどの感覚的アプローチ。