お墓の遊園地
お墓の遊園地
10月1日の終活セミナーにご参加いただいた皆さまと、ショートショート作家・田丸雅智氏が掛け合いながら即興で作り上げたショートショート作品が完成しました。
ぜひご覧ください!
「お墓の遊園地」 田丸雅智
デパートの屋上にやってくると、そこはにぎやかな声で満ちていた。はしゃぎながら駆けていく子供たち、大声で笑い合う若者たち……久しぶりにやってきても盛況で、さすがは遊園地だな、とおれは思う。それと同時に、やっぱり奇妙な感覚にもとらわれる。目の前に並んだアトラクションが、ふつうのものではないからだ。連結したお墓がレールの上を猛スピードで走る「お墓のジェットコースター」に、お墓が馬の代わりを務める「お墓のメリーゴーラウンド」……そう、ここはお墓でつくられたアトラクションが並んだ「お墓の遊園地」なのである。
それぞれのお墓の中にはもちろん故人が眠っているが、チケットを買えば遺族に限らずだれでも上に乗っていいことになっている。この場所の構想が発表された当初は「お墓で遊ぶだなんて不謹慎だ」という声も上がっていた。が、いざ募集が開始すると申込みが殺到した。こんな形のお墓ならあちらの世界に行ってからも退屈しなさそうだと思う人や、お墓参りに来てくれる人も楽しいはずだと考える人がたくさんいたのだ。
数年前に他界したおれの親父も、そんな一人のうちだった。「にぎやかで最高じゃないか」親父はビールを呷りながらニヤリと笑い、ここのお墓に入ると告げたのだった。
あっ、と思ったのは、そのときだった。視線の先に、パンダの乗り物のようにメロディーを鳴らしながらゆっくりと走っているお墓を見つけたのだ。それは親父のお墓で、上には女性が乗っていた。
あの人が降りたら、次は自分がお墓に乗って親父を偲ぶことにしよう。
そう思い、おれはお供えするためのビールを取りだしお墓のほうに近づいた。が、お墓は逃げるように向こうのほうに走っていって、やがて止まるとまた別の女性を乗せて走りはじめた。そこからも同じようなことが何度もつづいて、おれは思わず苦笑する。親父のやつ、客を選んですっかり楽しんでやがるな……。
なんだかバカバカしくなって、おれはビールのふたをプシュッと開けた。缶を傾けグイッと呷ると、女性を乗せた親父のお墓がメロディーを鳴らしながら軽快に通っていった
