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ホーム > Ⅱ消化器症状  >  B.嘔気・嘔吐(2) 下部消化管閉塞による嘔気・嘔吐  >  オクトレオチドに関する最近の研究のまとめ

オクトレオチドに関する最近の研究のまとめ

がん性腹膜炎に伴う消化管閉塞に対するオクトレオチドの効果に関しては、近年2つの大規模な二重盲検化無作為化比較試験の結果が発表されました。

一つは、オクトレオチドの効果がなかったと結論されたもので、2008年から2012年にオーストラリアの12の緩和ケアサービスで行われた研究です1)。介入群、対照群ともにデキサメサドン 8mg/日とラニチジン(ザンタック®) 200mg/日が投与されていて、介入群にはオクトレオチド600μgの持続皮下注が行われました。この研究では87名が解析対象となりましたが、嘔吐のなかった日数は介入群で1.87(±1.10)、対照群で1.69(±1.15)と有意差はありませんでした。(図1)「3日間嘔吐がなかった患者の割合」を比較しても、介入群38%、対照群33%とこちらでも差はありませんでした。ただしこの研究で有意差がなかったというのは、症状が改善しなかったわけではなく、介入群、対照群ともに症状が改善しています(図2)。つまり絶食やステロイド、H2ブロッカーの効果があった可能性があります。結論としてはオクトレオチドの価値として、「ステロイドとザンタックの投与を受けている患者に」ルーチンに追加することは勧めない、とされています。



もう一つは持続性オクトレオチド(ソマチュリン)の比較試験で、80名のがん性腹膜炎で手術適応のない消化管閉塞の患者が対象となりました2)。両群ともステロイドとPPIが使用され、10日間治療薬またはプラセボが投与されました。この試験では、7日間のうち、3日以上連続して嘔吐が1回以下か、NGチューブを抜去しても嘔吐がなかった患者を有効と定義しました。その結果、介入群で42%の有効率、対照群30%の有効率でした(図3)。統計的には有意ではありませんでしたが、サンプルサイズの計算で高いハードルが設定されていたことや、その他のアウトカムで改善傾向(図4)が示されていて、全体に持続性オクトレオチドは効果があるという論調になっています。



これらをふまえて、臨床での意義をまとめます。
現在保険適応もあることから、消化管閉塞の患者には「まず使用する」は可能だと思われます。しかし、高額な薬剤ですから、数日後にしっかりと評価をして、継続か中止かを判断することが必要です。
また、オクトレオチドを使用する前(同時に)、短期間のステロイドと、高用量のH2ブロッカー(ザンタック200mg)を投与することも積極的に検討してください。

文献:
1. Currow DC, Double-Blind, Placebo-Controlled, Randomized Trial of Octreotide in Malignant Bowel Obstruction. J Pain Symptom Manage. 2014 Nov 14
2. Mariani P, Symptomatic treatment with lanreotide microparticles in inoperable bowel obstruction resulting from peritoneal carcinomatosis: a randomized, double-blind, placebo-controlled phase III study. J Clin Oncol. 2012 Dec 10;30(35):4337-43.