前立腺がんロボット支援下手術
前立腺がんとは、主に前立腺に発生する病気で、前立腺の細胞が何らかの原因で無秩序に増殖を繰り返す疾患です。
治療法は、治療を行わず経過を見るPSA(腫瘍マーカー)監視療法・手術療法・放射線療法・ホルモン療法などがあります。どの治療法を行うかについては、がんがどのくらい進行しているかを検査し、進行状態や健康状態、年齢や合併症の有無などによって総合的に判断し決定します。
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治療法は、治療を行わず経過を見るPSA(腫瘍マーカー)監視療法・手術療法・放射線療法・ホルモン療法などがあります。どの治療法を行うかについては、がんがどのくらい進行しているかを検査し、進行状態や健康状態、年齢や合併症の有無などによって総合的に判断し決定します。
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開腹手術とロボット支援手術の傷の違い
当院では2007年から腹腔鏡補助下で皮膚を6cm切開(小切開)して行う開腹手術を行ってきましたが、最近ではロボット支援手術が普及しています。
入院から退院までの流れ
ロボット支援手術は、開腹手術と比べてからだにかかる負担が少ないため、入院期間も短くてすみます。
前立腺全摘除術の場合
入院は手術前日。術前検査を受けて翌日の手術に備えます。通常は術後の痛みも少なく、翌日には歩行も可能です。カテーテルを抜くまでに6日間ほどかかるため入院期間は術後1週間ほどです。
※1 硬膜外チューブ
手術中の痛みを軽減するために麻酔時に使用し、手術後も麻酔薬を持続的に投与するために用いられる管
※2 ドレーン
体内に溜まった水分や血液・リンパ液などを体外に排出するために用いられる管
※3 尿道カテーテル
体の外に尿を排出させるために尿道から膀胱まで挿入する管
手術中の痛みを軽減するために麻酔時に使用し、手術後も麻酔薬を持続的に投与するために用いられる管
※2 ドレーン
体内に溜まった水分や血液・リンパ液などを体外に排出するために用いられる管
※3 尿道カテーテル
体の外に尿を排出させるために尿道から膀胱まで挿入する管
ロボット支援下手術による前立腺がんの治療成績
2016年10月から2023年3月までに、350件以上のロボット支援前立腺全摘除術を施行しています。
355件のロボット支援手術の手術時間、コンソール時間(図1)は各3時間、2時間半まで短縮し、出血量(図2)は従来の開腹手術と比較すると、1/5以下と著明な減少がみられました。がん制御に関しては他施設とほぼ同等で、尿禁制(図3)は他施設より良好な結果でした。現在、手術の待機期間は約1か月ですが、今後は手術日を増やすなど可能な限り待機期間を短くし、最善の医療をご提供していきたいと考えています。
355件のロボット支援手術の手術時間、コンソール時間(図1)は各3時間、2時間半まで短縮し、出血量(図2)は従来の開腹手術と比較すると、1/5以下と著明な減少がみられました。がん制御に関しては他施設とほぼ同等で、尿禁制(図3)は他施設より良好な結果でした。現在、手術の待機期間は約1か月ですが、今後は手術日を増やすなど可能な限り待機期間を短くし、最善の医療をご提供していきたいと考えています。
図1 コンソール時間
図2 出血量
図3 手術後の尿禁制(尿失禁なし)
治療成績 詳細
①患者さん及び術前データ
- 患者さんの平均年齢 68歳(46~81歳)
- 平均のPSA値 10.2ng/mL(3.30~44.0 ng/mL)
- 悪性度(グリソンスコア) 6:103名、7:161名、8以上:91名
- 臨床病期(ステージ) T1c~T2(限局がん):319名、T3(被膜外浸潤か精嚢浸潤):36名
②手術データ
- 平均手術時間 3時間22分(1時間39分~6時間48分)
- 平均コンソール時間 2時間39分(1時間4分~5時間11分)(図1)
- 平均出血量 119mL(2~620mL)(図2)
- 摘出標本重量 平均45g(14~115g)
高リスク群の42例(20%)に対して骨盤内リンパ節(閉鎖リンパ節)郭清を施行しましたが、リンパ転移を認めたのは3例のみでした。神経温存術は75例(36%)に施行しました。
ダビンチ操作における術中合併症はなく、手術開始時のカメラポート作成時に小腸損傷を1例に認めましたが、保存的治療に軽快しました。
術後合併症は腸閉塞1例、腹膜炎2例、術後出血2例、鼠経ヘルニア9例、腸炎1例、感染性リンパ瘤1例に認め、腸閉塞と術後出血の3例は外科的治療を要しました。また鼠経ヘルニアは外科にて根治術を施行していただき、腹膜炎と腸炎は保存的治療により軽快し、感染性リンパ瘤は経皮的ドレナージ術により軽快しました。
③術後データ
- 病理診断による病期 pT2(限局がん):120例、pT3a(被膜外浸潤):66例、pT3b(精嚢浸潤):20例、pT0(術前ホルモン療法にて寛解):4例
- グリソンスコア 6:13例、7:146例、8以上:46例
- 尿禁制 術後1か月→53%、術後3か月→83%、術後6か月→90%(図3)
※1日1枚までの予防的なパッド使用を尿失禁なしと定義 - 切除断端陽性 33例(15%)。全例が局所進行癌(pT3a-b)
- 術後入院期間 平均8.0日(6~28日)