4月 わが街で健康に暮らす12 良い健康習慣は、周りの人に良い影響を与える
【特集】わが街で健康に暮らす12 良い健康習慣 は、周りの人に良 い影響を与える~肥満を例に、社会的ネットワークと 健康について考える~
超高齢社会になった今では、地域で暮らす一人一人が健康意識を持つ必要があります。このシリーズでは、毎回健康に関するキーワードを取り上げ、住んでいるこの場所で健康に暮らすための方法を、一緒に考えていきます。
“肥満”は、世界の解決すべき問題の一つ
世界の平均寿命は伸びており、急性疾患より慢性疾患で命を失う人が増えてきています。WHO(世界保健機構)の調査(The Lancet, December 15, 2019)でも気候変動・低栄養と同列に、肥満を世界の問題として解決すべき課題としています。以前、適度な運動の取り入れ方(2019年10月号)や、食生活の改善(2020年1月号)を取り上げましたので、今回は自分の健康と社会的ネットワークの関係について、肥満を例にお話しします。
肥満は感染する!?
「肥満は感染する」といわれると驚くかもしれません。「肥満には原因微生物があって、人から人へ伝染していく」と想像するかもしれませんが、そのようなことはありません。しかし肥満はまるで伝染病のように、人から人へ伝播することが実証されています。
「フラミンガム研究」という高血圧・高コレステロール・喫煙などの多くの因子が、循環器疾患の発症に重要な意義を持つことを示した、米国で行われた有名な疫学研究があります。この研究の一部から「肥満は感染する」ことが実証されました。(N Engl. J Med 2007;357:370-379)
「フラミンガム研究」という高血圧・高コレステロール・喫煙などの多くの因子が、循環器疾患の発症に重要な意義を持つことを示した、米国で行われた有名な疫学研究があります。この研究の一部から「肥満は感染する」ことが実証されました。(N Engl. J Med 2007;357:370-379)
人間は社会的動物である
研究者たちは、親しい友人・同僚・家族のデータを元に、町の社会的ネットワークを実際に再現しました。そのデータから、ある人が太るとその友人・配偶者・兄弟らも太ることがわかりました。まさに肥満が人から人へ伝播していたのです。「身近にいる太った友人が食べていると、ついつい自分も食べてしまう」といった行動が積み重なり、肥満が伝播していくのだと考えられています。
このことから人間は社会的な動物で、他者の食生活や生活習慣など、無意識のうちに周りの人の影響を受けてしまうといえます。
このことから人間は社会的な動物で、他者の食生活や生活習慣など、無意識のうちに周りの人の影響を受けてしまうといえます。
「良い習慣も伝播する」
これを聞くと「自分の肥満は周りの影響だ」と考えて、食生活や生活習慣を変えることをあきらめる人がいるかもしれません。
しかし、悪い影響だけでなく、良い習慣も人に伝播することがわかっています。自分の良い習慣(禁煙、運動、食生活…)が周りの人に伝播し、社会を良くする可能性もあります。
「良い習慣を人に感染させる」ことができると考えると、自分の目の前の食事や運動などに注意を向けるきっかけになるかもしれません。
しかし、悪い影響だけでなく、良い習慣も人に伝播することがわかっています。自分の良い習慣(禁煙、運動、食生活…)が周りの人に伝播し、社会を良くする可能性もあります。
「良い習慣を人に感染させる」ことができると考えると、自分の目の前の食事や運動などに注意を向けるきっかけになるかもしれません。
文責:総合診療内科 主任医長 本間 陽一郎
2020年4月号(冊子)
- 表紙・特集
良い健康習慣 は、周りの人に良 い影響を与える
~肥満を例に、社会的ネットワークと 健康について考える~ - 新任医師紹介
- インフォメーション
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