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【特集】がんに克つ！32 遺伝性乳がん卵巣がん

“がんにかかりやすい体質”も遺伝する？

背が高い・体が大きい・目が青いなどの体質が遺伝するように、“がんにかかりやすい体質”も遺伝することがあります。からだの設計図である遺伝子の制御にかかわるものに「がん抑制遺伝子」があります。2つで1組のがん抑制遺伝子のうち、生まれつき一方がうまく働かない場合、若くしてがんにかかったり、生涯で複数のがんにかかることがあります。この“生まれつき”の部分が代々受け継がれて発症するのが遺伝性腫瘍です。

遺伝性腫瘍のうち最多の「遺伝性乳がん卵巣がん（HBOC）」

2013年に米国の女優さんが予防切除を行ったことで広く知られることになったHBOCは、200～500人に1人の頻度でみられます。女性のがんでもっとも多い乳がん（9人に1人の発症頻度）の4～5％がHBOCで、女性65人に1人が発症する卵巣がんの10～15％がHBOCと言われています。名称からは女性特有の疾患群と思われがちですが、膵臓がん・前立腺がんとの関係や、男性の乳がんもあることから男女共通の問題です。

どうやって診断するの？（遺伝学的検査）

HBOCにはいくつかの特徴があります。若年乳がんの方（45歳以下）・60歳以下トリプルネガティブ^※乳がんの方・両側乳がんの方・片側に複数乳がんの方・男性乳がんの方・乳がんと卵巣がん両方発症の方・乳がん／卵巣がん／膵臓がんの血縁者がいる乳がんの方・卵巣がんの方などです。専門医師の説明に患者さんが納得して同意されれば、血液検査で診断が可能です。結果は生涯変わることのない究極の個人情報として説明されます。

※乳がん細胞の増殖に関係するタンパク質（エストロゲン（ER）、プロゲステロン（PgR）、ヒト上皮成長因子受容体（HER2））いずれも認められないこと

HBOCと診断されたら…？（検診と予防切除）

HBOCの場合、生涯における最大発症率は乳がんが約70～80%、卵巣がんが約40～50%とされています。これに特化した検診（サーベイランス）を行いますが、最も有効なのは予防切除です。ただし、卵巣がんの予防切除（卵巣卵管摘出）は卵巣機能を失うため、いつ手術を受けるかは医師やご家族と十分な相談が必要です。

文責：産婦人科部長　安達博

＊参考文献：・がん情報サービス；ganjoho.jp　・遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)をご理解いただくために　ver.2023_1　・一般社団法人日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構編

【診療科・センター紹介】臨床遺伝センター

遺伝に関するお悩み、ご相談ください

当センターの遺伝相談外来では、遺伝・遺伝子に関するさまざまな疑問や悩み、不安についてのご相談をお受けしています。周産期（高齢出産、出生前診断など）や、がん（遺伝性乳がん卵巣がんなど）に関する相談が多いですが、それ以外の遺伝性疾患（神経筋疾患・循環器疾患など）についても対応しています。
遺伝医学について正確な知識をもった専門医（臨床遺伝専門医）を中心に、看護師、医療ソーシャルワーカー、臨床心理士など多職種でチームを作り、正しい医学的情報をわかりやすくご提供します。また、遺伝に関連した心理的・社会的問題、生殖に関する問題などへの思いを伺い、ご自身に納得のいく意思決定ができるように支援していきます。相談には十分な時間をかけ、患者さん一人一人の状況やお気持ちに十分配慮することを心がけています。プライバシーは厳重に保護されます。一人で抱え込まずご相談ください。
文責：臨床遺伝センターセンター長　森菜採子（写真前列左から2番目）

【診療を支えるスペシャリスト】がん病態栄養専門管理栄養士

栄養・食事のお悩みに寄り添います

栄養管理は薬や手術と同じように重要ながん治療のひとつです。栄養状態が良ければ、体力が維持され、がん治療の副作用も軽減して治療効果が最大化します。当院には2名のがん病態栄養専門管理栄養士が在籍しています。患者さん一人一人の栄養スクリーニングを行い、がん治療中の食欲不振や味覚異常などのさまざまな問題に対応し、その方に合う食事をご提案します。私たちがん病態栄養専門管理栄養士は、患者さんが治療中も普段と変わらない日常生活や趣味など好きなことをお楽しみいただけるように、お気持ちに寄り添いながら栄養面でのサポートをして参ります。