B.疼痛(2)-1 突発的な痛み・骨転移による痛み
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Overview
持続痛はベースのオピオイド、突出痛はレスキューや放射線治療で対応します。
持続痛と突出痛を区別してください。
治療オプション
骨折していないかの評価、整形外科的治療の適応の判断を依頼してください。
放射線
積極的に検討して下さい。
骨病変治療薬
骨合併症の減少を主な目的とします。
単独で痛みを緩和するわけではありません。
重篤な副作用として顎骨壊死があります。投与開始前に歯科診察をうけること、侵襲的な歯科処置は、投与前に済ませておくことがすすめられます。
①デノスマブ
ランマーク120mg皮下注 4週間に1回
重篤な低カルシウム血症の報告例があるため、高カルシウム血症でない限り活性化VitD、Ca製剤(デノタスチュアブル配合剤)の内服が必要です。
②ビスホスホネート
ゾレドロン酸4mg月1回投与。
乳癌、骨髄腫、肺癌などで「骨合併症の減少」について高い根拠があります。
Symptomatic hypocalcemiaなら中止し、カルシウム製剤を注射してください。
投与前に採血(カルシウム)して、6台まで下がるようなら一旦中止してください。
NSAIDs・アセトアミノフェン定期投与
鎮痛効果は、ロキソプロフェン・セレコックス・モービック < ボルタレン・ロピオン(潰瘍予防薬を併用してください)。
痛みがある時間を通してNSAIDsが投与されるように工夫してください。
NSAIDsに加えて、アセトアミノフェン2.4~4g 分3~4、アセリオ 15mg/kg 1日4回、を併用すると良いことがあります。院内製剤でアセトアミノフェン坐薬(600mg)もあります。緩和ケアチームに依頼してください。
副作用が許容されれば、ステロイド(ベタメタゾン2~4mg)が良い場合もあります(根拠レベルは低い)。
安静時にも痛みがあるならオピオイドの定期投与
→「I-A持続的な疼痛」を参照してください。
安静時の疼痛を2~3/10以下へすることが目標。定期投与の増量だけで体動に伴う疼痛をなくすことはできないので、「動くと痛い」を根拠に1日投与量を増量していくと副作用(精神症状、傾眠)を生じやすくなります。一般的には、疼痛が10段階で2~3以下に低下すればそれ以上ベースは増量しません。
体動に伴う痛みがあるだけでベースを増量してせん妄になると、体動→痛い→オピオイド→せん妄が悪化→体動という悪循環になってしまい、回復が難しくなります。しかし、安静時痛がとれても眠気が耐えられるまでベースを増量して副作用なく鎮痛できる場合もあり、終末期では「うとうとして鎮痛」が目標になることもあるので、患者・家族の意向によっては行っても良いと思います。
突出痛にあわせてベースアップをしてはいけない理由
オピオイドのレスキュー・予防投与で突出痛を満足できる範囲で緩和する
定期投与されている薬剤にあわせて、疼痛時の頓用を処方してください。
1日モルヒネ投与量の6分の1程度をオプソかモルヒネ錠、またはオキノーム散で投与します。やや眠気が残ることが多いですが、手軽な方法です。モルヒネでは眠気が出てQOLを下げる場合、フェンタニルへの変更を考慮してください(緩和ケアチームに相談してください)。
フェンタニル粘膜吸収製剤(当院ではアブストラル)の使い方については、疼痛(2)-2を参照してください。
処方例:疼痛時(体動前などに使用しても良い) | |
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1 | NSAIDs(ロピオン0.5A・生食5mL静注、ボルタレン坐薬25~50mg) 定期とあわせてロピオン3A/日、ボルタレン坐薬150mg/日まで |
2 | ・オプソ(モルヒネ錠、オキノーム散)1日量の6分の1 ・フェンタニル・モルヒネ・オキシコドン注をキープのある持続静注ライン・持続皮下注につないで早送りかPCA |
1と2の併用やアセトアミノフェン0.8g、アセリオ15mg/kgの併用も考えられます。 |
神経ブロック
痛みが強い時期をしのぐため、疼痛が限局されていれば、硬膜外カテーテルを留置することも可能です(終わったら抜去)。
運動神経に影響しない範囲であれば、フェノールブロックや高周波熱凝固という方法があります。
経皮的椎体形成術
適応も含めて他院(国立がんセンター中央病院、静岡がんセンター)に相談することが可能です。緩和ケアチームに相談してください。